53.-Old tale- 海の女王③
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「前代未聞だ、こんなことは」
臣下の一人が声を荒げる。冷静を失いかけている部下に、コーデリアはぴしゃりと言い聞かせた。
「落ち着きなさい、他の者に聞こえます」
「陛下、このままでは最悪、争いがおきますぞ」
信頼を寄せる臣下・ジェフリーの声が、心底震えていた。それがどれほど重いことか。コーデリアは皆に見えないように拳をつくっていた。
自国の山岳から見つけ出した資源。その価値は、この国の者たちが考えているよりずっと、何倍も何十倍も、莫大なものだったらしい。
資源をめぐってのF国との協議は、難航を極めていた。F国は妥協という言葉には程遠い要求をし、そのうえ途中から、狡猾な外交を得意とするI国が口出しをしてきたのもまた厄介だった。
そのうえ、F国の使いの口から、自国の軍事力をちらつかせるような文言が出てきたのだ。
こちらも他国から武器の流入はあるものの、F国との差は歴然としている。
「より武力を持つべきです」
臣下の一人が声を荒立てた。その場にいる全員の眉間にシワが寄った。提案した臣下は更に語気を強める。
「D国とA国の軍事力を、我が国にも流通させるのです、聞けばその二国は、最新式の……」
「それはF国とI国を敵に回すことになる」
また別の臣下が、苦言を呈した。
「今以上に我が国の立場が追い込まれる」
「ですが、何かしらの対抗策は持つべきだ」
別の臣下が身を乗り出した。
「この際国じゃなくても良い、我が国に友好的な組織を……」
コーデリアが、その発言をした臣下を見据える。鋭い瞳は、臣下の口から飛び出た単語に丸く見開かれた。
「キャバッローネ」
「っ!!」
勢いよくコーデリアは立ち上がった。
「彼らはあくまで、交易相手でしかありません」
「陛下、キャバッローネはイタリアのアドリア海にて勢力を強めているマフィアです、あのボンゴレファミリーとも強い繋がりがある。味方になれば……」
コーデリアは声を震わせながら言葉を紡いだ。
「彼らは国という組織ではない以上、体裁を保つ必要はないのです。こちらにどんな不利益なことを覆い被せてくるか、計り知れない」
コーデリアは胸をえぐられるような気持ちになった。立場上そうするしかないのだが、慕う人間を悪し様に分析し、素直に助けを求めることも出来ないとは。
そのときだ。
「陛下」
部屋にはいってきたのは顔を隠した密偵役、その後ろにはグラディウスの姿もあった。
コーデリアに視線で話すように促され、そのまま続けた。
「グラディウスが目を付けていた者ですが、明け方に二名とも、自害いたしました」
「……外傷は見当たらなかった。おそらく所持していた毒を使ったんだ」
グラディウスが付け加える。
臣下達の間に、重い嘆息が漏れる。コーデリアは力なく尋ねた。
「なにか、吐きましたか」
「有益になりそうなものは何も。手は尽くしたのですが。……申し訳ありません」
「よい。そなたのせいではない」
コーデリアは手を振った。
「その者達を、共同の墓地に」
諜報員の男は一礼し、コーデリアの命令を承諾した。その途端、コーデリアはどこか呆けたようになった。
もうなにも考えたくない。もうなにも見たくない。ただ素直に、この場からいなくなりたいと思った。
「……下がりなさい」
「陛下、」
「下がらないのなら、私が出ていきます」
コーデリアは皆に背を向け、足早に部屋を去っていった。それを、グラディウスだけが追いかける。
ここ最近、国の周辺に怪しい影が増えた。スパイ、テロ、暗殺──グラディウスは城の配下達と結託し、どれもを未然に防いでいたものの、国を包む雰囲気はしだいに重くなっていった。太陽が地平線へと沈む度に民の怯えは色濃くなり、日の出は今日もまた、何かが起こるかもしれないという疑心を人々に抱かせた。
コーデリアは苦悩していた。国民の憂いを払うのが務めだとこれまで必死だったが、それは決して苦ではなかった。民の幸せが、己の喜びだった。どんな難題にも挑む覚悟の上で、王位を継いだ。
しかし、払っても払いきれない曇り空が、コーデリアの心を覆っていた。
見えぬ侵略者達がいる。その事実に心を病んでいた。
女王と少年は、共に岬を歩いていた。寄せては返す波は力強くても、こちらの足元には届いていない。コーデリアは黙って、地平線を見つめていた。
いつか、あの美しいまっすぐな線の上を、多くの敵の影が埋め尽くすかもしれない。悪い想像が、頭から離れなかった。
「……埋葬してやるなんて、あんたは甘すぎだあ。この岬に磔にして、見せしめにしてやればいい」
「グラディウス」コーデリアは苦々しく笑った。
「せめて、死者には敬意を持って接してやらねば……」
コーデリアの言葉を最後まで待たず、グラディウスは身を乗り出し、無遠慮に女王の手を握った。コーデリアは目を丸くしてグラディウスのほうを見る。手が小さく小刻みに震えていたことに、コーデリアは自分でも気付いていなかった。
「……無理するな」
そう言われ、コーデリアはぎゅっと口を固く引き結び、自分を守ってくれた少年に礼を述べる。
「今回もご苦労でしたね、グラディウス」
「あんたを殺すのは、オレだからな」
グラディウスは急に恥ずかしくなったのか、ぱっと手を離し、視線をそらした。
「その前にくたばってもらっちゃ困る」
「ふふ、そうでしたね」
コーデリアは再び地平線へ視線を戻し、目を細めた。
「願わくば、死ぬときはこの地で眠りたいものです」
そっと漏らしたコーデリアの呟きが、グラディウスの脳裏に、長い間残っていた。
***
イタリア、某古城。
品の良い調度品と高い本棚に囲まれた執務室で、城の主──若い青年が、窓辺から空を眺めながら、とある人物を待っていた。室内にかすかに風が入り込み、香油のように輝く金糸の髪が揺れる。
しばらくして慌ただしい足音と共に、執務室の重たい扉が開け放たれた。
「ジョット!」
やってきた同い年くらいの若者に、ジョットと呼ばれた青年は笑みを浮かべながら振り返り、両手を広げ、親しい友の来訪を心から歓迎した。
「ヴァレリオ、すまない、急に呼びつけて」
「気にするな、ちょうど近くに滞在していたし……オレとお前の仲じゃないか」
ジョットにハグをしながら、来客──マフィア・キャバッローネファミリーのボス・ヴァレリオは、親しげにジョットの肩を叩いた。ジョットは友人に椅子を勧め、息を整えつつヴァレリオは腰を下ろす。
「どうしたんだ、話って」
「ああ、君のファミリーの交易相手である、ある国のことだが……」
ジョットは机の上に置いてあった地球儀を手に取り、ヨーロッパの海のある一点を指で指し示す。
「この辺りの、小さな島の、」
「……コーデリア女王陛下のところか」
言いながら、ヴァレリオの胸にやるせなさが沸き起こった。最近は多忙で、なかなか彼女に会いに行けていない。それとは別の理由でも、足が遠のいてしまっていた。
コーデリアへの恋慕を、ヴァレリオは失っていなかった。むしろあの月夜の告白から、日毎に想いは強くなっている。そしてこれは、確固たる証拠のない憶測だが、おそらく彼女の方も、こちらを好ましく感じてくれているだろう。
だが、彼女と自分の立場を慮れば、想いを告げてしまった今となれば、やすやすと近づくのは憚 られた。
ジョットは、柔らかい髪と同じ色をした瞳を、優しげに細めた。
「その……女王陛下のことなんだが……何か聞いていないか」
「……どういう意味だ?」
「彼女について何か悪い知らせや、悩みなどは」
ジョットは話すことをためらっていた。ヴァレリオから視線を外し、虚空にすべらせる。ヴァレリオもいい知れぬ不安を感じ、ふと、脳内にとあることが思い出された。
「君の、"超直感”が告げているのか?」
ジョットは顔を上げ、頭を縦にふる。この青年には、先祖から脈々と受け継いだ力があると、ヴァレリオは聞いていた。
超直感。別名、見透かす力──それが暴くのは、過去、現在、未来、時間だけではなく、人の心や考えなど、多岐にわたる。
「コーデリア女王陛下について……何か見えたのか」
「おそらくは。実は、君から彼女の話を聞いて以来、時折、不思議な光景が見えるようになった。強烈な光……といえばいいのか、」
「不思議な……光景?」
「眩しい光、強い力。4……という数字、人数。どうもそのヴィジョンに、彼女が関わっているような気がしてならない」
ジョットは手を額にやり、眉根を寄せた。
「もっと鮮明なイメージが浮かべがいいのだが、不思議と、広大な海が浮かぶんだ。白波と、色鮮やかな生き物たちの光景が……阻まれているのかな、まるで、海に守られているかのように。距離という意味ではなくて、彼女は親しみがあるが、遠くに感じるのだ」
ヴァレリオは強く頷きながら、詰め込まれた自身のスケジュールの中で、なんとか彼女の元へ行ける日は無いかと段取りを考え始めていた。
挨拶もそこそこに、彼が立ち去った後、ふたたび部屋に取り残されたジョットは、自分のプレジデントデスクの引き出しを引っ張った。
中に備え付けられていた仕掛けを解き、底板を外すと、隠された場所から、重厚な装飾のされた箱が出てきた。中身は、見なくても重々承知していた。4つの指輪。
「……セピラ、まさか、彼女がその一人だというのか」
ジョットのつぶやきに、返事はなかった。
臣下の一人が声を荒げる。冷静を失いかけている部下に、コーデリアはぴしゃりと言い聞かせた。
「落ち着きなさい、他の者に聞こえます」
「陛下、このままでは最悪、争いがおきますぞ」
信頼を寄せる臣下・ジェフリーの声が、心底震えていた。それがどれほど重いことか。コーデリアは皆に見えないように拳をつくっていた。
自国の山岳から見つけ出した資源。その価値は、この国の者たちが考えているよりずっと、何倍も何十倍も、莫大なものだったらしい。
資源をめぐってのF国との協議は、難航を極めていた。F国は妥協という言葉には程遠い要求をし、そのうえ途中から、狡猾な外交を得意とするI国が口出しをしてきたのもまた厄介だった。
そのうえ、F国の使いの口から、自国の軍事力をちらつかせるような文言が出てきたのだ。
こちらも他国から武器の流入はあるものの、F国との差は歴然としている。
「より武力を持つべきです」
臣下の一人が声を荒立てた。その場にいる全員の眉間にシワが寄った。提案した臣下は更に語気を強める。
「D国とA国の軍事力を、我が国にも流通させるのです、聞けばその二国は、最新式の……」
「それはF国とI国を敵に回すことになる」
また別の臣下が、苦言を呈した。
「今以上に我が国の立場が追い込まれる」
「ですが、何かしらの対抗策は持つべきだ」
別の臣下が身を乗り出した。
「この際国じゃなくても良い、我が国に友好的な組織を……」
コーデリアが、その発言をした臣下を見据える。鋭い瞳は、臣下の口から飛び出た単語に丸く見開かれた。
「キャバッローネ」
「っ!!」
勢いよくコーデリアは立ち上がった。
「彼らはあくまで、交易相手でしかありません」
「陛下、キャバッローネはイタリアのアドリア海にて勢力を強めているマフィアです、あのボンゴレファミリーとも強い繋がりがある。味方になれば……」
コーデリアは声を震わせながら言葉を紡いだ。
「彼らは国という組織ではない以上、体裁を保つ必要はないのです。こちらにどんな不利益なことを覆い被せてくるか、計り知れない」
コーデリアは胸をえぐられるような気持ちになった。立場上そうするしかないのだが、慕う人間を悪し様に分析し、素直に助けを求めることも出来ないとは。
そのときだ。
「陛下」
部屋にはいってきたのは顔を隠した密偵役、その後ろにはグラディウスの姿もあった。
コーデリアに視線で話すように促され、そのまま続けた。
「グラディウスが目を付けていた者ですが、明け方に二名とも、自害いたしました」
「……外傷は見当たらなかった。おそらく所持していた毒を使ったんだ」
グラディウスが付け加える。
臣下達の間に、重い嘆息が漏れる。コーデリアは力なく尋ねた。
「なにか、吐きましたか」
「有益になりそうなものは何も。手は尽くしたのですが。……申し訳ありません」
「よい。そなたのせいではない」
コーデリアは手を振った。
「その者達を、共同の墓地に」
諜報員の男は一礼し、コーデリアの命令を承諾した。その途端、コーデリアはどこか呆けたようになった。
もうなにも考えたくない。もうなにも見たくない。ただ素直に、この場からいなくなりたいと思った。
「……下がりなさい」
「陛下、」
「下がらないのなら、私が出ていきます」
コーデリアは皆に背を向け、足早に部屋を去っていった。それを、グラディウスだけが追いかける。
ここ最近、国の周辺に怪しい影が増えた。スパイ、テロ、暗殺──グラディウスは城の配下達と結託し、どれもを未然に防いでいたものの、国を包む雰囲気はしだいに重くなっていった。太陽が地平線へと沈む度に民の怯えは色濃くなり、日の出は今日もまた、何かが起こるかもしれないという疑心を人々に抱かせた。
コーデリアは苦悩していた。国民の憂いを払うのが務めだとこれまで必死だったが、それは決して苦ではなかった。民の幸せが、己の喜びだった。どんな難題にも挑む覚悟の上で、王位を継いだ。
しかし、払っても払いきれない曇り空が、コーデリアの心を覆っていた。
見えぬ侵略者達がいる。その事実に心を病んでいた。
女王と少年は、共に岬を歩いていた。寄せては返す波は力強くても、こちらの足元には届いていない。コーデリアは黙って、地平線を見つめていた。
いつか、あの美しいまっすぐな線の上を、多くの敵の影が埋め尽くすかもしれない。悪い想像が、頭から離れなかった。
「……埋葬してやるなんて、あんたは甘すぎだあ。この岬に磔にして、見せしめにしてやればいい」
「グラディウス」コーデリアは苦々しく笑った。
「せめて、死者には敬意を持って接してやらねば……」
コーデリアの言葉を最後まで待たず、グラディウスは身を乗り出し、無遠慮に女王の手を握った。コーデリアは目を丸くしてグラディウスのほうを見る。手が小さく小刻みに震えていたことに、コーデリアは自分でも気付いていなかった。
「……無理するな」
そう言われ、コーデリアはぎゅっと口を固く引き結び、自分を守ってくれた少年に礼を述べる。
「今回もご苦労でしたね、グラディウス」
「あんたを殺すのは、オレだからな」
グラディウスは急に恥ずかしくなったのか、ぱっと手を離し、視線をそらした。
「その前にくたばってもらっちゃ困る」
「ふふ、そうでしたね」
コーデリアは再び地平線へ視線を戻し、目を細めた。
「願わくば、死ぬときはこの地で眠りたいものです」
そっと漏らしたコーデリアの呟きが、グラディウスの脳裏に、長い間残っていた。
***
イタリア、某古城。
品の良い調度品と高い本棚に囲まれた執務室で、城の主──若い青年が、窓辺から空を眺めながら、とある人物を待っていた。室内にかすかに風が入り込み、香油のように輝く金糸の髪が揺れる。
しばらくして慌ただしい足音と共に、執務室の重たい扉が開け放たれた。
「ジョット!」
やってきた同い年くらいの若者に、ジョットと呼ばれた青年は笑みを浮かべながら振り返り、両手を広げ、親しい友の来訪を心から歓迎した。
「ヴァレリオ、すまない、急に呼びつけて」
「気にするな、ちょうど近くに滞在していたし……オレとお前の仲じゃないか」
ジョットにハグをしながら、来客──マフィア・キャバッローネファミリーのボス・ヴァレリオは、親しげにジョットの肩を叩いた。ジョットは友人に椅子を勧め、息を整えつつヴァレリオは腰を下ろす。
「どうしたんだ、話って」
「ああ、君のファミリーの交易相手である、ある国のことだが……」
ジョットは机の上に置いてあった地球儀を手に取り、ヨーロッパの海のある一点を指で指し示す。
「この辺りの、小さな島の、」
「……コーデリア女王陛下のところか」
言いながら、ヴァレリオの胸にやるせなさが沸き起こった。最近は多忙で、なかなか彼女に会いに行けていない。それとは別の理由でも、足が遠のいてしまっていた。
コーデリアへの恋慕を、ヴァレリオは失っていなかった。むしろあの月夜の告白から、日毎に想いは強くなっている。そしてこれは、確固たる証拠のない憶測だが、おそらく彼女の方も、こちらを好ましく感じてくれているだろう。
だが、彼女と自分の立場を慮れば、想いを告げてしまった今となれば、やすやすと近づくのは
ジョットは、柔らかい髪と同じ色をした瞳を、優しげに細めた。
「その……女王陛下のことなんだが……何か聞いていないか」
「……どういう意味だ?」
「彼女について何か悪い知らせや、悩みなどは」
ジョットは話すことをためらっていた。ヴァレリオから視線を外し、虚空にすべらせる。ヴァレリオもいい知れぬ不安を感じ、ふと、脳内にとあることが思い出された。
「君の、"超直感”が告げているのか?」
ジョットは顔を上げ、頭を縦にふる。この青年には、先祖から脈々と受け継いだ力があると、ヴァレリオは聞いていた。
超直感。別名、見透かす力──それが暴くのは、過去、現在、未来、時間だけではなく、人の心や考えなど、多岐にわたる。
「コーデリア女王陛下について……何か見えたのか」
「おそらくは。実は、君から彼女の話を聞いて以来、時折、不思議な光景が見えるようになった。強烈な光……といえばいいのか、」
「不思議な……光景?」
「眩しい光、強い力。4……という数字、人数。どうもそのヴィジョンに、彼女が関わっているような気がしてならない」
ジョットは手を額にやり、眉根を寄せた。
「もっと鮮明なイメージが浮かべがいいのだが、不思議と、広大な海が浮かぶんだ。白波と、色鮮やかな生き物たちの光景が……阻まれているのかな、まるで、海に守られているかのように。距離という意味ではなくて、彼女は親しみがあるが、遠くに感じるのだ」
ヴァレリオは強く頷きながら、詰め込まれた自身のスケジュールの中で、なんとか彼女の元へ行ける日は無いかと段取りを考え始めていた。
挨拶もそこそこに、彼が立ち去った後、ふたたび部屋に取り残されたジョットは、自分のプレジデントデスクの引き出しを引っ張った。
中に備え付けられていた仕掛けを解き、底板を外すと、隠された場所から、重厚な装飾のされた箱が出てきた。中身は、見なくても重々承知していた。4つの指輪。
「……セピラ、まさか、彼女がその一人だというのか」
ジョットのつぶやきに、返事はなかった。
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