はじめまして
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春眠暁を覚えずとはよく言ったもので、寝過ごすことも度々ある。春は好きだ。
だらだらと春に想いを馳せていたところに冷たい風が吹く。まったく風情がない。
まさに初冬、段々肌寒く人肌恋しい季節でもある。
そしてなんら変わりのない世間の脇役として普遍的な日々を送る。
「倉持先輩はいつ私を迎えに来てくれるのかな」
夢を見すぎな自覚はある。
日常全てがつまらない。
努力なんか意味が無い。
私ごときが何をしたところで誰かの役に立てる訳でもない。
生きる理由なんか思いつきもしない。
世界から自分は意味のないものとして扱われる。
しかしそんな夢子 夢野にも生き続けていたい理由が確かに存在するのだ。
ダイヤのAという作品の、倉持洋一その人である。
「どうせ二次元なんだけどね」
わかっている。わかっているのだけど夢を捨てきれるほど大人じゃない。
単調な日々を繰り返すことでいつのまにか冬の始まりが近づいてきた。
学年末テストのせいで心身ともに限界だった。
いつもの帰り道、降り立った駅のホームの乾燥した空気に湿った白い気体が溶ける。
改札機を出る。
そういえば定期券の更新そろそろだなぁ。
しんしんと降りつづける細やかなつばさは夢野の長い髪を確実に純白に染めていた。
やっぱりこの日常はつまらない。
後ろからなにか特徴的な笑い声が聞こえたような気がした。それはまるで大好きな先輩の声だった。
「勉強のしすぎかな、頭の使いすぎで頭がおかしくなったのかも。このまま死ぬのかな」
大丈夫だ、勉強のしすぎで死んだり頭が混乱するなんて聞いたことがない。
振り払うようにして足をすすめようとした。
ところが……おかしい。先程から一向に家へ辿り着かないのだ。どうして。
同じ場所を何周もしている気がするのに。
もうゆうに二十分は過ぎている。このままでは塾に遅れてしまう。
「もういいや、塾なんか行かない。家にたどり着けないんだからこのままどっか行く」
彼女の張り詰めた脳内は良くない方向に展開した。
先程降り立った駅に戻ろうとした。
ところが戻れないのだ。
曲がり角に着いたと思ったら最初にたっていた場所に戻っている。うんざりしてきた。
悲しくもないのに視界が滲んでいる。
この年になって泣くなどありえない。私はこんなにも弱かったのか。
「なにこれ、絶対おかしいよ 私なにかしたっけ?」
周囲に人影はない。
「おーしおしおし……」
突如背後から声が聞こえる。自分だけではないと安心して振り返った。
·····誰もいない。もうどうでもいい。
こんなにありえない現実なのだから倉持先輩が助けてくれても良いんじゃないのだろうか。
「……悪かったな、二次元なんかで」
優しい声が聞こえる。優しいけれどすこし拗ねたような声。
そんなこと口に出した覚えがない。
「でも迎えに来てやっただろ…泣くなよ。」
見上げるのが怖い。見上げて、見てしまったら最後、自分がおかしいことに気づいてしまう。せめて遺書を書かせて欲しかった。
「お前、俺に手紙書いただろ。ずっと俺を応援したい。できることならその背中を支えたいって、そう書いただろ。」
もう無理だった。たまらず見上げる。
彼の輝く瞳と緑がかった柔らかな髪。
レンズ越しに見る彼の顔は美しかった。
「傘もささずに何してんだよ。」
「でも……だって…ねぇ。倉持先輩。目の前に先輩がいるんだから雪が降ってるのも夢かもしれないよ」
「そうかもしれない。でもどこにもそんな証拠ないだろ。」
「確かにそうだね。そんな偉そうなこと言うなら、倉持先輩、私をどこか別の場所まで連れて行ってよ。ここから出られないの。」
「お望みのままに、俺の我儘なお姫様」
「ありがとう、先輩」
細やかな、柔らかい雪のつばさはまるで二人を祝福するかのようだった
だらだらと春に想いを馳せていたところに冷たい風が吹く。まったく風情がない。
まさに初冬、段々肌寒く人肌恋しい季節でもある。
そしてなんら変わりのない世間の脇役として普遍的な日々を送る。
「倉持先輩はいつ私を迎えに来てくれるのかな」
夢を見すぎな自覚はある。
日常全てがつまらない。
努力なんか意味が無い。
私ごときが何をしたところで誰かの役に立てる訳でもない。
生きる理由なんか思いつきもしない。
世界から自分は意味のないものとして扱われる。
しかしそんな夢子 夢野にも生き続けていたい理由が確かに存在するのだ。
ダイヤのAという作品の、倉持洋一その人である。
「どうせ二次元なんだけどね」
わかっている。わかっているのだけど夢を捨てきれるほど大人じゃない。
単調な日々を繰り返すことでいつのまにか冬の始まりが近づいてきた。
学年末テストのせいで心身ともに限界だった。
いつもの帰り道、降り立った駅のホームの乾燥した空気に湿った白い気体が溶ける。
改札機を出る。
そういえば定期券の更新そろそろだなぁ。
しんしんと降りつづける細やかなつばさは夢野の長い髪を確実に純白に染めていた。
やっぱりこの日常はつまらない。
後ろからなにか特徴的な笑い声が聞こえたような気がした。それはまるで大好きな先輩の声だった。
「勉強のしすぎかな、頭の使いすぎで頭がおかしくなったのかも。このまま死ぬのかな」
大丈夫だ、勉強のしすぎで死んだり頭が混乱するなんて聞いたことがない。
振り払うようにして足をすすめようとした。
ところが……おかしい。先程から一向に家へ辿り着かないのだ。どうして。
同じ場所を何周もしている気がするのに。
もうゆうに二十分は過ぎている。このままでは塾に遅れてしまう。
「もういいや、塾なんか行かない。家にたどり着けないんだからこのままどっか行く」
彼女の張り詰めた脳内は良くない方向に展開した。
先程降り立った駅に戻ろうとした。
ところが戻れないのだ。
曲がり角に着いたと思ったら最初にたっていた場所に戻っている。うんざりしてきた。
悲しくもないのに視界が滲んでいる。
この年になって泣くなどありえない。私はこんなにも弱かったのか。
「なにこれ、絶対おかしいよ 私なにかしたっけ?」
周囲に人影はない。
「おーしおしおし……」
突如背後から声が聞こえる。自分だけではないと安心して振り返った。
·····誰もいない。もうどうでもいい。
こんなにありえない現実なのだから倉持先輩が助けてくれても良いんじゃないのだろうか。
「……悪かったな、二次元なんかで」
優しい声が聞こえる。優しいけれどすこし拗ねたような声。
そんなこと口に出した覚えがない。
「でも迎えに来てやっただろ…泣くなよ。」
見上げるのが怖い。見上げて、見てしまったら最後、自分がおかしいことに気づいてしまう。せめて遺書を書かせて欲しかった。
「お前、俺に手紙書いただろ。ずっと俺を応援したい。できることならその背中を支えたいって、そう書いただろ。」
もう無理だった。たまらず見上げる。
彼の輝く瞳と緑がかった柔らかな髪。
レンズ越しに見る彼の顔は美しかった。
「傘もささずに何してんだよ。」
「でも……だって…ねぇ。倉持先輩。目の前に先輩がいるんだから雪が降ってるのも夢かもしれないよ」
「そうかもしれない。でもどこにもそんな証拠ないだろ。」
「確かにそうだね。そんな偉そうなこと言うなら、倉持先輩、私をどこか別の場所まで連れて行ってよ。ここから出られないの。」
「お望みのままに、俺の我儘なお姫様」
「ありがとう、先輩」
細やかな、柔らかい雪のつばさはまるで二人を祝福するかのようだった
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