23.結婚式inマフィアランド 上
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天井に描かれた多くの天使や聖人達は、装飾の施された天窓を取り囲むように揺蕩い、そこから差し込む日差しは、やわらかな粒子となって体を包み込む。
冷たく頑丈な壁が、柱が、大地に根を下ろし、築き上げられた堅牢な城。
そこに、鳴海はいた。
歩を進めるたびに、コツ、コツと自身の靴の音が響く。乳白色の大理石の上に深紅の絨毯が敷かれ、空っぽの玉座と、自分の足元を繋ぐ。
城なのだから、主がいるはずだ。夢の中で鳴海はそう考えた。人の夢とは不思議なものだ。見ている景色が一部分だけしかなくても、どういう状況なのか理解しているときがある。
もうひとつだけ、鳴海は確信を得ていた。
この城の玉座の間にいる、この自分は──自分ではない。別の誰かだと。
夢の中の鳴海はゆっくり玉座へ近づく。黄金で形作られた椅子、その後ろにそびえたつ、細かなレリーフの壁に魅入った。さんさんにかがやく太陽、空、海、魚、それらをあがめる民が刻まれている。
この空間に、自分の吐息すら反響するのではないかと思わせるほどの静謐が横たわっていた。
ふいに、背後に気配を感じた。振り向くと玉座の間の入口に、フロックコートを纏った、金髪の男が立っている。
太陽のような男だ、夢の中の鳴海はそう感じていた。そこにいるだけでぱっと場が華やぐような、こんな荘厳な場所に居てもなお自身の輝きを放つ、眉目秀麗な男。それでいて、どこか純朴な農夫のごとき親しみやすさが漂っている。
男はうれしそうに笑い、こちらへ近づいてくる。歩くたびに、金糸の髪が揺れる。少しだけ足をもたつかせ、前のめりになっている。そんな様子を見て、心の中に淡くくすぐったい感覚が芽生えた。愛しさ。
口が勝手に開いて、聞き覚えの無い声を放った。
「そう急がなくとも、逃げはしませんよ」
少しかすれた、大人の女性の声。
男ははっとすると、咳ばらいをし、襟を正す。
その間に鳴海──夢の中の女性は気品ある仕草で、金の椅子に腰を下ろし、右手をすっと男の方へ掲げる。視界の隅に、床まで引きずるコバルトブルーのドレスが映った。
男は膝をつき、その手の甲にうやうやしく口づけを落とす。
「ようこそ我が国へ、キャバッローネ」
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