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悪夢のはじまり
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『美食會…!』
さっきまで私が読んでいた漫画に登場する組織、美食會。そのワードが出てくるということはここは『トリコ』の世界なのか?いわゆるトリップってやつなのだろうか?友達から聞いただけで確信はないが、とりあえず流されておこうと我ながら驚くほど冷静に質問を繰り返した。
『グルメ細胞を注入…?』
「はい…より強靭な肉体を手に入れるためにグルメ細胞を注入します…しかし、上手く結合できなければ死か異形化しますけどね…ふふふ…」
笑いながらしれっと怖いことを言わないでほしい。鏡を見ていなくとも自分の顔の血がさーっと引け、まさに青くなっているのが分かる。
「今後関わることもあるかもしれないので自己紹介を…私はカイトラ。美食會専属の再生屋です」
再生屋。それは美食屋と同じくらい重要な職業。美食屋が食の発見を生業にしているならば、再生屋は食の保護を生業にしている。美食會にも再生屋がいたなんて、知らなかった。私の妄想の中の人なんだろうけど。
『私は夢子です。高校二年生…』
全部言ってしまってから思い出した。この世界には小中高という概念があるのか分からない。今実際、カイトラさんが頭に?を浮かべている。
「コウコウ…」
『あ、気にしないでください!ほんと、どうでもいい情報なので!』
「そうですか…」
カイトラさんは少し怪訝な顔をしたが割り切れたのかすぐさっきの顔に戻り、私の体に巻かれているアロエを外し始めた。
『あの…』
「なんでしょう」
『私を殺さないんですか?』
美食會、いわば食のアウトローの集まり。食材を手に入れるためならどんな手段を問わないはずなのに、なぜグルメ細胞も持たない一般人の私を保護するのだろうか。
「スタージュン様が、あなたを気に入ったからですよ」
『スタージュン…』
さっきの仮面はやっぱりスタージュンだったのか。通りで見たことあると思った。それにしても、なぜ私のことを気に入ったのだろう。
「猛獣たちに襲われずにいたあなたの豪運…いえ、食運に目をつけたのでしょう…あの方は食運だけは持ち合わせておりませんので」
まるで心を読むかのようにカイトラさんが説明し始める。あ、今のことはスター様にはご内密に、と一言添えた頃には、アロエは全部とれていた。外傷はほぼ治り、さっきまでギチギチに締められていた体も多少自由に動かせるようになった。しかしまだ痛いところは痛いし、声も小さな声しか出ない。
「さて、この服に着替えてください。流石にその姿ではスター様に失礼ですので…」
ハッ、と自分の姿を見たら一糸まとわぬ生まれたままの姿だった。さっきまでアロエを巻いていたから、仕方ないといえば仕方ないのだが。異性に裸を見られるというのは相手が誰といえど正直恥ずかしい。体をうずめ恥じる私に気を利かせたのか、カイトラさんは後ろを向いて作業をし始めた。
カイトラさんから差し出されたのはいかにも被検体ですと言わんばかりのAラインのワンピースだった。イメージと違うのは、全体が真っ黒というところか。着替え終わったことを伝えると、では参りましょう、とドアの外に連れ出された。そこにいたのは
「スター様」
「終わったか、カイトラ」
壁に寄りかかったスタージュンだった。ずっと待っていたのだろうか。意外と律儀だな。
「これから娘は私が預かろう、ご苦労だったな」
「いえいえ…それでは」
カイトラさんは自分の仕事場へと戻って行った。これで薄暗い廊下でスタージュンと二人っきり。気まずいどころじゃない。
「娘」
『は、はい』
「名前は」
『夢子です…』
「そうか」
名前を確認するや否や行くぞ、とスタスタと歩き始めた。私はその巨体をたどたどしい歩きで追いかけて行った。
さっきまで私が読んでいた漫画に登場する組織、美食會。そのワードが出てくるということはここは『トリコ』の世界なのか?いわゆるトリップってやつなのだろうか?友達から聞いただけで確信はないが、とりあえず流されておこうと我ながら驚くほど冷静に質問を繰り返した。
『グルメ細胞を注入…?』
「はい…より強靭な肉体を手に入れるためにグルメ細胞を注入します…しかし、上手く結合できなければ死か異形化しますけどね…ふふふ…」
笑いながらしれっと怖いことを言わないでほしい。鏡を見ていなくとも自分の顔の血がさーっと引け、まさに青くなっているのが分かる。
「今後関わることもあるかもしれないので自己紹介を…私はカイトラ。美食會専属の再生屋です」
再生屋。それは美食屋と同じくらい重要な職業。美食屋が食の発見を生業にしているならば、再生屋は食の保護を生業にしている。美食會にも再生屋がいたなんて、知らなかった。私の妄想の中の人なんだろうけど。
『私は夢子です。高校二年生…』
全部言ってしまってから思い出した。この世界には小中高という概念があるのか分からない。今実際、カイトラさんが頭に?を浮かべている。
「コウコウ…」
『あ、気にしないでください!ほんと、どうでもいい情報なので!』
「そうですか…」
カイトラさんは少し怪訝な顔をしたが割り切れたのかすぐさっきの顔に戻り、私の体に巻かれているアロエを外し始めた。
『あの…』
「なんでしょう」
『私を殺さないんですか?』
美食會、いわば食のアウトローの集まり。食材を手に入れるためならどんな手段を問わないはずなのに、なぜグルメ細胞も持たない一般人の私を保護するのだろうか。
「スタージュン様が、あなたを気に入ったからですよ」
『スタージュン…』
さっきの仮面はやっぱりスタージュンだったのか。通りで見たことあると思った。それにしても、なぜ私のことを気に入ったのだろう。
「猛獣たちに襲われずにいたあなたの豪運…いえ、食運に目をつけたのでしょう…あの方は食運だけは持ち合わせておりませんので」
まるで心を読むかのようにカイトラさんが説明し始める。あ、今のことはスター様にはご内密に、と一言添えた頃には、アロエは全部とれていた。外傷はほぼ治り、さっきまでギチギチに締められていた体も多少自由に動かせるようになった。しかしまだ痛いところは痛いし、声も小さな声しか出ない。
「さて、この服に着替えてください。流石にその姿ではスター様に失礼ですので…」
ハッ、と自分の姿を見たら一糸まとわぬ生まれたままの姿だった。さっきまでアロエを巻いていたから、仕方ないといえば仕方ないのだが。異性に裸を見られるというのは相手が誰といえど正直恥ずかしい。体をうずめ恥じる私に気を利かせたのか、カイトラさんは後ろを向いて作業をし始めた。
カイトラさんから差し出されたのはいかにも被検体ですと言わんばかりのAラインのワンピースだった。イメージと違うのは、全体が真っ黒というところか。着替え終わったことを伝えると、では参りましょう、とドアの外に連れ出された。そこにいたのは
「スター様」
「終わったか、カイトラ」
壁に寄りかかったスタージュンだった。ずっと待っていたのだろうか。意外と律儀だな。
「これから娘は私が預かろう、ご苦労だったな」
「いえいえ…それでは」
カイトラさんは自分の仕事場へと戻って行った。これで薄暗い廊下でスタージュンと二人っきり。気まずいどころじゃない。
「娘」
『は、はい』
「名前は」
『夢子です…』
「そうか」
名前を確認するや否や行くぞ、とスタスタと歩き始めた。私はその巨体をたどたどしい歩きで追いかけて行った。