24.結婚式inマフィアランド 中
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巨大なクルーズ船のギャングウェイから降り立った、鮮やかなドレスを着た女性に、近くにいたリゾートの観光客たちから歓声が上がった。小さくはあるがその肩に乗るタキシードの赤ん坊の姿から、結婚式の真っ最中だということが伺える。
明るく幸せそうな微笑みをたたえ、美しい花嫁と小さな花婿は海岸沿いのリゾートホテルへ入っていく。既にスタンバイしている数人のホテルスタッフが、柔和な笑みで歓迎し、案内する。
オーシャンビューの客室が評判のその場所が、披露宴の会場だった。
披露宴の為にビアンキが選んだのは、オフショルダーのAラインのドレスだ。チュールがふんだんに使われ、全体的に赤とピンクのグラデーションになっている。
一方リボーンも、お色直しという名の修理点検がディーノとその部下たちによってなされていた。
披露宴は約2時間半ほどを予定している。あと少し、あと少し乗り切れば、新郎が逃げて身代わりの人形が置かれたという衝撃の事実は露呈せずにすむ。
乾杯の音頭と共に、大人達にスパークリングワイン、未成年にはノンアルコールのソフトドリンクが振舞われた。
『それでは、ケーキ入刀にうつらせていただきます』
会場の照明が、新郎新婦のメインテーブルの脇に集まった。
『なんと、ウェディングケーキは花嫁のお手製です!』
事情を知る幾人かがぎょっとのけぞり、このめでたい席で顔に出さないように必死だった。普通ならば盛り上がるところではあるが、これは普通の結婚式ではない。毒殺をメインに殺し屋を営む、作った料理がすべて自然と毒入りになってしまう体質の女性の結婚式なのである。
ビアンキ特製ケーキ、つまりそれは、食べるだけで体調に支障をきたすポイズンクッキング。ケーキを隠していた覆いが取り払われ、ウェディングケーキの全貌が明らかになる。
『ケーキオープン!』
長さ1メートルは超えているであろう巨大ウェディングケーキ。遠目からだとそこそこ美味しそうに見えなくもないが、新郎新婦に近い席の者や、ブライズメイドのしきみと沙良の顔がさっと青くなる。
命の危機である。一口でも体内に入れれば無事では済まないことは火を見るより明らかだった。
「沙良、胃薬もってる……?」しきみが小声でささやく。
「な、何かあったら私治療してあげるから……!」
『それでは、新郎新婦にはケーキの前に立っていただいて、準備が出来ましたら会場の皆様もカメラのご準備を……』
そこで、司会進行の声が途切れた。立ち上がったビアンキ。その隣のリボーン人形が突然ぽんっ!!と黒ヒゲ危機一髪のごとく飛び出し、
「ちゃおっス!!」
ウェディングケーキに派手に突っ込んだのである。
どよめく場内、沙良が人形を操作するためのリモコンを持っているであろう獄寺のほうを見ると、
「ガハハハ!! 面白~!!」
「おい、そいつを返せ!!」
ランボが獄寺からリモコンを奪い、好き勝手にボタンを連打しまくっているではないか。獄寺はリモコンを取り戻そうと奮闘するも、視界を狭めるグラサンをしているため思うようにいかない。
「ちゃおっス! ちゃおっス!! ちゃおっス!!!」
ランボの遠慮ないプッシュに合わせて、人形は同じ言葉を繰り返し、ケーキに何度もタックルしてクリームまみれになっていく。
「ランボちゃん……!」
しきみがさっと目立たないように席まで辿りつき、ランボの手からリモコンを離すことに成功した。
頬をひきつらせ、こめかみを震わせながら、ビアンキは大人しくなった人形の首根っこをつかむ。
「リボーンはこんなことしないわ!」
怒りのあまり、テーブルの花飾りとリボンをひきちぎっている。
「彼はどこ!? どこなの!!」
しきみが獄寺にリモコンを手渡し、そっとあることを耳打ちする。獄寺は大きくうなづき、操作を始めた。
「これは、しれん」
クリームをぽたぽた下へ落としながら、人形の口が動く。
「試練……!?」
ビアンキの目の色が変わった。同時に、
「ビアンキさん、大丈夫ですか」
沙良がさっとティッシュを取り出し、ビアンキのこめかみの汗をふいてやる。メイクが崩れないように気を付けながら。
ディーノもビアンキの手からリボーン人形を取り上げつつ声をかける。
「そうだぜ、リボーンのやつ、この結婚を機に毒サソリがどこまで自分のわがままを許してくれるか確かめているんだよ。ずっと長く一緒にいたいだろうしな」
獄寺がせわしなく手を動かし、リボーン人形の首が縦に何度も動く。ビアンキの般若のような顔は、先ほどとは打って変わってあふれんばかりの笑みだ。
「……大丈夫よ。これくらい、私たちの愛の前では何でもないわ!」
愛しい夫(人形)を抱きしめるビアンキ。その姿を見て、沙良の中にふつふつとくすぶっていた罪悪感が膨れ上がっていく。
(本当にこれでいいのかな……)
***
この島は半分が観光施設、残り半分がその宿泊施設やアミューズメントパークの為に備えられている保管庫や食料庫、コンテナが密集されたバックヤードである。
リボーン(本物)捜索隊の鳴海、真琴、綱吉、山本は、ディーノから事前にいくつか、マフィアランドのリゾートにてリボーンの目撃情報があった場所を教えられていた。
広い娯楽施設を手分けして周った。食べものやみやげものを売っている店員やスタッフに(島の従業員は国籍さまざまだが全員日本語が通じた)リボーンを見かけたら連絡するようにディーノから渡された携帯端末の番号を教えながら。しかし、彼の姿はどこにもない。
遊園地の入り口付近の休憩コーナーで立ち尽くす面々。深刻そうな顔とは反対に、観光客たちはのびのびと娯楽に興じている。
「リボーンどこ行っちゃったんだろ…」
綱吉はほとほと参っていた。気を利かせた山本が、そばの自販機からジュースを買い、皆に配る。
「こんだけ探して、小僧はとっくに島を出てたとかなら笑えねえよなー」
苦笑いする山本。いちばん考えたくない可能性だが、無いとは言い切れない。
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