『トモダチゲーム』二次創作(小説)
僕は目が覚めた時に思ったんだ。
白い天井。白い壁。巻かれた白い包帯。白に染まった世界。何もないような。
その真っ白な世界の中で、異質な黒い髪のぼさぼさ頭の持ち主の存在を、片方はともかくとして。
「聡音……?」
腕組みをして、ある意味威圧的に僕を見下ろすような感じで傍に突っ立っている美笠天智には、むしろ観察されているようで気にはならなかった。
手術後の経過を見守る医師のような真面目なところがあったから。
もうひとり、僕の腰に近い位置に当たるようなところで椅子に腰かけ、ベッドに顔を伏せて半ば寝ているようにうとうととしている彼女の存在が。
「おい、聡音、どうしたんだ? なんだって僕のところにいるんだ? お前には父親がいるだろ? 大好きな……義理でもなんでも大切なお父さんがさぁ! お前にとって僕よりも気になる相手がいるじゃんか! それなのに、何してるんだよ、こんなとこで! こら、起きろよ、聡音!」
ゲームクリアならず、リタイアの、敗北組だ。
それまでに周囲の状況は認識して把握した。
覚悟はしていたものの完全な鳥籠入り。
海童聡音の父親も、負傷している上に、同じ状況のはず。
「んーうぅ……」
起き出した聡音に苛立ちを感じる、眠たそうにのんびりと目をこすってる場合かよ、聡音。
「紫宮京……」
ああ、そうさ、僕は京だよ。お前とご同様に共に落ちた仲間さ。あんなことになるとは思ってなかったけど。それでも一緒に過ごした間柄だよ。皮肉なことにさ。
手を強く握られて握り返す。
手に力がまったく入らないんだ。
まだ駄目なんだ。
それに応えられないんだよ。
結局お前を助けられもしなかった僕なんだ。
「……京……」
聡音がまだ眠たそうにとろんとしてそれでもニカッとして笑う。
「京はさ、私がいないとダメなんだよ、きっと。わからないんでしょ。だったらそれでいいんだよ」
「聡音……」
「私にはわかるから。だから私がここにいることに決めた、それじゃダメ?」
逡巡、迷って、僕は深々考えた結果諦めてうなずく。
「ああ、まぁ、お前がそういうんならさ」
『はぁ』と大袈裟にため息を吐いてみせてどうでもよさそうにしてみせる。
「パパのことなら心配いらないよ。信頼してるもん。何かあることなんて絶対にないし!」
確信を持ってそのことについて自信ありげに誇らしげに微笑んでみせる聡音を見て初めて眩しいとさえ思ってしまう。
「はいはい、それはよかったですね、フーンッ!」
そう言い放って僕は頭の後ろで手を組んで頭を乗せて『アイタタタ……』と顔を歪める。
あちこち打ったからなのか体中が痛い。
少し動くだけで激痛が走る中、少なくともひとりきりじゃなくてよかったなぁなんて、ほんのちょっとだけ思う、……かもしれない。
少なくとも一緒に同じゲームで戦ったふたりと共にいて。
まだここにいる僕と一緒に。
(終わり)