序章
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夜、ロンドンは寒い。いつも雨が降っていて、良い気持ちの時もそうでない時も気が滅入りそうになる。もともと雨は嫌いじゃなかったのに、なにか悪いことが起きるたびに雨が降っていると、好きになりようがない。ああ、地獄ってのはどんな所だ?こういうときにキリスト教信者ならダンテの地獄篇を引用したり、不遇なものは自分の状況を言ったりするだろう。
今日、母が死んだ。病気や父からの暴行での死じゃあない。死ぬ前に激しく父から暴言を吐かれ、何度か殴られていたけれど、それも原因ではない。父の酔っ払ったあんまりな姿と暴力に外へ逃げ出した彼女は、酒屋の常連の男に偶然捕まってしまったのだ。
雨が降る夜だった。俺はディオを寝室に入れてシーツの中でくるまっているように指示した。それから母への暴行を止めるように言おうと、居間に向かうと、父は母を無理やり脱がしている途中だった。まぁ、ほとんど致している所だったのだけれど。こういう状況に会ったのははじめてじゃあないが、今日ほどま正面から見てしまって、かつ母がぼろぼろ泣いているような姿なのははじめてだった。
俺に見られた彼女は相当なショックを受けて、ーー俺が大人しく部屋に入ればよかったんだが、あの声や音じゃあ、ただ殴りつけているだけだと勘違いするのも無理はないだろうーーそのまま雨の中を飛び出して行ってしまった。彼女を追おうとする前に、父が俺を殴って少しの間気絶した。どんなに機嫌を取っていたって、酒を飲んでしまえばこの人は駄目なのだ。
意識を取り戻してから、ハッとして母を探そうとしたが、父は「あんな女に構うんじゃねぇ!もしも出て行ったら、ディオをぶん殴るからな」と言うものだからどうしようもない。何が起きたか分からないベッド中のディオを抱いて朝まで落ち着かずに過ごした。
母は帰ってこなかった。数日経って、父はようやく焦り始めたが、もしも彼女が彼に愛想をつかして出て行ったのならば、彼女にとって良いことだろうと俺は思った。だけども、彼女が俺たちを置いてでて行くような人ではないことを俺は知っていた。
さらに数日経って、父が母の行方を探し始めた頃に警察が家にやってきた。無能で有名なロンドン市警だ。
「おたくの嫁さんの事なんですがね……残念なことに……」
そういう口ぶりで話し始め、俺と父は言われるがままに警察についていき母の亡骸に対面した。途中で警官のひとりが俺をその部屋の中に入れるか迷ったようだったが、無視をして入った。
母はロープでベッドに括りつけられて、足だけがシーツの中から見えていた。床とベッドは血で濡れている。明らかに警察が裸の彼女に気を遣ってかけたのだろう。彼女は強姦され殺されていた。こんな様子を子どもに見せるなんて。俺がほんとうに幼い子どもであったなら永遠にトラウマになっていたろう。
雨の中飛び出した彼女は、不運なことにストーカー行為を働いていた酒場の客に捕まって、殺されてしまったのだ。あの晩、無理にでも探しに行けば良かったのだろうか?
警察は「犯人は分かっています」と名前を言った。そして「居場所はご存じですか」とも。父は知らないと言った。
警察がいなくなったあと、無残な亡骸を前に、はじめて父が泣く姿を見た。近寄って母の遺体を見ると、相変わらず美しい髪で、顔も血の気はないけども、腐り始めウジが湧いている体と比べれば綺麗なものだった。殺した相手も顔に傷は付けたくなかったのだ。
父は犯人の居場所を知っていた。母の遺体をその場に置いて、俺を連れて真っ直ぐに娼館へ向かった。3階建ての1階にいたその男は黒髪の女と寝ている最中だった。父はその男を殴りつけ、床に押し倒した。娼婦は驚きの俊敏さで廊下に出ていき、警察を求めて叫んだ。
案外とタフな男は父に反撃をして、懐に入れていたらしいナイフを振り上げた。「あんたの女が悪いんだ!あんたよりおれの方がずっといい男なのによぉ〜!」正直言ってどちらも同じようなものだが、殺さないだけ父の方がマシだ。俺は無防備に晒している男の背中に小型の銃で3発弾を撃ち込んだ。硝煙の匂いがする。絶命した男が床に転がる。銃弾は体に食い込み埋まった。血が一瞬にしてシャツから床へと広がり血溜まりを作る。奇妙な呻き声を何度かあげて男は止まった。
「おめぇ、どこでそんなもんを」
父は驚いていたが、そんな父だって銃は持っている。今は衝動的に行動したから備えていなかっただけだ。「よこせ!」と銃を俺から奪って、残りの弾を全部男に撃ち込んだ。頭、頭、首。それから、「いいか。こいつはオレが殺したんだ。お前じゃねぇ!警察が来てもなんにも言うんじゃねぇぞ。オレが!お前の母親の復讐をしたんだ……」と小声で言った。
警察はすぐに来たが、俺たちの姿を見ると顔を背けた。父は起訴されず、男の死因はならず者に殺された、と書かれた。どうやら母はいろんな人々に愛されていたらしい。それから彼女は共同墓地に入れられた。
このとき俺は思ったのだ。ただ現状を受け入れるだけでは駄目なのだ。もっと自分から行動して運命を変えなければならない。
これでは運命に俺の弟は殺されてしまうだろう、と。
今日、母が死んだ。病気や父からの暴行での死じゃあない。死ぬ前に激しく父から暴言を吐かれ、何度か殴られていたけれど、それも原因ではない。父の酔っ払ったあんまりな姿と暴力に外へ逃げ出した彼女は、酒屋の常連の男に偶然捕まってしまったのだ。
雨が降る夜だった。俺はディオを寝室に入れてシーツの中でくるまっているように指示した。それから母への暴行を止めるように言おうと、居間に向かうと、父は母を無理やり脱がしている途中だった。まぁ、ほとんど致している所だったのだけれど。こういう状況に会ったのははじめてじゃあないが、今日ほどま正面から見てしまって、かつ母がぼろぼろ泣いているような姿なのははじめてだった。
俺に見られた彼女は相当なショックを受けて、ーー俺が大人しく部屋に入ればよかったんだが、あの声や音じゃあ、ただ殴りつけているだけだと勘違いするのも無理はないだろうーーそのまま雨の中を飛び出して行ってしまった。彼女を追おうとする前に、父が俺を殴って少しの間気絶した。どんなに機嫌を取っていたって、酒を飲んでしまえばこの人は駄目なのだ。
意識を取り戻してから、ハッとして母を探そうとしたが、父は「あんな女に構うんじゃねぇ!もしも出て行ったら、ディオをぶん殴るからな」と言うものだからどうしようもない。何が起きたか分からないベッド中のディオを抱いて朝まで落ち着かずに過ごした。
母は帰ってこなかった。数日経って、父はようやく焦り始めたが、もしも彼女が彼に愛想をつかして出て行ったのならば、彼女にとって良いことだろうと俺は思った。だけども、彼女が俺たちを置いてでて行くような人ではないことを俺は知っていた。
さらに数日経って、父が母の行方を探し始めた頃に警察が家にやってきた。無能で有名なロンドン市警だ。
「おたくの嫁さんの事なんですがね……残念なことに……」
そういう口ぶりで話し始め、俺と父は言われるがままに警察についていき母の亡骸に対面した。途中で警官のひとりが俺をその部屋の中に入れるか迷ったようだったが、無視をして入った。
母はロープでベッドに括りつけられて、足だけがシーツの中から見えていた。床とベッドは血で濡れている。明らかに警察が裸の彼女に気を遣ってかけたのだろう。彼女は強姦され殺されていた。こんな様子を子どもに見せるなんて。俺がほんとうに幼い子どもであったなら永遠にトラウマになっていたろう。
雨の中飛び出した彼女は、不運なことにストーカー行為を働いていた酒場の客に捕まって、殺されてしまったのだ。あの晩、無理にでも探しに行けば良かったのだろうか?
警察は「犯人は分かっています」と名前を言った。そして「居場所はご存じですか」とも。父は知らないと言った。
警察がいなくなったあと、無残な亡骸を前に、はじめて父が泣く姿を見た。近寄って母の遺体を見ると、相変わらず美しい髪で、顔も血の気はないけども、腐り始めウジが湧いている体と比べれば綺麗なものだった。殺した相手も顔に傷は付けたくなかったのだ。
父は犯人の居場所を知っていた。母の遺体をその場に置いて、俺を連れて真っ直ぐに娼館へ向かった。3階建ての1階にいたその男は黒髪の女と寝ている最中だった。父はその男を殴りつけ、床に押し倒した。娼婦は驚きの俊敏さで廊下に出ていき、警察を求めて叫んだ。
案外とタフな男は父に反撃をして、懐に入れていたらしいナイフを振り上げた。「あんたの女が悪いんだ!あんたよりおれの方がずっといい男なのによぉ〜!」正直言ってどちらも同じようなものだが、殺さないだけ父の方がマシだ。俺は無防備に晒している男の背中に小型の銃で3発弾を撃ち込んだ。硝煙の匂いがする。絶命した男が床に転がる。銃弾は体に食い込み埋まった。血が一瞬にしてシャツから床へと広がり血溜まりを作る。奇妙な呻き声を何度かあげて男は止まった。
「おめぇ、どこでそんなもんを」
父は驚いていたが、そんな父だって銃は持っている。今は衝動的に行動したから備えていなかっただけだ。「よこせ!」と銃を俺から奪って、残りの弾を全部男に撃ち込んだ。頭、頭、首。それから、「いいか。こいつはオレが殺したんだ。お前じゃねぇ!警察が来てもなんにも言うんじゃねぇぞ。オレが!お前の母親の復讐をしたんだ……」と小声で言った。
警察はすぐに来たが、俺たちの姿を見ると顔を背けた。父は起訴されず、男の死因はならず者に殺された、と書かれた。どうやら母はいろんな人々に愛されていたらしい。それから彼女は共同墓地に入れられた。
このとき俺は思ったのだ。ただ現状を受け入れるだけでは駄目なのだ。もっと自分から行動して運命を変えなければならない。
これでは運命に俺の弟は殺されてしまうだろう、と。