ジョースター家への旅路
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さて、それからは滞りなくことは運び、ディオをジョースター家への馬車に乗せたあと、ただエジプトへの旅路を待つだけとなった。
エジプトへ仕事に行けることになったきっかけはまったく運命というしかなかった。なんとなくだが、この世界は運命という曖昧で強固なストーリでできている、と感じる。運命を感じたものについて行けば、自ずと道は開かれる。そこには己の主義主張は関係ない。確固たる意思を持って、運命を見定めれば向かうべき正しい道が分かるのだ。
ただエジプトに行くのではない。偶然貴族が若い通訳を探していて、偶然俺の雇い主が仲介人で、偶然エジプトの遺跡発掘の仕事を貰った……その遺跡は呪いがあると噂され、実際に何人かは死んだともいう。しかも奇妙なことに不可解な現象も呪いとは別に発生しているらしい。そんな噂が飛び交う中で真っ先に手を上げたのが俺であったし、1番条件に合うのも俺だった。こういうのって運命といえないだろうか?呪いの件はかなり恐ろしいし、漠然としたものではなく、古代の病や風土病が蔓延しているのかもしれない。万全を期して向かうつもりではあるが、ディオの元を離れて仕事に就くのは賭けでもある。死ぬ気はさらさらないし、高額な給料と待遇はこれからの役に立つ。もう気軽にジョースター家への世話になるのは難しい年だし、父を殺して孤児になるのも外聞が悪い。それに彼は自分のこともディオのことも、歪ながら愛してはいる。いつか利用できるときが来るかもしれない。
乱暴者の父を置いて行くことには後悔はないけれど、ひとりジョースター家に向かうディオは少しばかり心配だ。本の中では、確か、ジョースター家に養子に入るのは数年先であった。父はまだ死なず、兄も生きている。ある程度仕事がまとまればイギリスに戻ろうと思っているが、それまで彼の生活にはほとんど関われない。ずっと見てきただけに寂しさや不安が付きまとう。……ディオであれば大丈夫であろうけれど。
「おい、これを持っていけ」
「……なんだい?これは」
ダリオが渡した白い包みを開くと、拳銃がひとつと弾が1箱。怪しげな液体の入った瓶が入っていた。
「自分のが身が危なくなったらそれで守れ。エジプトってのは治安が悪いからな。そっちの瓶は、…まあ嫌いなやつの食事にでも混ぜればことがうまく運ぶ」
「ようするに毒ってことだろう」
この父ありて子あり、絶対にディオは否定するが、彼と父親は似ているところがかなりある。主に悪いところばかりだけれど。
セオは苦笑いをした。
「ありがとう、父さん。でも心配いらない。ご主人さまはいい人そうだしね。万が一のために貰っておくけど」
「そうかよ。……毎月仕送りを忘れるな!誰のおかげで仕事できてるのか考えるんだ」
「分かってる。寂しくなるよ」
随分と背の低くなった父に抱き着くと、珍しく父も返してくれる。最近は長年の不摂生が祟り、体調が思わしくないらしい。人間、不健康になったり考え事が多くなると我が身を振り返る。時折まるで良い父のような言動をするのもそのせいだろう。
「お前は15だし、このあたりじゃ一番頭も器量もいい。うまくやるだろうな、オレとは違って」
「さあね、どうだろう。努力はするけど」
後ろで馬車の従者が早くしろと声かける。そっと父から離れてセオは懐からブレスレットを取り出した。細工のない銀色のブレスレット。中には母の写真が入っている。
「これ、母さんのものはほとんど売ってしまっただろう。父さんに上げるよ」
「隠してたのか……」
セオが安定した職に就くまで、母が死んでからの父はさらに荒れていて、母を思い出させるようなものはほとんど売り払ってしまった。それは幼いディオにトラウマを残すことにもなったが、あんな母の死に目を見たら同情の気持ちも持つ。
「大切にしてよ」
「お前が持ってろ」
「いや、…俺は思い出だけで十分だもの。俺たち兄弟がいなくなったら、父さんだって寂しいだろ」
言葉を無くした父を置いて、セオは馬車の中へ滑り込んだ。「ねえ、父さん。心配しなくても休みにはこっちに戻ってくるさ!約束するよ」これから数年、セオはイギリスへ戻らなかったが、それは彼が嘘をついたのではなく、ただ仕事が忙しかったからだ。それに、エジプトとイギリスは地図で見るよりもかなり遠い。
彼が戻ったのは、彼の目的が達成されたあと、——一生を暮らせる財産と「矢」を手に入れたあとであった。
エジプトへ仕事に行けることになったきっかけはまったく運命というしかなかった。なんとなくだが、この世界は運命という曖昧で強固なストーリでできている、と感じる。運命を感じたものについて行けば、自ずと道は開かれる。そこには己の主義主張は関係ない。確固たる意思を持って、運命を見定めれば向かうべき正しい道が分かるのだ。
ただエジプトに行くのではない。偶然貴族が若い通訳を探していて、偶然俺の雇い主が仲介人で、偶然エジプトの遺跡発掘の仕事を貰った……その遺跡は呪いがあると噂され、実際に何人かは死んだともいう。しかも奇妙なことに不可解な現象も呪いとは別に発生しているらしい。そんな噂が飛び交う中で真っ先に手を上げたのが俺であったし、1番条件に合うのも俺だった。こういうのって運命といえないだろうか?呪いの件はかなり恐ろしいし、漠然としたものではなく、古代の病や風土病が蔓延しているのかもしれない。万全を期して向かうつもりではあるが、ディオの元を離れて仕事に就くのは賭けでもある。死ぬ気はさらさらないし、高額な給料と待遇はこれからの役に立つ。もう気軽にジョースター家への世話になるのは難しい年だし、父を殺して孤児になるのも外聞が悪い。それに彼は自分のこともディオのことも、歪ながら愛してはいる。いつか利用できるときが来るかもしれない。
乱暴者の父を置いて行くことには後悔はないけれど、ひとりジョースター家に向かうディオは少しばかり心配だ。本の中では、確か、ジョースター家に養子に入るのは数年先であった。父はまだ死なず、兄も生きている。ある程度仕事がまとまればイギリスに戻ろうと思っているが、それまで彼の生活にはほとんど関われない。ずっと見てきただけに寂しさや不安が付きまとう。……ディオであれば大丈夫であろうけれど。
「おい、これを持っていけ」
「……なんだい?これは」
ダリオが渡した白い包みを開くと、拳銃がひとつと弾が1箱。怪しげな液体の入った瓶が入っていた。
「自分のが身が危なくなったらそれで守れ。エジプトってのは治安が悪いからな。そっちの瓶は、…まあ嫌いなやつの食事にでも混ぜればことがうまく運ぶ」
「ようするに毒ってことだろう」
この父ありて子あり、絶対にディオは否定するが、彼と父親は似ているところがかなりある。主に悪いところばかりだけれど。
セオは苦笑いをした。
「ありがとう、父さん。でも心配いらない。ご主人さまはいい人そうだしね。万が一のために貰っておくけど」
「そうかよ。……毎月仕送りを忘れるな!誰のおかげで仕事できてるのか考えるんだ」
「分かってる。寂しくなるよ」
随分と背の低くなった父に抱き着くと、珍しく父も返してくれる。最近は長年の不摂生が祟り、体調が思わしくないらしい。人間、不健康になったり考え事が多くなると我が身を振り返る。時折まるで良い父のような言動をするのもそのせいだろう。
「お前は15だし、このあたりじゃ一番頭も器量もいい。うまくやるだろうな、オレとは違って」
「さあね、どうだろう。努力はするけど」
後ろで馬車の従者が早くしろと声かける。そっと父から離れてセオは懐からブレスレットを取り出した。細工のない銀色のブレスレット。中には母の写真が入っている。
「これ、母さんのものはほとんど売ってしまっただろう。父さんに上げるよ」
「隠してたのか……」
セオが安定した職に就くまで、母が死んでからの父はさらに荒れていて、母を思い出させるようなものはほとんど売り払ってしまった。それは幼いディオにトラウマを残すことにもなったが、あんな母の死に目を見たら同情の気持ちも持つ。
「大切にしてよ」
「お前が持ってろ」
「いや、…俺は思い出だけで十分だもの。俺たち兄弟がいなくなったら、父さんだって寂しいだろ」
言葉を無くした父を置いて、セオは馬車の中へ滑り込んだ。「ねえ、父さん。心配しなくても休みにはこっちに戻ってくるさ!約束するよ」これから数年、セオはイギリスへ戻らなかったが、それは彼が嘘をついたのではなく、ただ仕事が忙しかったからだ。それに、エジプトとイギリスは地図で見るよりもかなり遠い。
彼が戻ったのは、彼の目的が達成されたあと、——一生を暮らせる財産と「矢」を手に入れたあとであった。