48.晴戦と光の試練
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“Inferno ”(地獄)の部屋にいるのは、自ら人の道を踏み外した者。
“Paradiso ”(天国)の部屋にいるのは、善良で敬虔な者。
“Arbitro ”(審判)の部屋にいるのは、望まざる状況に追い込まれ罪を犯した者。
上記の内容で多くの人間が3つずつのグループに分けられ、並中の3学年かけるA〜C組の合計9つの教室に閉じ込められていた。
そしてこれから、光の試練を受ける少女と見守る者を除き、校内にいる人間には全員、毒が盛られている。
『3階、"Paradiso”の部屋、解錠』
アナウンスがされ、沙良は我に返り走り出した。試練は既に始まったのだ。
凶悪な犯罪者、故意ではなくとも過ちをおかした者、何の罪もない一般人。1階の閉じ込められている人間の多くの視線を横目に、沙良は廊下を走りきり、階段を駆け上がった。いずれ彼らも解き放たれるのだろう。
体力の温存は常に心がけねば。時間の経過と共に、どの部屋の人間が自由になるかわからない。
先ほど開けられた部屋は罪を犯していない一般人だったが、もし次開けられるのが"Inferno”の部屋──犯罪者達が自由になれば、沙良を捕まえにやってくるだろう。沙良を欠損問わず捕獲すれば恩赦が与えられると約束されているのだから。毒に侵されているとはいえ、筋力も体力も沙良の何倍も上だ。加えて悪意も。
一般人を助けるのに、のんびりしてはいられない。
そこで、沙良の脳裏をあることがかすめた。足が止まりそうになる。
(今……私……)
了平も、ヴァリアーの格闘家・ルッスーリアに苦戦していた。疑似太陽のまぶしさで、いつまでたっても目が開けられないのだ。
苦戦しながら了平は懸命に相手の気配を感じとり、がむしゃらに拳を振り回す。幸運にも、アッパーに手応えを感じた。
観覧席のモニター前の綱吉らに、ほっとした空気が流れる。了平からは見えてないだろうが、攻撃をくらったルッスーリアはそれなりに宙を飛んだのだ。
「あたった!すごいパンチだ!」
綱吉が叫ぶ。
「行けるか!?」
鳴海が息をのむ。
しかし、綱吉側とは正反対に、ヴァリアー側は冷めたものだった。
「ルッスーリア、完全に遊んでるね」
頭に細いティアラをのせた少年が笑う。
「あたったんじゃなくて、当たりに行ったんだよ」
赤ん坊、マーモンが呟いた。
「今の感触……次は逃さん!」
目は使えないとはいえ、敵に触れることが出来たのは大きな進歩だ。リングに着地する音が聞こえていないということは、ルッスーリアはまだ宙にいる。自分が打ち上げたあたりに狙いを定め、押し出された了平の左拳が、ルッスーリアの左膝に打ち込まれたときだった。
「ぐああああっ!」
了平の拳から肘にかけて、おびただしい量の血が吹き出した。悲痛な声をあげ、了平は立っていられなくなり背後のリングロープに寄りかかるも、無情にもそこに流れる電流が背中を焼ききる。
苦しみながら這いつくばる了平に、ルッスーリアは自慢げに自身の左足を上げてみせた。そこには鉄のような銀色の膝あてが装着されている。了平の手の多大なダメージの原因だ。
「鋼鉄が埋め込まれたメタル・ニーよ。もうあなたの拳は使い物にならないわ」
3階についた沙良。"Paradiso”の教室の戸口は開き、人の姿がちらと見えた。歩みを進めると、教室の中は毒で苦しむ人々で溢れ返っていた。
「大丈夫ですか!!」
教室内に入ってくる沙良に、人々はさまざまな言語で助けを求めていた。
「お願い、頭が割れそうなの」「痛い、苦しいよ」「お願いします、助けてください」「どうか、はやく」
見知らぬ多くの外国語を浴びながら、それでも彼らが自分に助けを求めていることは肌で感じていた。沙良は意識を失った者や、呼びかけに反応しない者を優先に治癒の炎をあてていく。
おおかた終わりかけたときだった。
『2階"Inferno”の部屋、解錠』
無機質なアナウンスに、沙良の心はうちひしがれそうになる。とうとう凶悪犯罪者が解き放たれてしまった。自分を狙いに来る。
犯罪者達は沙良以外の人間に危害を加えない契約をしたとチェルベッロは言っていたが、その約束を破る人間が出てきてもおかしくない。毒で苦しみ、死を待つならば自棄になって、別の人間を襲い始める可能性は十分ある。
その部屋の全員を癒したわけではなかったが、とにかく沙良は一旦その場を出ることにした。残された者のすがるような瞳が、胸を締め付けてくる。
「必ず戻りますから、どうか待ってて……!」
そのときだった。多くの怒声、怒号、けたたましい喧騒が大きな足音と共に迫ってくるのが耳に届く。沙良は廊下に出た。2階の部屋にいた"Inferno”の者達が、この階まで上がってきたのだ。
反対側から逃げようにも、既に数人、回り込まれてしまっている。そして、
『2階、"Paradiso”の部屋、解錠』
一般人が閉じ込められている部屋だ。ロボットのような、感情のない声が校内に反響する。
了平と沙良、両者は危機的状況に追い込まれていた。
挟み込まれた沙良、了平はルッスーリアに左拳を砕かれ、加えて特設リングのライトの熱により、脱水症状が始まっていた。
それを、仲間達は見ていることしか出来ない。
「こ、このままじゃ…!」
焦る綱吉。真琴は先ほどから黙りこくったままだが、両眼からあふれる涙はとどまることを知らない。
すると、
『びびってんじゃねえぞ、コラ!』
スピーカーを轟かす声。了平のいる正面玄関前に現れたのは、ファルコにぶらさがったコロネロだった。(特設リングのライト対策か、サングラスをつけている)
突如現れたもう一人のアルコバレーノに、ヴァリアー側からかすかに驚きの声が漏れる。
「あのちびは、」
「なぜやつがここに」
「了平、沙良、聞こえるか、コラ!!」
コロネロは更に声を張り上げる。
「そろそろ頃合いだぜ!お前達の真の力を見せてやれ!!」
沙良は意を決し、両側から近づいてくる男達をさっと見渡すと、念を込めて治癒の炎を、矢の形に変化させる。
「"Peonia di fuoco (火牡丹)”」
一本の矢が凶悪犯達の元に届いたとき、まるで花火のようにぱっとはじけ、星や、無数の光の粒となって飛び散った。四方に散り散りに飛んだ光に当たったとたん、男達が次々と倒れ、膝をつく。沙良は退路を作り出し、2階へ下っていった。
「き、綺麗、花火みたい……!」
悠長なことを言っている場合ではないとは分かっていても、その美しい閃光にしきみは感嘆の意をもらした。真琴も頬を涙で濡らしながらも、弧を描きながら敵対する人間をからめとっていく光に見入った。
しきみが発した花火、という単語に、獄寺の脳裏につい2ヶ月ほど前の花火大会の記憶が呼び起こされる。
煌々と輝く夜空の下で、自分の隣で沙良が微笑んでいた思い出を。
その光は福音のように、また了平のほうも、血を流す左手をおさえつつ、起き上がった。
ねばる了平に、ルッスーリアがため息をつく。
「あなた、このライトの中じゃそろそろ限界でしょ? 諦めて私の死体コレクションになりなさいな」
「いいや、まだだ!」
師匠の激励、仲間が見守り、同じ弟子同士の沙良が頑張っているこの状況が、彼を奮い立たせていた。
「しぶといわね、貴方のパンチは通用しなかったのに」
「ああ、たしかに……左は、な」
頷きながら、了平は今度は右の拳をかかげる。
「そういえば了平は、この試合左しか打ってねえな」
リボーンの言葉に、皆がじっと注視する。
「この右拳は、圧倒的不利を跳ね返すためにある!!」
右足と右手を後ろに引き、構えをとる。
“
“
上記の内容で多くの人間が3つずつのグループに分けられ、並中の3学年かけるA〜C組の合計9つの教室に閉じ込められていた。
そしてこれから、光の試練を受ける少女と見守る者を除き、校内にいる人間には全員、毒が盛られている。
『3階、"Paradiso”の部屋、解錠』
アナウンスがされ、沙良は我に返り走り出した。試練は既に始まったのだ。
凶悪な犯罪者、故意ではなくとも過ちをおかした者、何の罪もない一般人。1階の閉じ込められている人間の多くの視線を横目に、沙良は廊下を走りきり、階段を駆け上がった。いずれ彼らも解き放たれるのだろう。
体力の温存は常に心がけねば。時間の経過と共に、どの部屋の人間が自由になるかわからない。
先ほど開けられた部屋は罪を犯していない一般人だったが、もし次開けられるのが"Inferno”の部屋──犯罪者達が自由になれば、沙良を捕まえにやってくるだろう。沙良を欠損問わず捕獲すれば恩赦が与えられると約束されているのだから。毒に侵されているとはいえ、筋力も体力も沙良の何倍も上だ。加えて悪意も。
一般人を助けるのに、のんびりしてはいられない。
そこで、沙良の脳裏をあることがかすめた。足が止まりそうになる。
(今……私……)
了平も、ヴァリアーの格闘家・ルッスーリアに苦戦していた。疑似太陽のまぶしさで、いつまでたっても目が開けられないのだ。
苦戦しながら了平は懸命に相手の気配を感じとり、がむしゃらに拳を振り回す。幸運にも、アッパーに手応えを感じた。
観覧席のモニター前の綱吉らに、ほっとした空気が流れる。了平からは見えてないだろうが、攻撃をくらったルッスーリアはそれなりに宙を飛んだのだ。
「あたった!すごいパンチだ!」
綱吉が叫ぶ。
「行けるか!?」
鳴海が息をのむ。
しかし、綱吉側とは正反対に、ヴァリアー側は冷めたものだった。
「ルッスーリア、完全に遊んでるね」
頭に細いティアラをのせた少年が笑う。
「あたったんじゃなくて、当たりに行ったんだよ」
赤ん坊、マーモンが呟いた。
「今の感触……次は逃さん!」
目は使えないとはいえ、敵に触れることが出来たのは大きな進歩だ。リングに着地する音が聞こえていないということは、ルッスーリアはまだ宙にいる。自分が打ち上げたあたりに狙いを定め、押し出された了平の左拳が、ルッスーリアの左膝に打ち込まれたときだった。
「ぐああああっ!」
了平の拳から肘にかけて、おびただしい量の血が吹き出した。悲痛な声をあげ、了平は立っていられなくなり背後のリングロープに寄りかかるも、無情にもそこに流れる電流が背中を焼ききる。
苦しみながら這いつくばる了平に、ルッスーリアは自慢げに自身の左足を上げてみせた。そこには鉄のような銀色の膝あてが装着されている。了平の手の多大なダメージの原因だ。
「鋼鉄が埋め込まれたメタル・ニーよ。もうあなたの拳は使い物にならないわ」
3階についた沙良。"Paradiso”の教室の戸口は開き、人の姿がちらと見えた。歩みを進めると、教室の中は毒で苦しむ人々で溢れ返っていた。
「大丈夫ですか!!」
教室内に入ってくる沙良に、人々はさまざまな言語で助けを求めていた。
「お願い、頭が割れそうなの」「痛い、苦しいよ」「お願いします、助けてください」「どうか、はやく」
見知らぬ多くの外国語を浴びながら、それでも彼らが自分に助けを求めていることは肌で感じていた。沙良は意識を失った者や、呼びかけに反応しない者を優先に治癒の炎をあてていく。
おおかた終わりかけたときだった。
『2階"Inferno”の部屋、解錠』
無機質なアナウンスに、沙良の心はうちひしがれそうになる。とうとう凶悪犯罪者が解き放たれてしまった。自分を狙いに来る。
犯罪者達は沙良以外の人間に危害を加えない契約をしたとチェルベッロは言っていたが、その約束を破る人間が出てきてもおかしくない。毒で苦しみ、死を待つならば自棄になって、別の人間を襲い始める可能性は十分ある。
その部屋の全員を癒したわけではなかったが、とにかく沙良は一旦その場を出ることにした。残された者のすがるような瞳が、胸を締め付けてくる。
「必ず戻りますから、どうか待ってて……!」
そのときだった。多くの怒声、怒号、けたたましい喧騒が大きな足音と共に迫ってくるのが耳に届く。沙良は廊下に出た。2階の部屋にいた"Inferno”の者達が、この階まで上がってきたのだ。
反対側から逃げようにも、既に数人、回り込まれてしまっている。そして、
『2階、"Paradiso”の部屋、解錠』
一般人が閉じ込められている部屋だ。ロボットのような、感情のない声が校内に反響する。
了平と沙良、両者は危機的状況に追い込まれていた。
挟み込まれた沙良、了平はルッスーリアに左拳を砕かれ、加えて特設リングのライトの熱により、脱水症状が始まっていた。
それを、仲間達は見ていることしか出来ない。
「こ、このままじゃ…!」
焦る綱吉。真琴は先ほどから黙りこくったままだが、両眼からあふれる涙はとどまることを知らない。
すると、
『びびってんじゃねえぞ、コラ!』
スピーカーを轟かす声。了平のいる正面玄関前に現れたのは、ファルコにぶらさがったコロネロだった。(特設リングのライト対策か、サングラスをつけている)
突如現れたもう一人のアルコバレーノに、ヴァリアー側からかすかに驚きの声が漏れる。
「あのちびは、」
「なぜやつがここに」
「了平、沙良、聞こえるか、コラ!!」
コロネロは更に声を張り上げる。
「そろそろ頃合いだぜ!お前達の真の力を見せてやれ!!」
沙良は意を決し、両側から近づいてくる男達をさっと見渡すと、念を込めて治癒の炎を、矢の形に変化させる。
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一本の矢が凶悪犯達の元に届いたとき、まるで花火のようにぱっとはじけ、星や、無数の光の粒となって飛び散った。四方に散り散りに飛んだ光に当たったとたん、男達が次々と倒れ、膝をつく。沙良は退路を作り出し、2階へ下っていった。
「き、綺麗、花火みたい……!」
悠長なことを言っている場合ではないとは分かっていても、その美しい閃光にしきみは感嘆の意をもらした。真琴も頬を涙で濡らしながらも、弧を描きながら敵対する人間をからめとっていく光に見入った。
しきみが発した花火、という単語に、獄寺の脳裏につい2ヶ月ほど前の花火大会の記憶が呼び起こされる。
煌々と輝く夜空の下で、自分の隣で沙良が微笑んでいた思い出を。
その光は福音のように、また了平のほうも、血を流す左手をおさえつつ、起き上がった。
ねばる了平に、ルッスーリアがため息をつく。
「あなた、このライトの中じゃそろそろ限界でしょ? 諦めて私の死体コレクションになりなさいな」
「いいや、まだだ!」
師匠の激励、仲間が見守り、同じ弟子同士の沙良が頑張っているこの状況が、彼を奮い立たせていた。
「しぶといわね、貴方のパンチは通用しなかったのに」
「ああ、たしかに……左は、な」
頷きながら、了平は今度は右の拳をかかげる。
「そういえば了平は、この試合左しか打ってねえな」
リボーンの言葉に、皆がじっと注視する。
「この右拳は、圧倒的不利を跳ね返すためにある!!」
右足と右手を後ろに引き、構えをとる。
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