11.ボクシングの熱い男
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「沙良、ごめん」
ばつが悪そうに謝る鳴海に、沙良はやさしくほほえむだけだった。
数十分前、沙良は家で夕飯の支度中、足りない食材に気づいた。あわててスーパーへ向かう途中、通りかかった公園で鳴海を見つけたのだ。なかなか帰ってこなかったから少し心配していたのだが、なんと不良グループに囲まれているではないか。
助けを呼ぼうとしたのもつかの間、鳴海は自信の武器である大槍を手に、次々と襲いかかってくる不良達を押し返した。怪我をさせないように気を使ってか、遠ざけたり、避けたり、攻撃らしい攻撃はしていない。
沙良は今のところ、戦闘に不向きな人間だった。この世界につれてこられた際、与えられた能力も治癒能力しかない。彼女の戦いを見守り、もし不利になったら通報しようと考えていた。
が、杞憂に終わった。
根負けした不良たちが逃げていく。入れ替わるように沙良は公園の敷地内へ入り、鳴海に声をかけた。
くるりと振り返った鳴海は恥ずかしそうに照れ笑いを浮かべ、その頬にはかすり傷が。沙良は治癒の炎をあててやった。
「鳴海、あの人たちは?」
「え?ああ、復讐だって。俺に」
「え!?」
「前に、隣のクラスでいじめしてた奴がいたから止めたんだよ。殴ったり蹴ったりホントひどくてさ。向こうから殴ってきたからやり返した。そしたらそいつの兄ちゃんが、仲間引き連れてやってきたってわけ」
この世界に連れてこられ、戦う力を与えられてからというもの、鳴海は積極的に弱者を助けに行っていた。救った人は数知れず、学校でも彼女は人気者だった。女子が多めのファンクラブすらある。
だがそのぶん、こうして危ない目にも合いやすい。沙良は複雑な気持ちだった。鳴海のやりたいようにやらせたいが、いつかとんでもない大ケガをするのではと心配だ。
そんな彼女の憂いを悟ったか、鳴海は大笑いし、
「それでもさ、さすがにもうちょっと強くなりたいな。誰のおかげか知らないけど、動きは格段に良くなった。でも、体力がなあ」
「わ、わたしも、強くなりたい」
沙良は必死な表情だ。
「私も強くなって、戦えば、鳴海を助けられるかも」
「沙良……」
「うむ!!いい心がけだ!!」
突如、聞きなれない男子の声が公園にこだまする。二人はびくりと肩を震わせ、ぽかんと口を開けてその方を見た。
***
「なーんか、最近変なんだよね」
朝の憂鬱な登校中、ぬっと現れたしきみに、綱吉がわあっ、と飛び上がった。
「へ、変って何が?」
「鳴海と沙良。ここ最近早く学校行って、遅く帰ってくるの。何してんのか聞いても教えてくれないし! ずるいと思わない?! 絶対面白いことしてるんだよー!」
ぷんぷん、と怒るしきみ。その後ろでは真琴が、これまた鬱屈とした雰囲気だ。
「真琴、どうしちゃったの」綱吉が耳打ちする。
「沙良に隠し事されて落ち込んでるの。沙良のこと大好きだからさ。あーあ、なんかスカッとすること起きないかなー」
「お前たち」
しきみの声とは裏腹に、高いが落ち着きはらった声。
リボーンだ。手には例のごとく、死ぬ気弾の入った拳銃が。
「り、リボーン!!ま、まさか、」
「このままだと、遅刻だぞ。しきみ、真琴、ツナの腕を掴んどけ」
「ええ!?」
「はいよー!」
「……わかった」
がし、と両腕をホールドされ、綱吉が慌てたのも一時、小さな指が、トリガーを引いた。
*
「うおおおお!! 死ぬ気で登校する!!」
しきみと真琴を両脇に抱え、パンツ一丁、死ぬ気でひた走る綱吉。
「ひゃっほー!! たーのしー!!」
遊園地の絶叫系か好きなしきみは大はしゃぎ、反対に真琴は顔を青くして耐えている。
「あ! そうだ!! ツナくん風いる!?」
「おう!! どんとこい!!」
「りょうかーい!!」
綱吉に抱えられているのもあってしきみ自身の手は後を向いており、そこから風が生まれた。それがジェット機のような役割を果たし、早い話が、綱吉の走りに拍車をかけた。
地平線の彼方に、並盛校舎、校門が見えた。綱吉たちは行き交う生徒の間を駆け抜ける。猛スピードでやってきた3人に、悲鳴をあげた生徒は少なくない。その瞬間、
「待ちな!」
綱吉の肩を、一人の男子生徒が掴んできた。しきみはあっ、と驚く。振り払われてしまうと思われたが、なんとその男子は綱吉にしがみついてきたではないか。
綱吉ジェット機に1人の乗客追加だ。
「う、うおおお!!?」
「だ、大丈夫!!?」
「う、うむ、平気だ!!」
しきみの叫びにも、上手く受け答えしている。綱吉は歯牙にもかけぬ様子で、校門を突破し、人気の無い校舎の影へ飛び込んだ。
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