08.入ファミリー試験
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見慣れたインターネットの検索画面。入力フォームに『エテルナ』一文字分スペースを空けて『意味』と打ち込む。答えは、1秒足らずで出てきた。
エテルナ:イタリア語で“永遠”を意味する。
「……」
歩きスマホに罪悪感を覚えつつ、真琴は画面に見入る。
昨日、一人の子供がイタリアからやってきた。
ランボ。齢5にしてマフィアボヴィーノファミリーに所属、ヒットマンの肩書を持つ彼は、リボーンを倒す野望を持って、綱吉たちの目の前に現れたのだ。
しかし所詮5歳、ふるまいは子供で、リボーンの強さの前に惨敗していた。だが彼が持ち出した『10年バズーカ』という秘密兵器によって事態は変わった。
10年バズーカ。撃たれたものが10年後の自分と5分間だけ入れ替わる。つまり15歳になったランボと、傍にいて被弾した10年後のしきみが現れたのだ。
15歳のランボは、真琴たちに向かって言った。
『エテルナリングの若き継承者たち』、と。
自分たちにとって、この世界が異世界であることは十分に痛感していた。住んでいた街が地図にない。家族と連絡がとれない。そのうえ、自分たちを連れてきたと名乗る人物から手紙が届いている。
真琴は、自分のバッグにある手紙の存在を考えた。ほんの今さっき気付いたのだ。鳴海、しきみ、沙良にも、それぞれ届けられていた手紙だ。
手紙の内容は、こうだ。
『立花 真琴 さま
これを読んでいるころには、ご自分の身に起こったとこは既にご承知のことと思います。
こちら側の都合でこの世界に連れてきてしまったこと、どんなにお詫びしても足りません。
ですが、どうしてもあなたたちにしてもらわなければならないことがあります。
いずれ、直接お会いしたく思います。
あなたもいずれ、“力”に目覚める時がくるでしょう。
どうか、使い方にはくれぐれも気を付けてください。無理をしないよう、自分を大切に、仲間を第一に、行動してください。
いつか会える日まで 友より』
この手紙の差出人が、自分たちをこの異世界に連れてきたことには間違いない。
なぜなのか。なぜ自分たちは連れてこられたのか。
その答えが、10年後ランボが言っていた“エテルナリング”にあるのではと、こうして登校中に調べていたわけだが、やっぱり答えは出そうにない。
「……」
隣を歩く鳴海が、心配そうに視線を送ってくる。心配しないで、という意を込めて小さく頷く。そして、傍らでしきみに絡まれている沙良を見つめた。
沙良に与えらえた能力は治癒能力だ。(※06.参照)しかも、使うごとに彼女の体力気力をかなり消耗する。さっきの手紙の主からは、使用回数に気をつけろと注意書きがされてあった。
自分が彼女を守らねば。真琴はそんな思いに駆られていた。
「あ、ツナくんだ! おーい、ツナくーん!!」
数メートル先を歩いていた綱吉に気付き、しきみはまっすぐ走っていく。鳴海や沙良もそれに続いたので、面倒くささを感じながらも、真琴も走って合流した。
朝のあいさつを交わし、他愛のない会話をしていると、
「よっツナ、真琴たちも」
またもや後ろから声がかかった。山本だ。
「おはよう、山本!」
嬉しそうに笑う綱吉。反対に、真琴は眉をひそめる。
自殺騒動(※06参照)で初めて会ったとき、山本が垣間見せた闇に、真琴は共感していた。自分と同じ側の人間だと思った。
しかし、綱吉に助けられ持ち直し、彼の明るさと人望を目の当たりにするたびに、やはりこの人は自分と違う世界の人間なのだと、心の中に壁が出来てしまう。
だからあまり関わらないようにしたいのに、山本はこうして自分の名前を親し気に呼ぶ。真琴は戸惑いと、苦手意識を持っていた。
首をぶんぶんと横に振り、真琴は一心不乱に、沙良を見つめ続ける。
とにかく、これからは自分が彼女を守らなければ。
*
はじめて彼女をみたとき、獄寺は強い郷愁にかられた。頑丈な錠前をかけたはずの記憶の扉が開かれて、なつかしい顔が見えたのだ。
「……」
晴れ渡った朝の空の下、獄寺は一人空中廊下から、校門前を眺めていた。行きかう生徒たちの群れ。その中にひときわ目立つグループがあった。自分が敬愛する綱吉と、いきなり現れた女子4人と、山本武。
彼らが楽しそうにじゃれ合いながら(真琴は仏頂面だったが)歩いているのを見ると、獄寺はだんだん腹が立ってきた。
「リボーンさん、本当にあいつらをファミリーに入れるつもりですか?」
隣に立つ家庭教師に問いただしてみるものの、現実は非情であった。
「つもりじゃなくもう入ってるぞ。オレが決めた」
「なっ」
「なんだ、ずいぶん反対するんだな」
「…あんな、甘っちょろい一般人が……」
裏社会でやっていけるものか。そう言いかけて獄寺は黙り込む。口元をほころばせる#一ノ瀬# 沙良の顔が、ちらりと見えたのだ。
その笑顔を見るだけで、獄寺は胸を締め付けられた。
似ている、と改めて思う。
「…あいつらは、大事なボンゴレファミリーの幹部候補だ。もちろん、沙良も」
「……!」獄寺の目が見開かれる。
「沙良は確かに似ているな、あの人に」
リボーンの発言が後押しとなり、獄寺はやるせなさそうにその場を立ち去って行った。
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