ジョースター家への旅路
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「父さん、ジョースター卿への手紙は書いてくれたかい」
「うるせぇな……まだだよ。なんて書くか迷ってんだ」
セオは父に酒を注ぎながらクリーム色の手紙を覗き込んだ。ペンを持つ父は鬱陶しそうに顔を歪ませている。
「お前にジョースター卿のことがバレたのは不味かったな。こんなにせびられるなんてよォ〜」
ハゲた頭を掻きながらダリオは愚痴をこぼす。セオはサッとペンを取りあげて、一二行するすると文字をかいて父に突きだした。
「ほら!……息子に学ばせたいのにお金に不自由なため困っています。助けてください!……と、こう書けばいいんだよ。ジョースター卿は相当なお人好しなんだろう。ディオは学校でもトップの成績だし、何かしら手は貸してくれる」
「分かってんだよ、そんなことは!大人同士の付き合いってのがあるんだ。簡単に大それたことは言えねぇ。相手は貴族様だしよ」
ダリオは案外とプライドが高かった。息子の為とはいえ、以前貰った大金を失った——貴族からすれば微々たるものだが——と告げるのは嫌だった。そういう父の気持ちはセオも知っていたが、ここ数ヶ月同じやり取りをしていることにもまた、苛つきをおぼえていた。
彼は近々エジプトに行く。エジプトで発掘作業をする予定の貴族が通訳を探しているということで、人柄や仕事への信頼があったセオに白羽の矢が立ったのだ。まだ15であったけれど、依頼人は若者を欲しがっていたし、身の回りの世話も任せたいということで、そこそこ見目も良い青年を選んだ。セオはこういうときは人好きのする見た目をくれた両親に有難く思う。もちろん正式な通訳は他にもいるのだけれど、セオはお飾りだったり、依頼人の子どもの遊び相手としても選ばれたのだろう。
「俺がエジプトへ行ってしまったあと、ディオが心配なんだ。父さんは忙しくて構ってやれないだろうし、あいつはすごく頭がいいからキチンとした教育を受けさせたい」
「もう耳にタコができるくらい聞いたさそれは!明日には書く。きっとな」
セオは勝手に手紙を出してしまおうかと思ったが、それが父の怒りを買うことは分かっていたからやめた。だいたい、彼がジョースター卿に頼むのを嫌がる理由はプライド以外にはないのだ。ディオがいなくても生活していけるお金は、エジプトの仕事の前借りやこれまでの貯蓄の分を渡したし、酒場の経営もしていない父はその日払いの仕事しかしていないから、息子がいなくたって生きていける。これからも仕送りを送る予定であった。あとはディオのことだけなのだ……、こんな父の元に置いて彼の元を離れる訳にはいかない。
「約束しておくれよ。俺が心配なのはディオだけなんだから」
「そんなに心配ならエジプトなんかに行かなきゃあいいんだ。そうすりゃお前がディオに勉強だって教えられる」
「俺の教えなんて大したものはないよ!貴族に頼んだ方がずっといい。それに、エジプトに行くのはもう決めたことじゃない。貴族の使用人として働くんだ。身なりも服装も、仕事だって今までより良い。向こうでいい働きをしたら昇級だってするし、現場を任されるかも、…給料もいままでの3倍はある。父さんだって喜んでたろう」
ううんと唸って、ダリオは手紙を書き始める。ダリオはお金のことよりも、この賢くて自分を良い気持ちにさせてくれる息子を手放し難く思っていた。その上、もしディオも貴族が何とかしてくれて、どこぞへ行かせるようなら一人ぼっちになってしまうのだ。孤独を恐れるような歳ではないが、紛いなりにも父として幼い子どもが手元を離れるのは嫌らしかった。
「ディオは歳の割に大人びてるし自立してるけど、このままじゃ金持ちになんてなりゃしないよ。頼むよ父さん」
「お前はあいつの親か?オレだって考えてるさ!」
ほとんど怒鳴りつけるように言って、ダリオはさらに文字を綴った。
セオはほとんどの人間より忍耐深いし、あらゆることを受け流せる精神を持っていたが、ディオは違う。日常的に暴言や暴力を働くこの父と暮らしていたら、いつか彼を殺してしまうだろう。たしかに彼は父を毒殺するのだが……できるならそんな状態には弟を置きたくはなかった。
兄であるセオよりも、父はディオへの当たりが強かった。それはおかしなくらい父の扱いが上手い兄との比較か、母と似ている姿のせいかは分からないが、ディオが父を憎んでいることは確かである。
翌日、一晩かけて作られた手紙をジョースター卿に送ってからセオは仕事へ向かった。ディオは朝早くから仕事に出ていた。父はまだ酒に酔って眠っている。
「うるせぇな……まだだよ。なんて書くか迷ってんだ」
セオは父に酒を注ぎながらクリーム色の手紙を覗き込んだ。ペンを持つ父は鬱陶しそうに顔を歪ませている。
「お前にジョースター卿のことがバレたのは不味かったな。こんなにせびられるなんてよォ〜」
ハゲた頭を掻きながらダリオは愚痴をこぼす。セオはサッとペンを取りあげて、一二行するすると文字をかいて父に突きだした。
「ほら!……息子に学ばせたいのにお金に不自由なため困っています。助けてください!……と、こう書けばいいんだよ。ジョースター卿は相当なお人好しなんだろう。ディオは学校でもトップの成績だし、何かしら手は貸してくれる」
「分かってんだよ、そんなことは!大人同士の付き合いってのがあるんだ。簡単に大それたことは言えねぇ。相手は貴族様だしよ」
ダリオは案外とプライドが高かった。息子の為とはいえ、以前貰った大金を失った——貴族からすれば微々たるものだが——と告げるのは嫌だった。そういう父の気持ちはセオも知っていたが、ここ数ヶ月同じやり取りをしていることにもまた、苛つきをおぼえていた。
彼は近々エジプトに行く。エジプトで発掘作業をする予定の貴族が通訳を探しているということで、人柄や仕事への信頼があったセオに白羽の矢が立ったのだ。まだ15であったけれど、依頼人は若者を欲しがっていたし、身の回りの世話も任せたいということで、そこそこ見目も良い青年を選んだ。セオはこういうときは人好きのする見た目をくれた両親に有難く思う。もちろん正式な通訳は他にもいるのだけれど、セオはお飾りだったり、依頼人の子どもの遊び相手としても選ばれたのだろう。
「俺がエジプトへ行ってしまったあと、ディオが心配なんだ。父さんは忙しくて構ってやれないだろうし、あいつはすごく頭がいいからキチンとした教育を受けさせたい」
「もう耳にタコができるくらい聞いたさそれは!明日には書く。きっとな」
セオは勝手に手紙を出してしまおうかと思ったが、それが父の怒りを買うことは分かっていたからやめた。だいたい、彼がジョースター卿に頼むのを嫌がる理由はプライド以外にはないのだ。ディオがいなくても生活していけるお金は、エジプトの仕事の前借りやこれまでの貯蓄の分を渡したし、酒場の経営もしていない父はその日払いの仕事しかしていないから、息子がいなくたって生きていける。これからも仕送りを送る予定であった。あとはディオのことだけなのだ……、こんな父の元に置いて彼の元を離れる訳にはいかない。
「約束しておくれよ。俺が心配なのはディオだけなんだから」
「そんなに心配ならエジプトなんかに行かなきゃあいいんだ。そうすりゃお前がディオに勉強だって教えられる」
「俺の教えなんて大したものはないよ!貴族に頼んだ方がずっといい。それに、エジプトに行くのはもう決めたことじゃない。貴族の使用人として働くんだ。身なりも服装も、仕事だって今までより良い。向こうでいい働きをしたら昇級だってするし、現場を任されるかも、…給料もいままでの3倍はある。父さんだって喜んでたろう」
ううんと唸って、ダリオは手紙を書き始める。ダリオはお金のことよりも、この賢くて自分を良い気持ちにさせてくれる息子を手放し難く思っていた。その上、もしディオも貴族が何とかしてくれて、どこぞへ行かせるようなら一人ぼっちになってしまうのだ。孤独を恐れるような歳ではないが、紛いなりにも父として幼い子どもが手元を離れるのは嫌らしかった。
「ディオは歳の割に大人びてるし自立してるけど、このままじゃ金持ちになんてなりゃしないよ。頼むよ父さん」
「お前はあいつの親か?オレだって考えてるさ!」
ほとんど怒鳴りつけるように言って、ダリオはさらに文字を綴った。
セオはほとんどの人間より忍耐深いし、あらゆることを受け流せる精神を持っていたが、ディオは違う。日常的に暴言や暴力を働くこの父と暮らしていたら、いつか彼を殺してしまうだろう。たしかに彼は父を毒殺するのだが……できるならそんな状態には弟を置きたくはなかった。
兄であるセオよりも、父はディオへの当たりが強かった。それはおかしなくらい父の扱いが上手い兄との比較か、母と似ている姿のせいかは分からないが、ディオが父を憎んでいることは確かである。
翌日、一晩かけて作られた手紙をジョースター卿に送ってからセオは仕事へ向かった。ディオは朝早くから仕事に出ていた。父はまだ酒に酔って眠っている。