03.2人目のトリップと爆弾少年
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もしかして、罰が当たっちゃったのかな。
しきみは平凡で恵まれた学生だった。家族仲は良好、友達関係も問題なし、面倒くさいのは勉強と宿題と、将来を考えることだけ。いやだなと思うことは長続きせず、すぐに楽しいことが待っている。
しかしここ最近、家庭と学校に守られている学生らしく、退屈しのぎになる刺激を求めていた。もちろん、非行に走るなんてどれほど愚かなことかは、ちゃんとわかってる。彼女が求めているのは、もっと別のことだった。
幼稚園か小学生のころ、夕方5~6時からよく見ていたアニメがあった。その時間帯のアニメは、有名な児童書や人気の絵本などが原作で、ファンタジー要素がかなり強い。成長してからは見なくなったが、おそらく今も似たような作品が放映されているのだろう。
突然起こる不思議な事件、それに巻き込まれる主人公たち。魔法使いや能力者に変身したり、特別な力が使えるようになったり。夢のような、楽しい時間。
あんな出来事が、自分にも起こらないだろうか。摩訶不思議で、楽しくて、学生特有のメランコリーを吹き飛ばすような、ぶっ飛んだ事件が起こらないか。
…なんて言ったら、笑われるにきまってる。しきみ自身こんなことを考えている自分を笑う。だからそっと胸の奥に秘めていた。
だが、しきみの友人たちはそれを否定しなかった。ある時ぽろっと零れた、自分の幼稚な夢を、やさしく受け止めてくれたのだ。
鳴海は「それもいいな」と同意してくれた。
沙良は「私も、体験してみたいなあ」と共感してくれた。
真琴は「自分も見てた、そのアニメ」とだけ言った。
このメンバーでいると心地よかった。友情がいつまで長続きするかはわからない。進学、就職と大人になるにつれ、会う機会も減り、離れ離れになってしまう。
だけど、かなうなら、大人になっても友人同士でいたいと思う。
こんな風に思える人間に会えただけで、しきみは幸せ者だったのだ。だから、馬鹿な空想にふけってないで、幸せを噛みしめるだけでよかったのに。
友人が消えたとき、しきみは、罰が当たったのかな、なんて現実逃避をしていた。
いつも通り、鳴海が教室に入ってくるのを待っていた。彼女は大体ホームルーム10分前とか、5分前とか、ギリギリになって登校してくる。時計の針を目で追いながら、今日も急いでるんだろうなあ、なんてのんきにかまえていた。
だが、待てども待てども友人は姿を現さない。5分前、4分前、3分前…とうとう教師がやってきた。始業を告げるチャイムが響く。
今日は休みかな、と思った矢先、異変はすぐに訪れた。
教師が「今日は全員来てるな」と発言したのだ。
しきみは「先生!」と慌てて手をあげる。
「なんだ、近衛」教師はしきみの苗字を呼ぶ。
「先生、その、蘇芳さんが来ていませんが」
しきみは鳴海の苗字を言った。
教師はきょとんとした表情でこちらを見つめ返してきた。クラスメイト達が若干、ざわついている。
「近衛、お前寝ぼけてるんじゃないか」
仕方がないなあ、という風に教師は笑った。それにつられて教室中からも笑いがこぼれる。
「蘇芳なんて奴は、このクラスにいないぞ」
「え?」
教師の発言を一瞬、理解できなかった。しきみは鳴海の座席を見た。一番後ろの机。別のクラスメイトが座っている。
「どうしたの、しきみちゃん」
隣の席の子がいぶかしげにこちらを見つめてくる。室内に微妙な空気が流れ始めていた。
しきみは渋々「すみません…」と手を下げる。
心臓がばくばくと早鐘を打つ。手が震える。ホームルームが終わり、やがて授業が始まった。が、集中なんてとても出来なかった。
授業と授業の合間にある短い休み時間、しきみは教師が置いて行った生徒名簿をそっと盗み見た。ずらっと並ぶ生徒たちの名前。鳴海の名前を探した。
だがどんなに目をこらしても、何度名簿を往復しても、見つけることはできなかった。
一応人を選んで、大人しい雰囲気のクラスメイトの一人に聞いた。「蘇芳 鳴海って子が、いたよね?」と。
返答は「誰?その人」だった。
もう一人に聞いてみる。「鳴海って子、知ってる?」
その子は答えた。
「聞いたこともないよ、そんな名前」
ねえ、鳴海。一体どこに行ってしまったの。
しきみはふらふらとおぼつかい足で、別のクラスにいる、沙良と真琴が待っているであろう空き教室へ向かった。
しきみは平凡で恵まれた学生だった。家族仲は良好、友達関係も問題なし、面倒くさいのは勉強と宿題と、将来を考えることだけ。いやだなと思うことは長続きせず、すぐに楽しいことが待っている。
しかしここ最近、家庭と学校に守られている学生らしく、退屈しのぎになる刺激を求めていた。もちろん、非行に走るなんてどれほど愚かなことかは、ちゃんとわかってる。彼女が求めているのは、もっと別のことだった。
幼稚園か小学生のころ、夕方5~6時からよく見ていたアニメがあった。その時間帯のアニメは、有名な児童書や人気の絵本などが原作で、ファンタジー要素がかなり強い。成長してからは見なくなったが、おそらく今も似たような作品が放映されているのだろう。
突然起こる不思議な事件、それに巻き込まれる主人公たち。魔法使いや能力者に変身したり、特別な力が使えるようになったり。夢のような、楽しい時間。
あんな出来事が、自分にも起こらないだろうか。摩訶不思議で、楽しくて、学生特有のメランコリーを吹き飛ばすような、ぶっ飛んだ事件が起こらないか。
…なんて言ったら、笑われるにきまってる。しきみ自身こんなことを考えている自分を笑う。だからそっと胸の奥に秘めていた。
だが、しきみの友人たちはそれを否定しなかった。ある時ぽろっと零れた、自分の幼稚な夢を、やさしく受け止めてくれたのだ。
鳴海は「それもいいな」と同意してくれた。
沙良は「私も、体験してみたいなあ」と共感してくれた。
真琴は「自分も見てた、そのアニメ」とだけ言った。
このメンバーでいると心地よかった。友情がいつまで長続きするかはわからない。進学、就職と大人になるにつれ、会う機会も減り、離れ離れになってしまう。
だけど、かなうなら、大人になっても友人同士でいたいと思う。
こんな風に思える人間に会えただけで、しきみは幸せ者だったのだ。だから、馬鹿な空想にふけってないで、幸せを噛みしめるだけでよかったのに。
友人が消えたとき、しきみは、罰が当たったのかな、なんて現実逃避をしていた。
いつも通り、鳴海が教室に入ってくるのを待っていた。彼女は大体ホームルーム10分前とか、5分前とか、ギリギリになって登校してくる。時計の針を目で追いながら、今日も急いでるんだろうなあ、なんてのんきにかまえていた。
だが、待てども待てども友人は姿を現さない。5分前、4分前、3分前…とうとう教師がやってきた。始業を告げるチャイムが響く。
今日は休みかな、と思った矢先、異変はすぐに訪れた。
教師が「今日は全員来てるな」と発言したのだ。
しきみは「先生!」と慌てて手をあげる。
「なんだ、近衛」教師はしきみの苗字を呼ぶ。
「先生、その、蘇芳さんが来ていませんが」
しきみは鳴海の苗字を言った。
教師はきょとんとした表情でこちらを見つめ返してきた。クラスメイト達が若干、ざわついている。
「近衛、お前寝ぼけてるんじゃないか」
仕方がないなあ、という風に教師は笑った。それにつられて教室中からも笑いがこぼれる。
「蘇芳なんて奴は、このクラスにいないぞ」
「え?」
教師の発言を一瞬、理解できなかった。しきみは鳴海の座席を見た。一番後ろの机。別のクラスメイトが座っている。
「どうしたの、しきみちゃん」
隣の席の子がいぶかしげにこちらを見つめてくる。室内に微妙な空気が流れ始めていた。
しきみは渋々「すみません…」と手を下げる。
心臓がばくばくと早鐘を打つ。手が震える。ホームルームが終わり、やがて授業が始まった。が、集中なんてとても出来なかった。
授業と授業の合間にある短い休み時間、しきみは教師が置いて行った生徒名簿をそっと盗み見た。ずらっと並ぶ生徒たちの名前。鳴海の名前を探した。
だがどんなに目をこらしても、何度名簿を往復しても、見つけることはできなかった。
一応人を選んで、大人しい雰囲気のクラスメイトの一人に聞いた。「蘇芳 鳴海って子が、いたよね?」と。
返答は「誰?その人」だった。
もう一人に聞いてみる。「鳴海って子、知ってる?」
その子は答えた。
「聞いたこともないよ、そんな名前」
ねえ、鳴海。一体どこに行ってしまったの。
しきみはふらふらとおぼつかい足で、別のクラスにいる、沙良と真琴が待っているであろう空き教室へ向かった。
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