25.結婚式inマフィアランド 下
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ボンゴレが管轄する裏社会のリゾート地、常夏の楽園マフィアランドを、突如戦艦で責めてきたカルカッサファミリー。平和で穏やかな景色は一変し、人々の悲鳴、大砲や弾丸の雨がふりそそぐ戦場と化してしまった。
攻撃を受けた観光客らは、島の従業員の指示に従い、マフィアランドの象徴であるマフィア城に集結していた。
ボンゴレ傘下のマフィア達が融資しただけとあって、広大な城のホールは広々としていて、観光客たちが一斉に集まってもいくぶんかゆとりがある。
加えて非常事態だが、雰囲気はあまり逼迫していなかった。
それはマフィアだけではない、綱吉の母・奈々や、ハル、京子などわずかにいる普通の一般人を思い、ディーノが部下に手回しさせ、この一連の騒動は島の観光イベントの一環であると触れて回ったからだった。
非戦闘員は城の奥にある食堂を案内される中、奈々が神妙な面持ちでしきみの袖を引いた。
「イベントなのはいいんだけど……つっくん大丈夫かしら?」
「心配ですー!!」
奈々のとなりにはハル、京子、フゥ太、ランボにイーピン。全員不安そうにしている。
しきみがあわててスマホ画面を見せた。
「あっ、大丈夫です、無事ですよ!」
綱吉達とのチャット欄を確認し、皆一斉に胸を撫で下ろしている。なら一安心だと、奈々が子供たちを連れて奥の食堂へ歩みを進めたときだった。
「何やら試合をするそうだな! 極限にオレも参加だー!!」
笹川了平だ。闘志に燃えてうずうずしている。
「落ち着けよ芝生頭! てめえが出しゃばっていいときじゃねえ、これは戦争なんだよ!!」
獄寺の一喝に、了平はまったく耳を貸そうとしない。
「何を言うかタコ頭! この燃える戦いのときに、大人しく引っ込んでいては男がすたる!!」
だが今は、彼を自由にさせるわけにはいかなかった。先ほどからしきみのスマホに、何度も鳴海から電話が来ている。
「そ、そのときが来たら言いますから!」
しきみは苦し紛れに説得に入る。
「なに、本当か!?」
「はい! だから、今は奥へ行って、京子ちゃんたちを守ってください!」
「うむ、何かあればすぐに呼んでくれ!!」
了平は大きく頷き、京子に若干たしなめられつつ食堂へ行く人並みについていった。
しきみはあわてて画面の『電話に出る』ボタンをタップする。
「鳴海、どうしたの!?」
『しきみ何度もごめんね、そこから船見える?』
相変わらず、大砲の音は止みそうにない。マフィア城は島の中心部にそびえたち、まだまだ戦艦との距離はあるものの、いつ襲撃されてもおかしくなかった。
しきみは危険を承知で、海に面した城の窓に近づいた。古びたガラスのほこりをぬぐい、広がる青い海と、巨大な鉄の船を見据える。
沙良と獄寺も、しきみの隣にかけよって会話に耳をすました。
「うん、見えるよ!!」
『なにか気になることとかない?』
「えっとねえ……ずいぶん古びた戦艦だね、それから」
しきみは必死に考えを張り巡らせる。
「普通戦艦には、巡洋艦っていって、偵察したり捜索したり艦隊の手足になる船があるはずなんだけど、それが見えないなあ。一隻だけ」
『……じゃあさ、獄寺と変わってくれないかな?しきみと獄寺の力が必要になると思う』
しきみは獄寺を見つめ、ちょいちょいと指をさす。数秒、鳴海がとあることを話し、しきみはそれを獄寺に伝える。
しきみの顔に、満面の笑みが広がった。
「うん、わかった!任せて」
「てめえにしちゃあ、上出来じゃねえか」
獄寺も満足そうだ。
電話を切った後、しきみは沙良に向かい合った。
「沙良、奈々さん達をお願い」
「えっ、そんな、私もそばに」
沙良はしぶっていた。いずれ城の周辺は戦場になるだろう。そのとき、治癒能力を持つ自分が近くにいれば少しでも役に立つのではないか。
だが、しきみは首を左右に振った。
「ちょっとこれから危ないことするからさ、沙良は奥でみんなを守っててほしいんだ。それに、真琴もすごく心配すると思うし」
「っ……」
沙良は口惜しくてたまらなかった。もし自分にも戦う力があったなら、大切な友と、想い人のそばを離れなくてよかったのに。
しかし今は非常事態だ。わがままを言うべきではないと自分に言い聞かせ、沙良は決心した。
「私、いっぱい治療してあげるから、安心して暴れてきて!」
「ありがとう、沙良も無理しちゃだめだよ!」
目に涙をため、沙良はしきみと強く抱きしめ合う。ふいに、獄寺と目が合い、互いにしかと視線を交わした。後ろ髪を引かれながら、沙良は奈々達と共に奥の食堂へ去っていく。
「さて、あたし達ががんばらないとね!!」
しきみは手をパンと叩き、ホールに残った、抗争に参加する気まんまんの人々を見渡した。
「リゾート気分に飽き飽きしていたところよ!!」
「やっぱこの感覚がいちばんだよな」
全員裏社会で生きているだけあって、目つきは鋭く、すさまじいオーラがある。
「
その中で、しきみは物怖じせず声を張り上げた。彼女の声は、ホールに響き渡り、天井すらも震わせるようによく通る。その場にいる全員の視線が、一斉にしきみと、隣の獄寺に降り注がれる。
「Tutti in ogni famiglia mafiosa!」
獄寺が発したイタリア語に、しきみはぎょっとした。獄寺は帰国子女であることを思い出す。「イタリア語じゃねえとわかんねえファミリーもいるからな」彼の言葉にしきみは納得した。
「お前ら、大丈夫か!?」
戦艦からの攻撃に逃げ遅れた人々を助けていたディーノが戻ってきた。しきみと獄寺が何をしようとしているのか分からず、戸惑っている。しきみは胸を張って答えた。
「鳴海の作戦です、この状況を打破します!」
「!!」ディーノの目が見開く。
『この中に、爆発物を武器としている人は、ぜひ力を貸してください』
しきみが呼びかけ、獄寺、ディーノがイタリア語に変換する。キャバッローネのボスを差し置き、いきなり場を仕切りだした学生2人に興味がわいたのか、面白半分か、数人男たちが集まり話しかけてきた。
「ずいぶん肝の据わったガキ共だな」
「君たちはどこのファミリーだ?」
「ボンゴレです!!」しきみは叫ぶ。
「ボンゴレだ!!」獄寺も誇らしげに言った。
ざわ、と誰もかれもに衝撃が走った。
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