・ワンドロワンライ
異次元ミアレ騒動が決着してから数か月。当初の分析通り、おおよその異変は少しずつ収まってきたけれど、それでも定期的におかしなことが起きていた。今日もまたそんな、少し妙な異次元の調査に乗り出していた日で。たまには体を動かさんとな、なんて言いながら珍しくカラスバがキョウヤの調査に同行したところだった。
暴走メガシンカの兆候もなく、中にいるポケモンの強さも不明。というよりは、ポケモンの気配が感じられない。こういうことはまれによくあるので、警戒だけは怠らないようにとキョウヤとカラスバは顔を見合わせて強くうなずき合って異次元空間に飛び込んだのだが。
その、5分後。
「俺のカラスバさんだから!!」
「いやいや俺のって…付き合ってもないくせに」
「からすばしゃん、からすばしゃん!」
右にキョウヤ、左にでかいキョウヤ、正面に小さいキョウヤ。
「…なんやここ、天国か…?」
カラスバは思わず真剣な顔でそう一人ごちた。
飛び込んだ異次元空間は、いつも通り暗い空に彩度の低いミアレだった。事前調査の通り暴走メガシンカはおろか、ポケモンの気配がない。
「…静かですね」
「やな。どういう潜在意識か分からんけど…しっ」
「っ!」
建物の影から通りの様子をうかがっていたカラスバが鋭くそういうのに合わせてキョウヤは息をひそめる。それと同時に聞こえてきたのは、たったった、とひどく軽い人の足音。それこそ、子供のような。
ミアレに住む子供たちの潜在意識だろうか、なんて思っていた2人だったが、その子供が角を曲がって姿を現した瞬間に言葉を失った。
「…キョウヤ…?」
「お、俺!?」
見たことはないけれどあまりにも隣に立つ男の面影がある顔立ちの子供。吊り目はくりくりと大きく、淡く色づいたまろい頬は餅のよう。全体的に顔のパーツが今よりも丸っこくて、ついでに言えば等身も低く、なんだかころころしている。その子供は2人の姿を視界に認めると、大きな目をさらに大きく見開いて、それから無邪気な笑みを浮かべて駆けだしてきた。
「あ!からすばしゃんだ~!」
「ウッ!!」
「あ、ちょっとカラスバさん!?」
ずきゅんと狙撃された音をキョウヤは確かに隣で聞いた。胸を押さえるカラスバの元へ、幼いキョウヤらしき子供が駆け寄ってその腰にひしっと抱き着く。
「からすばしゃん!あいたかったです!」
「ぐっ…う…なんやこのかわいらしい生き物は…」
「おれ?おれね、きょうやっていうの!」
「クソ!まじで俺だった!」
思わず頭を抱えるキョウヤと、すでに骨抜きにされつつあるカラスバ。そんな二人の背後から忍び寄る影が一つ。
「妬けるなぁ、俺も混ぜてよ」
「「!?」」
ぬっ、と上から覗き込むようにして現れたのは長身の男。それも妙に見覚えがある顔をしている。知っている男よりもさらに幼さが抜けて成熟した大人の、精悍な顔立ちをしている。今の快活さよりも柔和な雰囲気が色濃く滲んでいるのは、歳を重ねているからだろうか。目線も高くなり、体格も一回り程大きくなってがっしりしているような。それでも面影は変わらない。が、思わず尋ねずにはいられなかった。
「え、と…どちらさん…?」
「わかんない?寂しいなあ、俺ですよ。俺もキョ・ウ・ヤ。未来のね?」
そう言って笑った男――未来のキョウヤは、やたらと色気の滲む目元を緩ませてふわりとカラスバに笑いかけた。
そして冒頭に至る。
なぜだか分からないが同じ場所に集結してしまった幼いキョウヤと今のキョウヤ、そして未来のキョウヤは、あろうことか3人が3人とも、やけにカラスバに懐いているようで。それぞれが構うせいで、いつの間にやら3人のキョウヤがカラスバを取り合っていがみ合うようになっていたのだ。
「この頃のカラスバさん、可愛いなあ」
するり、ごくごく自然な仕草で大人のキョウヤの長い腕がカラスバの腰を抱き寄せた。油断していたカラスバはぐ、と大人のキョウヤの方へ体が寄せられて、その厚い胸板にこつんと肩を預けることになる。ふわりと鼻腔を擽る爽やかさと甘さが混ざった香りに思わずぶわりと頬を染めながら、慌ててカラスバは足を踏ん張った、が、びくともしない。それに少し驚きながらもカラスバは眉間にしわを寄せて渋面を作った。
「は、はぁ?こんなおっさん相手に可愛いとか、ないやろ…アホちゃう」
「ふふ、照れてるの?素直じゃないところもかわいい」
「~っ、キョウヤのくせに…!」
余裕に満ちた顔でくすりと笑われて調子が狂う。なんだか勝てそうにない雰囲気に内心でうろたえていると、反対側からキャンキャン吠える声がして、ぐっと大人のキョウヤと逆側へ腕を引かれた。
「おい、カラスバさんに馴れ馴れしく触るなよ!」
キッと眦を吊り上げて刺々しい声音で噛みついたのは、カラスバがよく知るキョウヤだった。この険しい表情はあんまり見たことないな、なんて感心していると、自分を挟んで2人のキョウヤのにらみ合いが始まった。
「なに、これくらいのスキンシップ普通でしょ?自分が勇気無くてできないからって八つ当たりするのやめなよ、ダサいよ?」
「~~この…!」
ふん、と鼻で笑う未来の自分に怒りで顔を赤くしながらキョウヤが口をぱくぱくさせていた、その時。
「からすばしゃん、おれじゃだめなの…?」
正面で抱き着いている小さいキョウヤがうりゅ…と大きな目を潤ませてカラスバを見上げた。カラスバは思わずぴしりと固まった。自分を挟んで言い合いをする2人のキョウヤの声も耳に入らなくなった。
――殺人級の可愛さだ。オレが悪い人間ならこのまま攫っているところだろう。この天使はオレが守ってやらなくては。
そんな風に思いながらカラスバは自分の顔を片手で覆い、眉間にしわを寄せて一息ついた。それからかちゃりと眼鏡を押し上げて、それから努めて冷静にこう言った。
「はぁーーー…
オマエがナンバーワンに決まっとるやろがい。おいで」
「わーい!!!」
陥落。即落ちである。
「「あ、おいこらクソガキ!!」」
「こんな小さい子になんちゅーこと言うねん、このドアホ。どつきまわすぞ」
「「どっ…」」
目も合わせずに早口にそう言い捨てられて、2人のキョウヤは言葉を失って固まった。歳は違えど同じキョウヤ。思考回路が同じであった。
石と化した2人を無視して、カラスバはふにゃりと柔らかい笑みを浮かべてその場にしゃがみ込むと、小さいキョウヤに視線を合わせた。
「ちっちゃいキョウヤもほんまかわええなぁ、なんやこのほっぺ。ふわふわのもちもちやん」
「えへへ、からすばしゃんくすぐったいよ~」
「なんや柔らかすぎてマシュマロか思たわ」
「おれマシュマロじゃないもん」
「あ、パピモッチの間違いやったなぁ」
「もう、ちがうよ!」
くすくす笑いながらからかうカラスバと、ぷくりと頬を膨らませる可愛らしいキョウヤ。絵面は大変ほほえましいが、2人のキョウヤは知っている。
――この頃の俺、こんなに可愛くない。これは完全に猫被ってるし、ぶりっこしてる。
そう言いたくてもカラスバは小さいキョウヤにすっかり心を奪われている様子だった。何を言っても聞いてくれなさそうな空気がある。それどころか先ほどのクソガキ発言で2人への好感度は間違いなくガタ落ちだった。
何とかして伝えたい、そこのガキの本性を。そんな風に思いながら手をこまねいているうちに、カラスバは可愛くてたまらないとでも言いたげな顔でこう言った。
「ふふ、堪忍な。拗ねんといてや。お詫びにほしいもんなんでも買ぉたるさかい」
「…なんでも?」
いま、なんでもって言ったよね?
そんなお決まりの台詞が頭をよぎり、残る二人のキョウヤが顔をしかめるが、カラスバは気付かない。
「なにがほしい?世界の半分買ぉたろか?うん?」
なんてどこぞの竜王…いや魔王のようなことを言いながら、カラスバは小さいキョウヤを優しく抱き上げた。小さい手でぎゅうとカラスバの首に手を回して抱きしめながら、小さいキョウヤはキラキラと目を輝かせて渾身の満面の笑みで言い放った。
「おれね、からすばしゃんがいいな!」
「「あ?」」
思わず残る二人のキョウヤから恐ろしく低い声が出たが、またもやずきゅん!!と心臓を撃ち抜かれたカラスバには全く聞こえていなくて。
「なんや欲のないやっちゃなぁ、そんなんでええんか?」
「うん!」
「そんなんいくらでも、」
「「まてまてまてまて!!」」
蕩けるような優しい笑顔のまま小さいキョウヤを連れて歩き出そうとしたのを、キョウヤと大人のキョウヤがとうとうタッグを組んで止めた。
「騙されてます!!騙されてますよカラスバさん!!」
「そいつ猫被ってるから!本人である俺たちが言うんだから間違いないでしょ!?」
「はあ?こーんな天使捕まえて何が騙されてますや、オマエらの心が穢れとるだけやろ」
「いやその天使いまあなたに見えないところで俺たちに中指立ててますけど!?」
「そんなことしてへんやんな?」
「うん」
「ほら」
「ほらじゃなくて!!」
だめだ。完全に騙されてる。
カラスバに見えないところで勝ち誇ったような顔をして、ひっそり中指を立てているクソガキのどこが天使なのか。しかもカラスバの目が向いた瞬間だけまたうりゅうりゅとわざとらしくあざとい表情で「ぼくなにもしりましぇん」みたいな顔をしているのである。我ながら可愛く無さ過ぎる。
びきりと青筋を立てながらもなんとか説得しようとする大人のキョウヤ。しかも彼は彼でカラスバの腰に手を回したり肩や頬に触れたり頭を撫でたり、やりたい放題である。
多感なお年頃であり、カラスバに初恋&片思い真っ最中の現実のキョウヤは、堪忍袋の緒が切れてとうとう異次元空間に響き渡るほどの声で叫んだ。
「カラスバさんは!!!俺のだから!!!!!散れーー!!!!」
ハラモチエネルギーが尽きたようだ! ▼
暴走メガシンカの兆候もなく、中にいるポケモンの強さも不明。というよりは、ポケモンの気配が感じられない。こういうことはまれによくあるので、警戒だけは怠らないようにとキョウヤとカラスバは顔を見合わせて強くうなずき合って異次元空間に飛び込んだのだが。
その、5分後。
「俺のカラスバさんだから!!」
「いやいや俺のって…付き合ってもないくせに」
「からすばしゃん、からすばしゃん!」
右にキョウヤ、左にでかいキョウヤ、正面に小さいキョウヤ。
「…なんやここ、天国か…?」
カラスバは思わず真剣な顔でそう一人ごちた。
飛び込んだ異次元空間は、いつも通り暗い空に彩度の低いミアレだった。事前調査の通り暴走メガシンカはおろか、ポケモンの気配がない。
「…静かですね」
「やな。どういう潜在意識か分からんけど…しっ」
「っ!」
建物の影から通りの様子をうかがっていたカラスバが鋭くそういうのに合わせてキョウヤは息をひそめる。それと同時に聞こえてきたのは、たったった、とひどく軽い人の足音。それこそ、子供のような。
ミアレに住む子供たちの潜在意識だろうか、なんて思っていた2人だったが、その子供が角を曲がって姿を現した瞬間に言葉を失った。
「…キョウヤ…?」
「お、俺!?」
見たことはないけれどあまりにも隣に立つ男の面影がある顔立ちの子供。吊り目はくりくりと大きく、淡く色づいたまろい頬は餅のよう。全体的に顔のパーツが今よりも丸っこくて、ついでに言えば等身も低く、なんだかころころしている。その子供は2人の姿を視界に認めると、大きな目をさらに大きく見開いて、それから無邪気な笑みを浮かべて駆けだしてきた。
「あ!からすばしゃんだ~!」
「ウッ!!」
「あ、ちょっとカラスバさん!?」
ずきゅんと狙撃された音をキョウヤは確かに隣で聞いた。胸を押さえるカラスバの元へ、幼いキョウヤらしき子供が駆け寄ってその腰にひしっと抱き着く。
「からすばしゃん!あいたかったです!」
「ぐっ…う…なんやこのかわいらしい生き物は…」
「おれ?おれね、きょうやっていうの!」
「クソ!まじで俺だった!」
思わず頭を抱えるキョウヤと、すでに骨抜きにされつつあるカラスバ。そんな二人の背後から忍び寄る影が一つ。
「妬けるなぁ、俺も混ぜてよ」
「「!?」」
ぬっ、と上から覗き込むようにして現れたのは長身の男。それも妙に見覚えがある顔をしている。知っている男よりもさらに幼さが抜けて成熟した大人の、精悍な顔立ちをしている。今の快活さよりも柔和な雰囲気が色濃く滲んでいるのは、歳を重ねているからだろうか。目線も高くなり、体格も一回り程大きくなってがっしりしているような。それでも面影は変わらない。が、思わず尋ねずにはいられなかった。
「え、と…どちらさん…?」
「わかんない?寂しいなあ、俺ですよ。俺もキョ・ウ・ヤ。未来のね?」
そう言って笑った男――未来のキョウヤは、やたらと色気の滲む目元を緩ませてふわりとカラスバに笑いかけた。
そして冒頭に至る。
なぜだか分からないが同じ場所に集結してしまった幼いキョウヤと今のキョウヤ、そして未来のキョウヤは、あろうことか3人が3人とも、やけにカラスバに懐いているようで。それぞれが構うせいで、いつの間にやら3人のキョウヤがカラスバを取り合っていがみ合うようになっていたのだ。
「この頃のカラスバさん、可愛いなあ」
するり、ごくごく自然な仕草で大人のキョウヤの長い腕がカラスバの腰を抱き寄せた。油断していたカラスバはぐ、と大人のキョウヤの方へ体が寄せられて、その厚い胸板にこつんと肩を預けることになる。ふわりと鼻腔を擽る爽やかさと甘さが混ざった香りに思わずぶわりと頬を染めながら、慌ててカラスバは足を踏ん張った、が、びくともしない。それに少し驚きながらもカラスバは眉間にしわを寄せて渋面を作った。
「は、はぁ?こんなおっさん相手に可愛いとか、ないやろ…アホちゃう」
「ふふ、照れてるの?素直じゃないところもかわいい」
「~っ、キョウヤのくせに…!」
余裕に満ちた顔でくすりと笑われて調子が狂う。なんだか勝てそうにない雰囲気に内心でうろたえていると、反対側からキャンキャン吠える声がして、ぐっと大人のキョウヤと逆側へ腕を引かれた。
「おい、カラスバさんに馴れ馴れしく触るなよ!」
キッと眦を吊り上げて刺々しい声音で噛みついたのは、カラスバがよく知るキョウヤだった。この険しい表情はあんまり見たことないな、なんて感心していると、自分を挟んで2人のキョウヤのにらみ合いが始まった。
「なに、これくらいのスキンシップ普通でしょ?自分が勇気無くてできないからって八つ当たりするのやめなよ、ダサいよ?」
「~~この…!」
ふん、と鼻で笑う未来の自分に怒りで顔を赤くしながらキョウヤが口をぱくぱくさせていた、その時。
「からすばしゃん、おれじゃだめなの…?」
正面で抱き着いている小さいキョウヤがうりゅ…と大きな目を潤ませてカラスバを見上げた。カラスバは思わずぴしりと固まった。自分を挟んで言い合いをする2人のキョウヤの声も耳に入らなくなった。
――殺人級の可愛さだ。オレが悪い人間ならこのまま攫っているところだろう。この天使はオレが守ってやらなくては。
そんな風に思いながらカラスバは自分の顔を片手で覆い、眉間にしわを寄せて一息ついた。それからかちゃりと眼鏡を押し上げて、それから努めて冷静にこう言った。
「はぁーーー…
オマエがナンバーワンに決まっとるやろがい。おいで」
「わーい!!!」
陥落。即落ちである。
「「あ、おいこらクソガキ!!」」
「こんな小さい子になんちゅーこと言うねん、このドアホ。どつきまわすぞ」
「「どっ…」」
目も合わせずに早口にそう言い捨てられて、2人のキョウヤは言葉を失って固まった。歳は違えど同じキョウヤ。思考回路が同じであった。
石と化した2人を無視して、カラスバはふにゃりと柔らかい笑みを浮かべてその場にしゃがみ込むと、小さいキョウヤに視線を合わせた。
「ちっちゃいキョウヤもほんまかわええなぁ、なんやこのほっぺ。ふわふわのもちもちやん」
「えへへ、からすばしゃんくすぐったいよ~」
「なんや柔らかすぎてマシュマロか思たわ」
「おれマシュマロじゃないもん」
「あ、パピモッチの間違いやったなぁ」
「もう、ちがうよ!」
くすくす笑いながらからかうカラスバと、ぷくりと頬を膨らませる可愛らしいキョウヤ。絵面は大変ほほえましいが、2人のキョウヤは知っている。
――この頃の俺、こんなに可愛くない。これは完全に猫被ってるし、ぶりっこしてる。
そう言いたくてもカラスバは小さいキョウヤにすっかり心を奪われている様子だった。何を言っても聞いてくれなさそうな空気がある。それどころか先ほどのクソガキ発言で2人への好感度は間違いなくガタ落ちだった。
何とかして伝えたい、そこのガキの本性を。そんな風に思いながら手をこまねいているうちに、カラスバは可愛くてたまらないとでも言いたげな顔でこう言った。
「ふふ、堪忍な。拗ねんといてや。お詫びにほしいもんなんでも買ぉたるさかい」
「…なんでも?」
いま、なんでもって言ったよね?
そんなお決まりの台詞が頭をよぎり、残る二人のキョウヤが顔をしかめるが、カラスバは気付かない。
「なにがほしい?世界の半分買ぉたろか?うん?」
なんてどこぞの竜王…いや魔王のようなことを言いながら、カラスバは小さいキョウヤを優しく抱き上げた。小さい手でぎゅうとカラスバの首に手を回して抱きしめながら、小さいキョウヤはキラキラと目を輝かせて渾身の満面の笑みで言い放った。
「おれね、からすばしゃんがいいな!」
「「あ?」」
思わず残る二人のキョウヤから恐ろしく低い声が出たが、またもやずきゅん!!と心臓を撃ち抜かれたカラスバには全く聞こえていなくて。
「なんや欲のないやっちゃなぁ、そんなんでええんか?」
「うん!」
「そんなんいくらでも、」
「「まてまてまてまて!!」」
蕩けるような優しい笑顔のまま小さいキョウヤを連れて歩き出そうとしたのを、キョウヤと大人のキョウヤがとうとうタッグを組んで止めた。
「騙されてます!!騙されてますよカラスバさん!!」
「そいつ猫被ってるから!本人である俺たちが言うんだから間違いないでしょ!?」
「はあ?こーんな天使捕まえて何が騙されてますや、オマエらの心が穢れとるだけやろ」
「いやその天使いまあなたに見えないところで俺たちに中指立ててますけど!?」
「そんなことしてへんやんな?」
「うん」
「ほら」
「ほらじゃなくて!!」
だめだ。完全に騙されてる。
カラスバに見えないところで勝ち誇ったような顔をして、ひっそり中指を立てているクソガキのどこが天使なのか。しかもカラスバの目が向いた瞬間だけまたうりゅうりゅとわざとらしくあざとい表情で「ぼくなにもしりましぇん」みたいな顔をしているのである。我ながら可愛く無さ過ぎる。
びきりと青筋を立てながらもなんとか説得しようとする大人のキョウヤ。しかも彼は彼でカラスバの腰に手を回したり肩や頬に触れたり頭を撫でたり、やりたい放題である。
多感なお年頃であり、カラスバに初恋&片思い真っ最中の現実のキョウヤは、堪忍袋の緒が切れてとうとう異次元空間に響き渡るほどの声で叫んだ。
「カラスバさんは!!!俺のだから!!!!!散れーー!!!!」
ハラモチエネルギーが尽きたようだ! ▼