43.レッスン開始
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日曜、鳴海はディーノ、雲雀を交えて軽く(当人比)戦い、しきみはシャマルとショッピングに行き、沙良はコロネロから準備があるからと了平と共に追い返され、真琴は竹寿司のみやげを持たされて帰ってきた。
つまり割と本格的な修行には入っておらず、4人は今日からが始まりなのだろうという心持ちで翌朝を迎えたのである。
鳴海はかけ布団をおいやり、昨日から準備していた運動着に着替えた。あまり熟睡できなかったからか、頭に様々なことがよぎる。
これからの修行期間、学校はしばらく欠席せねばならないだろう。スクアーロ。ヴァリアー。指輪。思い出して、鳴海は置いていた指輪を手に取り、眺める。
魚やサンゴのような模様が彫られ、深いブルーの宝石がはめ込まれている。
ボンゴレの長い歴史の中で、初代にしか持ち主がいなかったと言われている指輪。
軽やかなはずの金属の輪っかから、プレッシャーがずしりとのしかかる。
「……俺なんかが、もらっていいのかな」
つい、ぽつりともれる。
──父さんにも、選ばれなかったのに。
心の仄暗い部分から湧いた言葉を、鳴海は激しく首を振って、断ち切ろうとする。
「……あーもう、やめだやめ! 考えるな、考えるな」
自分に言い聞かせながら、鳴海は指輪をはめ、長柄槍に变化するステッキを鷲掴みにし、自室を出た。
階段を降りてキッチンへ行くと、そこには意外な人物が。
「あ……」
「真琴、」
「お、は、よう」
しどろもどろになりながら挨拶をしてくる。真琴が布巾を手に、電子レンジの中を磨いていたのである。
こころなしか、IHコンロもシンクも、いつも以上にぴかぴかに磨かれているような。
「沙良が、起きなくて。しばらく、家のこと、修業で、出来ないだろうから、その」
鳴海はなんとなく察した。時刻は朝の6時半。皆の弁当や差し入れを作るとはりきっていた彼女にしてはめずらしく起きていない。
この世界に来てから気付いたことだが、沙良は精神的な負担を負うと、どうやら寝込みがちになるようだ。ならこのまま寝かせてやって、その間に修行中おろそかになるであろう他の家事をやってしまおうと真琴は考えたのだろう。おそらく、真琴も緊張で眠りが浅かったに違いない。
「風呂と、トイレはやった?」
鳴海が問う。
「ま、まだ、これから……」
「じゃ、俺そっちやるよ」
集合まで、まだ時間はある。鳴海が腕まくりをした時、もう一人がリビングに飛び込んできた。
「グッドモーニング! おはよ! あのさあ、さっき見たら沙良寝てたから今のうちに……」
しきみが元気よくやってきて、真琴と鳴海、両方を見てぱあっと笑った。
「あたしもやるー!!」
*
「沙良、沙良」
揺れ動かされ、沙良はぬくまった毛布の中で身動ぎした。まるでゆっくり水中から水面へ浮上するかのようにはっきりしていく意識と共に、友人の声の輪郭もはっきりしていく。
眠い目をこすっていると、焦点が合う。
「鳴海……?」
沙良の寝室にて、鳴海がこちらを覗き込んでいる。
「沙良、俺そろそろ行くね」
「うん、うん……いってらっしゃ……」
「風呂とトイレ掃除しといたから。差し入れ楽しみにしてるね。無茶すんなよ」
ぱたぱたと遠ざかっていく足音。しばらくして、沙良は勢い良く飛び起きた。
「え!? お風呂とトイレ!?」
時計は朝の七時半を指していた。遅くはないが、弁当を作るつもりだったのでもっと早く起床するつもりだった。完全に寝坊した。
あわてて階段を降りると、人の気配がリビングから。
「真琴ー、やばい落ちちゃう、待って待って!」
「ん」
しきみのはしゃいだような笑い声、真琴のくぐもった声。
リビングに面した庭にて2人が洗濯物を干していた。明らかに量がいつもより多い。ベッドカバーやシーツ、いつもは洗わなくてもたまに洗濯したいと思われるものが全て竿にかかっている。
「あ、沙良ー」
くるりと振り返ったしきみが、にこにこしながら家へ入る。
「しきみ、真琴、どうして、起こしてくれていいのに」
「えへへー、沙良がお料理に専念できるように、色々やっておこっかなって!」
「うん」
真琴がこくこくと首を何度も縦に振った。
「そんな、」
「あたしも真琴もそろそろ出なきゃ。今日手伝えなくてごめん、沙良無理しないでね、じゃあね!」
慌ただしく去っていくしきみ。真琴が沙良に近づいた。
「ごはん、炊いて、おいた」
「真琴……ありがとう、ごめんね、寝坊して」
「ううん。沙良、どうか、無理せずに」
沙良は恥ずかしさで俯いた。真琴にぎゅっと抱きしめられ、背中に手をまわす。ぽんぽんと優しく添えてやると、真琴はどこか凛々しい面持ちで家を後にした。
沙良は自分の両頬を、気合い入れを込めてぱんぱんと叩く。
「よし、」
***
『報告書
作成日 20✕✕年 ✕✕月 ✕✕日
作成者 沢田家光、以下CEDEF (門外顧問機関)
表題 対ヴァリアーに関する幹部候補生育成プログラム
・ケース1
生徒:沢田綱吉
教師:REBORN
・方法
ボンゴレ1世・Giotto (日本名:沢田家康)が行った習練を修めさせる。
最終目標は、初代ボンゴレがマスターさせた技を習得させること
・理由
沢田綱吉と、ボンゴレ1世の戦闘スタイルが酷似しているため
・添付資料
ボンゴレファミリー歴史書1〜2
ボンゴレ1世』
綱吉は、自分の額に炎が宿るとき、とてつもない万能感に包まれ、どんなことでもできるような気がしていた。それは例えば、断崖絶壁を軽々と身一つで登っていくような……
「い゛っ!!?」
ひきつった声を上げる。死ぬ気の炎はかなりのエネルギーを与えてくれるが、永久に持続するわけではない。約5分ほどで、無敵な時間は終わりを迎える。綱吉がそそり立つ崖をよじ登る最中だとしても。
「んなあ!? ここどこーー!?」
険しい岩肌に綱吉は捕まり、パニックになっていた。
数十メートル下には川が広がり、周囲はナショナルジオグラフィックに掲載されている写真のような光景が広がっている。後から聞いた話であるが、ここは自然公園なのだという。
「お前が死ぬ気でここまで来たんだぞ」
下から声を張り上げているのは家庭教師・リボーン。
「本能的にやることがわかってるみてーだな。さあ登れ」
登れと言われても、綱吉自身に登攀の技術はない。途端に手は痺れ、足はすべり、綱吉はあっけなく落下していく。体を受け止めたのが水深が深い川であったのが幸いである。
必死にもがき、体内に押し入ってきた水を吐き、浅瀬に這い出る綱吉。そんな彼に、家庭教師は無慈悲にも告げた。
「これじゃあとても、ヴァリアーに歯が立ちませんぞ」
ジェントルマン風味に、ふざけながらからかってくる彼に、綱吉はむっとする。
「うるさいよ! それに、オレは戦う気はないって!!」
「偽物のリングはすでに届けられたはずだ。お前が嫌でも、ヴァリアーとの全面対決は避けられねえ」
現実は非情である。頭を抱える綱吉に、リボーンは更に追い打ちをかける。
「なるべく早く、この絶壁を登れるようにしろ。それが修業の入り口だ」
「出来るわけないだろ!? そんなめちゃくちゃな特訓なんてあるかよ!」
食い下がる教え子だが、彼には考えがあるようだ。
「めちゃくちゃじゃねーぞ。初代ボスがしたという由緒ある修業だ」
「しょ、初代……?」
不本意ながらも綱吉は耳を傾ける。歴代ボンゴレのボスたちは皆、武器も戦闘スタイルも千差万別で、ナイフ、銃、ボウガン、中には食事のときに使うフォークで戦った者もいたという。
そして、綱吉と同じグローブを武器にしていたボスもいた──それが、歴代最強と名高い、大空と謳われた初代ボンゴレ。
リボーンは、初代の鍛錬のやり方を参考にするつもりらしい。
「初代はいつ何時でも死ぬ気モードになれるよう、崖を登り基礎体力をつけたんだ」
そうは言われても、すんなり納得できるわけもなく。
「こっちはすでに筋肉痛でぼろぼろだぞ! もたないって!」
「お前の仲間たちも頑張ってるんだぞ。沙良もほら、そこで」
リボーンに促され、綱吉が視線を横にずらすと、少し離れた滝壺に、縮こまりながらも水に打たれる沙良がいた。
「沙良ー!? な、なんで!? 何やってんの!?」
言うまでもなく滝行である。
綱吉の絶叫に、沙良がしとどに濡れた顔を上げ、なんとか手を降っている。数秒して、上空から一匹の巨大な鳥、コロネロのファルコが現れ、沙良の斜め上空を、水に当たらないように旋回し始めた。
それが合図だったのか、沙良は滝から離れ、よろよろ水をかきわけながら綱吉の元へやってくる。
「綱吉くん、大丈夫? さっき落っこちてたけど……」
「だ、大丈夫だけど……沙良こそ、一体どうして」
「そ、それがね……」
つまり割と本格的な修行には入っておらず、4人は今日からが始まりなのだろうという心持ちで翌朝を迎えたのである。
鳴海はかけ布団をおいやり、昨日から準備していた運動着に着替えた。あまり熟睡できなかったからか、頭に様々なことがよぎる。
これからの修行期間、学校はしばらく欠席せねばならないだろう。スクアーロ。ヴァリアー。指輪。思い出して、鳴海は置いていた指輪を手に取り、眺める。
魚やサンゴのような模様が彫られ、深いブルーの宝石がはめ込まれている。
ボンゴレの長い歴史の中で、初代にしか持ち主がいなかったと言われている指輪。
軽やかなはずの金属の輪っかから、プレッシャーがずしりとのしかかる。
「……俺なんかが、もらっていいのかな」
つい、ぽつりともれる。
──父さんにも、選ばれなかったのに。
心の仄暗い部分から湧いた言葉を、鳴海は激しく首を振って、断ち切ろうとする。
「……あーもう、やめだやめ! 考えるな、考えるな」
自分に言い聞かせながら、鳴海は指輪をはめ、長柄槍に变化するステッキを鷲掴みにし、自室を出た。
階段を降りてキッチンへ行くと、そこには意外な人物が。
「あ……」
「真琴、」
「お、は、よう」
しどろもどろになりながら挨拶をしてくる。真琴が布巾を手に、電子レンジの中を磨いていたのである。
こころなしか、IHコンロもシンクも、いつも以上にぴかぴかに磨かれているような。
「沙良が、起きなくて。しばらく、家のこと、修業で、出来ないだろうから、その」
鳴海はなんとなく察した。時刻は朝の6時半。皆の弁当や差し入れを作るとはりきっていた彼女にしてはめずらしく起きていない。
この世界に来てから気付いたことだが、沙良は精神的な負担を負うと、どうやら寝込みがちになるようだ。ならこのまま寝かせてやって、その間に修行中おろそかになるであろう他の家事をやってしまおうと真琴は考えたのだろう。おそらく、真琴も緊張で眠りが浅かったに違いない。
「風呂と、トイレはやった?」
鳴海が問う。
「ま、まだ、これから……」
「じゃ、俺そっちやるよ」
集合まで、まだ時間はある。鳴海が腕まくりをした時、もう一人がリビングに飛び込んできた。
「グッドモーニング! おはよ! あのさあ、さっき見たら沙良寝てたから今のうちに……」
しきみが元気よくやってきて、真琴と鳴海、両方を見てぱあっと笑った。
「あたしもやるー!!」
*
「沙良、沙良」
揺れ動かされ、沙良はぬくまった毛布の中で身動ぎした。まるでゆっくり水中から水面へ浮上するかのようにはっきりしていく意識と共に、友人の声の輪郭もはっきりしていく。
眠い目をこすっていると、焦点が合う。
「鳴海……?」
沙良の寝室にて、鳴海がこちらを覗き込んでいる。
「沙良、俺そろそろ行くね」
「うん、うん……いってらっしゃ……」
「風呂とトイレ掃除しといたから。差し入れ楽しみにしてるね。無茶すんなよ」
ぱたぱたと遠ざかっていく足音。しばらくして、沙良は勢い良く飛び起きた。
「え!? お風呂とトイレ!?」
時計は朝の七時半を指していた。遅くはないが、弁当を作るつもりだったのでもっと早く起床するつもりだった。完全に寝坊した。
あわてて階段を降りると、人の気配がリビングから。
「真琴ー、やばい落ちちゃう、待って待って!」
「ん」
しきみのはしゃいだような笑い声、真琴のくぐもった声。
リビングに面した庭にて2人が洗濯物を干していた。明らかに量がいつもより多い。ベッドカバーやシーツ、いつもは洗わなくてもたまに洗濯したいと思われるものが全て竿にかかっている。
「あ、沙良ー」
くるりと振り返ったしきみが、にこにこしながら家へ入る。
「しきみ、真琴、どうして、起こしてくれていいのに」
「えへへー、沙良がお料理に専念できるように、色々やっておこっかなって!」
「うん」
真琴がこくこくと首を何度も縦に振った。
「そんな、」
「あたしも真琴もそろそろ出なきゃ。今日手伝えなくてごめん、沙良無理しないでね、じゃあね!」
慌ただしく去っていくしきみ。真琴が沙良に近づいた。
「ごはん、炊いて、おいた」
「真琴……ありがとう、ごめんね、寝坊して」
「ううん。沙良、どうか、無理せずに」
沙良は恥ずかしさで俯いた。真琴にぎゅっと抱きしめられ、背中に手をまわす。ぽんぽんと優しく添えてやると、真琴はどこか凛々しい面持ちで家を後にした。
沙良は自分の両頬を、気合い入れを込めてぱんぱんと叩く。
「よし、」
***
『報告書
作成日 20✕✕年 ✕✕月 ✕✕日
作成者 沢田家光、以下
表題 対ヴァリアーに関する幹部候補生育成プログラム
・ケース1
生徒:沢田綱吉
教師:REBORN
・方法
ボンゴレ1世・
最終目標は、初代ボンゴレがマスターさせた技を習得させること
・理由
沢田綱吉と、ボンゴレ1世の戦闘スタイルが酷似しているため
・添付資料
ボンゴレファミリー歴史書1〜2
ボンゴレ1世』
綱吉は、自分の額に炎が宿るとき、とてつもない万能感に包まれ、どんなことでもできるような気がしていた。それは例えば、断崖絶壁を軽々と身一つで登っていくような……
「い゛っ!!?」
ひきつった声を上げる。死ぬ気の炎はかなりのエネルギーを与えてくれるが、永久に持続するわけではない。約5分ほどで、無敵な時間は終わりを迎える。綱吉がそそり立つ崖をよじ登る最中だとしても。
「んなあ!? ここどこーー!?」
険しい岩肌に綱吉は捕まり、パニックになっていた。
数十メートル下には川が広がり、周囲はナショナルジオグラフィックに掲載されている写真のような光景が広がっている。後から聞いた話であるが、ここは自然公園なのだという。
「お前が死ぬ気でここまで来たんだぞ」
下から声を張り上げているのは家庭教師・リボーン。
「本能的にやることがわかってるみてーだな。さあ登れ」
登れと言われても、綱吉自身に登攀の技術はない。途端に手は痺れ、足はすべり、綱吉はあっけなく落下していく。体を受け止めたのが水深が深い川であったのが幸いである。
必死にもがき、体内に押し入ってきた水を吐き、浅瀬に這い出る綱吉。そんな彼に、家庭教師は無慈悲にも告げた。
「これじゃあとても、ヴァリアーに歯が立ちませんぞ」
ジェントルマン風味に、ふざけながらからかってくる彼に、綱吉はむっとする。
「うるさいよ! それに、オレは戦う気はないって!!」
「偽物のリングはすでに届けられたはずだ。お前が嫌でも、ヴァリアーとの全面対決は避けられねえ」
現実は非情である。頭を抱える綱吉に、リボーンは更に追い打ちをかける。
「なるべく早く、この絶壁を登れるようにしろ。それが修業の入り口だ」
「出来るわけないだろ!? そんなめちゃくちゃな特訓なんてあるかよ!」
食い下がる教え子だが、彼には考えがあるようだ。
「めちゃくちゃじゃねーぞ。初代ボスがしたという由緒ある修業だ」
「しょ、初代……?」
不本意ながらも綱吉は耳を傾ける。歴代ボンゴレのボスたちは皆、武器も戦闘スタイルも千差万別で、ナイフ、銃、ボウガン、中には食事のときに使うフォークで戦った者もいたという。
そして、綱吉と同じグローブを武器にしていたボスもいた──それが、歴代最強と名高い、大空と謳われた初代ボンゴレ。
リボーンは、初代の鍛錬のやり方を参考にするつもりらしい。
「初代はいつ何時でも死ぬ気モードになれるよう、崖を登り基礎体力をつけたんだ」
そうは言われても、すんなり納得できるわけもなく。
「こっちはすでに筋肉痛でぼろぼろだぞ! もたないって!」
「お前の仲間たちも頑張ってるんだぞ。沙良もほら、そこで」
リボーンに促され、綱吉が視線を横にずらすと、少し離れた滝壺に、縮こまりながらも水に打たれる沙良がいた。
「沙良ー!? な、なんで!? 何やってんの!?」
言うまでもなく滝行である。
綱吉の絶叫に、沙良がしとどに濡れた顔を上げ、なんとか手を降っている。数秒して、上空から一匹の巨大な鳥、コロネロのファルコが現れ、沙良の斜め上空を、水に当たらないように旋回し始めた。
それが合図だったのか、沙良は滝から離れ、よろよろ水をかきわけながら綱吉の元へやってくる。
「綱吉くん、大丈夫? さっき落っこちてたけど……」
「だ、大丈夫だけど……沙良こそ、一体どうして」
「そ、それがね……」
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