05.退学危機と3人目の来訪
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昔から、自分がいていい場所がわからないときがある。
小学生の時だった。体育の時間、ペアを作りましょう、という先生の言葉に立ち尽くし、校庭にたたずむ自分の影に見入っていた記憶がある。
沙良は引っ込み思案な子供で、同年代と打ち解けるのに時間がかかった。自分より年下か年上には気に入られることが多いのに、同い年ともなると途端に緊張が増し、だめになるのだ。
何の気遣いもいらない関係が、逆に彼女を苦しめた。
家族にも、心を許せてない。幼い頃から。常に家族の顔色をうかがい、機嫌を取ろうと振舞う子供だった。わがままを通したこともほとんどなかった。
自分がどこにいていいか、わからない。自分がここにいていいのか、わからない。
そんな彼女にも、唯一救いがあった。
友達だ。真琴に出会い、仲良くなった。家庭がうまくいっていない者同士、気が合ったのだ。
さらに成長し、人との出会いも増え、そこに鳴海としきみが加わった。
このメンバーでいると、心が落ち着いた。自分がここにいていいのか、考えることがほとんどなくなった。
鳴海の面倒見の良さ、しきみの明るさ、真琴が常に近くにいてくれることの安心感。どれもがかけがえのない大切なものだった。
それが、あっという間に消えた。
***
真琴と別れた後、沙良は夜の街をふらふらと彷徨 った。自分がどこにいればいいのかわからなかった。どこにもいたくなかった。しかし家族、保護者の世話になっている以上、帰らないわけにはいかない。
家族は沙良のいつもより遅い帰宅に憤り、軽い口論になった。それらを振り切り、沙良は自室にこもった。案の定、眠れなかった。
鳴海に続いて、しきみも消えた。しかも目の前で、瞬きをしている間に。
常軌を逸したことが、自分の身に起こっている。それなのに、自分に出来ることがない。
朝を迎え、のろのろとしたくをする。登校し、学校に入るまで、どうか今までのことがすべて夢であるように祈った。いつも通り鳴海もしきみも学校にいて、お昼を仲良く食べ、放課後一緒に過ごして……
しかしそんな願いは、いとも簡単に断ち切られたのである。
******
そんな沙良の気苦労も知らず、一方その頃、異世界にて。
「近衛 しきみと申します! よろしくお願いいたします!」
しきみの名前が、黒板に白く書き出される。この度めでたく(?)しきみも、並盛中学校の生徒として転入することになった。
鳴海としきみが感動の再会を果たした翌朝、しきみの携帯に連絡があった。並盛中学校の教師からだ。どうやらしきみも最初から並盛に入学する手はずが整えられていたらしい。
「蘇芳 鳴海さんと一緒に、この街に越してきました。手続きに手間取って、学校に来るの遅くなっちゃいましたが……どうぞよろしくお願いいたします!」
にこにこと屈託のない笑顔を浮かべるしきみに、鳴海は内心いいぞ、と声援を送る。
元からしきみは顔がいい。なかなか可愛らしい子だし、子供っぽいが、男女関係なく人懐っこい。この世界に来る前も、しきみはあちこちのグループと溶け込み、学生さながらコネを作り、世渡りの上手さを見せつけていた。
おかげで今も、クラス中がかなり歓迎ムードだ。
「えー、なんで鳴海さんと一緒に転校したんですか?」
クラスメイトの質問に、鳴海がごくり、とつばを飲み込む。教室中が若干、静まり返る。
「あたしも鳴海さんも、ちょっと事情があって、家族と住めなくて……支援してくれる人が並盛にいるから、引っ越してきたんです」
しきみは平然と嘘をつく。まあ半分ほどは真実なのだが。
この嘘の内容は今朝、鳴海としきみが二人で考えたことだった。
この世界で生きていくためには、与えられた家を使うしかない。だがいずれ、人に尋ねられることがあるだろう。そのとき、素直に異世界から来ましたなんて誰が信じるのか。友人だけで暮らしている、その状況を上手に説明できる必要があった。
鳴海もしきみも孤児か親と引き離され、施設に保護された。支援者が並盛にいて、そっちに居た方が都合がよかった。……たいていがこう考えるだろう。
クラスメイト達の同情の視線を感じた。隣の綱吉も、申し訳なさそうにこちらを見つめてくる。君が気にしなくていいよ、と鳴海は微笑んで見せた。
小学生の時だった。体育の時間、ペアを作りましょう、という先生の言葉に立ち尽くし、校庭にたたずむ自分の影に見入っていた記憶がある。
沙良は引っ込み思案な子供で、同年代と打ち解けるのに時間がかかった。自分より年下か年上には気に入られることが多いのに、同い年ともなると途端に緊張が増し、だめになるのだ。
何の気遣いもいらない関係が、逆に彼女を苦しめた。
家族にも、心を許せてない。幼い頃から。常に家族の顔色をうかがい、機嫌を取ろうと振舞う子供だった。わがままを通したこともほとんどなかった。
自分がどこにいていいか、わからない。自分がここにいていいのか、わからない。
そんな彼女にも、唯一救いがあった。
友達だ。真琴に出会い、仲良くなった。家庭がうまくいっていない者同士、気が合ったのだ。
さらに成長し、人との出会いも増え、そこに鳴海としきみが加わった。
このメンバーでいると、心が落ち着いた。自分がここにいていいのか、考えることがほとんどなくなった。
鳴海の面倒見の良さ、しきみの明るさ、真琴が常に近くにいてくれることの安心感。どれもがかけがえのない大切なものだった。
それが、あっという間に消えた。
***
真琴と別れた後、沙良は夜の街をふらふらと
家族は沙良のいつもより遅い帰宅に憤り、軽い口論になった。それらを振り切り、沙良は自室にこもった。案の定、眠れなかった。
鳴海に続いて、しきみも消えた。しかも目の前で、瞬きをしている間に。
常軌を逸したことが、自分の身に起こっている。それなのに、自分に出来ることがない。
朝を迎え、のろのろとしたくをする。登校し、学校に入るまで、どうか今までのことがすべて夢であるように祈った。いつも通り鳴海もしきみも学校にいて、お昼を仲良く食べ、放課後一緒に過ごして……
しかしそんな願いは、いとも簡単に断ち切られたのである。
******
そんな沙良の気苦労も知らず、一方その頃、異世界にて。
「近衛 しきみと申します! よろしくお願いいたします!」
しきみの名前が、黒板に白く書き出される。この度めでたく(?)しきみも、並盛中学校の生徒として転入することになった。
鳴海としきみが感動の再会を果たした翌朝、しきみの携帯に連絡があった。並盛中学校の教師からだ。どうやらしきみも最初から並盛に入学する手はずが整えられていたらしい。
「蘇芳 鳴海さんと一緒に、この街に越してきました。手続きに手間取って、学校に来るの遅くなっちゃいましたが……どうぞよろしくお願いいたします!」
にこにこと屈託のない笑顔を浮かべるしきみに、鳴海は内心いいぞ、と声援を送る。
元からしきみは顔がいい。なかなか可愛らしい子だし、子供っぽいが、男女関係なく人懐っこい。この世界に来る前も、しきみはあちこちのグループと溶け込み、学生さながらコネを作り、世渡りの上手さを見せつけていた。
おかげで今も、クラス中がかなり歓迎ムードだ。
「えー、なんで鳴海さんと一緒に転校したんですか?」
クラスメイトの質問に、鳴海がごくり、とつばを飲み込む。教室中が若干、静まり返る。
「あたしも鳴海さんも、ちょっと事情があって、家族と住めなくて……支援してくれる人が並盛にいるから、引っ越してきたんです」
しきみは平然と嘘をつく。まあ半分ほどは真実なのだが。
この嘘の内容は今朝、鳴海としきみが二人で考えたことだった。
この世界で生きていくためには、与えられた家を使うしかない。だがいずれ、人に尋ねられることがあるだろう。そのとき、素直に異世界から来ましたなんて誰が信じるのか。友人だけで暮らしている、その状況を上手に説明できる必要があった。
鳴海もしきみも孤児か親と引き離され、施設に保護された。支援者が並盛にいて、そっちに居た方が都合がよかった。……たいていがこう考えるだろう。
クラスメイト達の同情の視線を感じた。隣の綱吉も、申し訳なさそうにこちらを見つめてくる。君が気にしなくていいよ、と鳴海は微笑んで見せた。
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