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お見合い
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カフェのピークを過ぎた頃、休憩室でアフターヌーンティーを飲んでいたらプリンちゃんが次のお見合いの話を持ち出した。話を聞いているうちにふと前回会ったペロスペローさんのことを思い出した。
『ペロスペローさんいい人だったなあ』
「そうでしょう、ペロス兄さんは兄弟の中でもとっても優しいのよ」
「それでね、次はクラッカー兄さんにアポをとったはずなんだけど…全然連絡が来なくて」
『クラッカーさん?』
ペロスペローさんとは違い、一度も聞いたことがない名前だったのでつい反復してしまう。
「クラッカー兄さんはね。シャーロット家の10男で、三将星と呼ばれるママの子供たちの中で最も強い3人のその1人。元々は4人だったんだけどね。1人負けて称号が剥奪されちゃったの」
『そうなんだ…』
兄弟内でも戦いに関しては厳しいんだな、と思いチョコレートケーキを口に運ぶ。柔らかいスポンジに練り込まれた濃厚でほろ苦いビターチョコの中に間に挟まれたベリーソースの甘酸っぱさがあって疲れた体に染みる。
「ちなみに、三将星の中でも最強なのがこの前話した次男のカタクリ兄さん!もちろん、カタクリ兄さんのところにも行くわよ!」
『うんうん…ん?』
待てよ。ということは…
『前会ったペロスペローさんとその三将星の二人が私のお婿さん候補でもあるってことだよね?』
「そうよ?」
『……それってまずくない?』
「?」
ふと浮かんだひとつの疑問から、恐る恐る質問を続けるとプリンちゃんはキョトンとした顔で首を傾げた。
『政略結婚が主軸なのに、そんな強い人たちを私のお婿さん候補なんかにしたら…いざという時に大変じゃない?相手の国のお姫様が強い人がいい!って言い出したりしたら…』
年功序列でいけばママの次の権力を持つであろう長男に、この国の戦力の要二人…異世界人から来たということ以外なんの実力も実績もないこの私のために、そんな大事な子供たちを婿に出していいのだろうか。
「あぁ平気よ。政略結婚の交渉もあくまでこっち側が有利なの。もしそんなことを言い出したりでもしたら…」
『したら…?』
「相手の国は滅ぼされるわ」
思わず『え…』と声が漏れ出た。鳩がジェリービーンズを食らった顔で硬直する私に対し笑顔で紅茶をすするプリンちゃん。ティーカップをソーサーに戻しプリンちゃんは頬杖をついた。プリンちゃんの表情もどこか寂しくなっている。
「交渉といっても、相手の立場や意見は関係ないの。ただママの言うことに頷くだけ…私たち子供たちも…」
それは交渉というより強制では…という言葉を紅茶と共に飲み込む。海賊の国だということを改めて実感させられる。プリンちゃんも、きっと大変なことばかりなんだろう。実際寂しげな表情がその経歴を物語っている。
「で、改めてペロス兄さんはどうだった?」
少し重くなった空気を祓うように、プリンちゃんはいつもの笑顔で話を再開し始めた。
『とても良い人なんだけど、他の候補の人と対面してからじゃないと何も…』
さっき思った通り、ペロスペローさんはとても優しくていい人だった。だけど他の候補の人の顔も声も何も知らないままでは、比較する対象がないのだからどうとも言えない。少し苦笑いで返すとプリンちゃんは優しい顔をした。
「そうよね、まだ決めることじゃないわよね。ゆっくり決めましょう」
そうだ。まだペロスペローさんしか会ったことがない。プリンちゃんの言う通りだ。生き急ぐことはないのだ。
「あぁ、でもね夢子ちゃん…」
プリンちゃんは申し訳なさそうにこちらを見る。
「言い忘れてたんだけど…カタクリ兄さんは遠征中だから数週間は帰ってこないの。でも帰ってくるとしたら…」
『…したら?』
「期限の4日前辺り?」
『……遅くない!?』
私は今日一の大声を出した。
