20.バレンタインデー
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自分にはとても縁のないイベントだが、もし恋人でもいれば、こんな賑やかなフロアも、夢の国のように感じるのだろうか。真琴はそんなことを考えていた。
真琴たち4人は今、並盛のショッピングモールに来ていた。2月上旬。
季節柄か、施設内の吹き抜けになっている1階広場で、バレンタインフェアと書かれた垂れ幕が下がり、フロアはピンクや赤の花やリボンが飾られ、恋愛ソングが流れている。
そしてもちろん、カラフルなプレゼントの山がところせましと並べられ、買い物客を魅了していた。
真琴は友人たちからそっと離れ、ふらふらとバレンタインフェアの一角に近づいてみた。
どれもきれいに着飾られた箱ばかり。その中に入っているチョコレートがガラスケースで展示されている。
真琴は思案する。どれがいちばん良いものなのか。どれを選べばいいのか。正直まったく分からない。
だが一つだけ、真琴の目を引いたものがあった。深いブルーの箱に、まっしろなレースのリボンが結ばれている。どの箱もかわいらしいのだが、真琴にとってはそれがいちばん上品で、美しく感じた。
ガラスケースを覗き込む。箱のなかは六つに分けられており、一口サイズのチョコレートが行儀よく並んでいた。どれも微妙に味が違うらしい。
「お決まりですか?」
背後から声をかけられ、びくっと真琴は肩を震わす。気づけばフロアの販売員が、買い物用にと小さな専用のかごを差し出しながら微笑んでいる。非の打ち所がない完璧な化粧に、あざやかなリップがまぶしい。
「あ、あの、これ」
真琴が指さした商品に、女性スタッフは顔をほころばせた。
「ああ! それもすごく人気なんです。甘くなさすぎると言うか、ビター系でもないんですよね。ひかえめな甘さだから、女性でも男性でも渡す相手を選ばないと言うか」
「これ、女の子も、喜びますか」
「ええ! あ、ご友人にですか?」
「まあ、その……はい」
緊張のあまり、真琴は自分が何を話しているのか分からなくなりそうだった。気づけば女性スタッフは真琴が選んだ商品を一つ手に、レジへ向かおうとしている。
「あ、あの、いいです、自分で持ってきます」
「いえいえ! 大丈夫ですよ、今ちょうど人が少ないので」
これまた眩しい笑顔で返されると、何も言えなくなってしまう。女性スタッフの後ろをすごすごとついていき、お会計を済ませた。
どうぞ、ととびきり優しい笑顔と一緒に、ブルーのプレゼントは真琴の手元にやってきた。
紙袋をきゅ、とすがるように両手で持ち、案内してくれた女性に頭を下げながらその場を去る。
ふわふわ、そわそわ、どきどき。なんともいえない感情を抱えつつ、真琴はバッグに、そっとプレゼントを入れた。そのまま何食わぬ顔で、スーパーで手作りの材料を選ぶ沙良たちと合流する。
(内緒にしてよう)
「真琴、なんかほしいもんないか?」
鳴海の質問に、真琴は首を左右に振る。自然と視線は、プレゼントの入ったバッグばかり追っていた。
真琴たち4人は今、並盛のショッピングモールに来ていた。2月上旬。
季節柄か、施設内の吹き抜けになっている1階広場で、バレンタインフェアと書かれた垂れ幕が下がり、フロアはピンクや赤の花やリボンが飾られ、恋愛ソングが流れている。
そしてもちろん、カラフルなプレゼントの山がところせましと並べられ、買い物客を魅了していた。
真琴は友人たちからそっと離れ、ふらふらとバレンタインフェアの一角に近づいてみた。
どれもきれいに着飾られた箱ばかり。その中に入っているチョコレートがガラスケースで展示されている。
真琴は思案する。どれがいちばん良いものなのか。どれを選べばいいのか。正直まったく分からない。
だが一つだけ、真琴の目を引いたものがあった。深いブルーの箱に、まっしろなレースのリボンが結ばれている。どの箱もかわいらしいのだが、真琴にとってはそれがいちばん上品で、美しく感じた。
ガラスケースを覗き込む。箱のなかは六つに分けられており、一口サイズのチョコレートが行儀よく並んでいた。どれも微妙に味が違うらしい。
「お決まりですか?」
背後から声をかけられ、びくっと真琴は肩を震わす。気づけばフロアの販売員が、買い物用にと小さな専用のかごを差し出しながら微笑んでいる。非の打ち所がない完璧な化粧に、あざやかなリップがまぶしい。
「あ、あの、これ」
真琴が指さした商品に、女性スタッフは顔をほころばせた。
「ああ! それもすごく人気なんです。甘くなさすぎると言うか、ビター系でもないんですよね。ひかえめな甘さだから、女性でも男性でも渡す相手を選ばないと言うか」
「これ、女の子も、喜びますか」
「ええ! あ、ご友人にですか?」
「まあ、その……はい」
緊張のあまり、真琴は自分が何を話しているのか分からなくなりそうだった。気づけば女性スタッフは真琴が選んだ商品を一つ手に、レジへ向かおうとしている。
「あ、あの、いいです、自分で持ってきます」
「いえいえ! 大丈夫ですよ、今ちょうど人が少ないので」
これまた眩しい笑顔で返されると、何も言えなくなってしまう。女性スタッフの後ろをすごすごとついていき、お会計を済ませた。
どうぞ、ととびきり優しい笑顔と一緒に、ブルーのプレゼントは真琴の手元にやってきた。
紙袋をきゅ、とすがるように両手で持ち、案内してくれた女性に頭を下げながらその場を去る。
ふわふわ、そわそわ、どきどき。なんともいえない感情を抱えつつ、真琴はバッグに、そっとプレゼントを入れた。そのまま何食わぬ顔で、スーパーで手作りの材料を選ぶ沙良たちと合流する。
(内緒にしてよう)
「真琴、なんかほしいもんないか?」
鳴海の質問に、真琴は首を左右に振る。自然と視線は、プレゼントの入ったバッグばかり追っていた。
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