私が入っていた檻は本だった。と聞いて皆は信じるだろうか。通常は信じないだろう。しかしこれは事実である。檻の外見は本の形をしており、一枚のペラペラとした紙の中に何故か奥行きがあるのだ。しかしそんなことで悩んでいる暇はなく、私は今長い舌の人に腕を捕まれ、ビビットカラーで彩られた長い廊下を歩いている。それにしても天井が高い。この人よりもっと大きい人物もここを通るのだろうか。ならば恐怖で寒気がしてくる。
｢着いたぞ、ママとご対面だ｣
目の前には大きい、もう大きいなんてレベルじゃないくらいの扉があった。学校の校舎くらいはあるんじゃないか？というくらいの扉は、ゆっくりと開かれた。
｢ママ！罪人を連れてきたよ｣
｢やっとかい！さあ、こっちに寄越しな｣
奥の玉座に座っていたのは、巨人といえるくらいの大きな女性だった。ピンクのワンピースを着て、こちらを鋭い目で睨んでいる。恐ろしい。あまりの恐ろしさに足の先から凍ってしまいそうになる。
｢お前かい？街を壊した挙句しらばっくれてるってのは｣
『ま、街…？』
｢とぼけんじゃないよ！お前のせいで街が半壊してんだ！お前どこのスパイだ？言えよ！｣
女性の気迫に押され、何も言葉が出せないでいたが、このままでは誤解されたままだと本能が悟ったのか私は連なるように言葉を出した。
『あ、あの！私が街を半壊させたことは謝罪致しますがスパイなどでは…！まずここかどこかも分からないですし…！』
｢もういい！プリン！こいつの記憶を漁ってどこのスパイか調べな！｣
女性が声を荒らげると私と同い歳くらいの女の子が女性の麓からひょっこりと出てきた。
｢分かったわ、ママ｣

私と同い歳くらいの女の子は私の頭に触れ、ゆっくりと手を押し込んだ。すると私の頭の中に彼女の手が入ってきたのだ。混乱しているのもつかの間、私の頭は記憶と記憶が混在しごちゃごちゃとなった。
｢なに、これ…｣
その言葉を発したのは私ではなく彼女だった。
｢どうしたんだい、プリン！さっさとそいつの正体を…｣
｢ママ、違うのよ！この子、海賊じゃないわ！それに記憶の中にある建物も、乗り物も、全部この世界のものじゃない！この世界の技術じゃ無理なものだわ！｣
｢何だって！？｣
脳を生きたまま掻き回されているような感覚に襲われながら、朧気に会話が聞こえてくる。
｢そいつ、まさか異世界の人間とかいうんじゃねえだろうな！？｣
｢多分…だって、この世界での記憶と思わしきものがないのだもの。｣
｢嘘だろう…｣
彼女が頭の中から手を引くと意識が鮮明になり、記憶も健在となった。なんだったんだろうか、今のは。手品か何かか？
｢おい、お前｣
女性が私に問いかける。
｢お前、おれの国に住め｣
『え…？』
あまりの突然の出来事にもう、何も着いてけなかった。