メモ帳
📝キャス影弓・学パロ
2019/04/17 00:52Fate/FGO
保健室のカーテンをゆっくりと開けると眠り姫も呆れる程、熟睡している褐色の男子学生の頬を撫でるのもまた男子学生である。
普通ならば一部の女性しか喜ばない場面であろうが、これがどちらも系統の違う美男子だと絵になるのだから世の中は分からないものだ。
「狸寝入りしてねぇで起きろ、アーチャー」
「……ふふ、バレていたか?おはよう、キャスター」
「たわけ、もう昼だぞ」
寝惚けた事を言う衛宮士貴(しき)、通称アーチャーが今日も保健室に居ると言うので様子を見る為にキャスター・F・フーリンは保健委員として彼にとっては鬼門の保健室へと訪れていた。
そんなベッドの縁に座るキャスターの首元にスルリと流れるような動きで腕を回すとアーチャーは抵抗される事など考えていない様子で彼の口元に唇を寄せる。
何故ならば彼らは恋人同士なのだから当然だろう。
そんなアーチャーに呆れながらもキャスターも抵抗はせずに入り込んでくる舌を宥めてやるように絡める。
ちゅっちゅっと小さく舌を絡めた後、公共の場だと言う事は頭が働いているのか顔が離れていく。
「会えなくて寂しかったぞ、キャスター」
愛おしそうに頬に触れてくるキャスターの手の甲をアーチャーも愛おしそうに撫でて微笑んでくる。
口の端から零れる唾液を拭ってやりながらキャスターは尋ねてみる事にした。
一応、病人の筈なのだが、あまりにも口づけに積極的すぎる。
故に嫌な予感はしていた。
「お前…体調が悪かったんじゃないのか?」
「あぁ、仮病だ」
なんでもない事のように。
そんな事よりも続きがしたいと着崩して余った袖を気にもせずに頬に手をかけて顔を近付けてくるアーチャーを容赦なく掴む。
毎度の事とはいえ一応、毎度、心配している身にもなって欲しい。
誰の為に保健委員になったと思っているのだろうか。
「ちゃんと授業に出ましょうね〜〜〜??」
「ぶっ……ふぁ〜〜〜い」
そんなキャスターの怒りも理解しているのか、ふざけているのか。
アーチャーは自分の頬を潰してくるキャスターに抵抗する事なく返事を返してくる。
すると保健室の主こと保健室の担当教師である言峰綺礼がカーテンを開いて、苦言と共に現れる。
この男こそキャスターに、いや、兄弟で保健室は鬼門だと言わしめている張本人であった。
「話は済んだかね、キャスター?用が済んだのならば早々にどきたまえ」
「……ふん、言われるまでもねぇよ、行くぞ」
「あぁ、分かった。神父、今日も世話になった」
「いや、君ならばいつでも来ると良い……そこの彼とね」
「ちっ!誰が好き好んで来るかよ」
学校の隣にある教会の人間と言う事もあって神父と呼ばれている言峰の言葉や眼差しに聞こえていると分かっていても、キャスターを知る者ならば驚くような気を使う事もしない態度でアーチャーの腕を引く。
やはりそんなキャスターの力に抗う事なく、引きずられるよう退室して行く。
するとアーチャーにとって可愛い弟こと衛宮士郎が、保健室前の廊下で荷物を抱えて待っていた。
その健気さに頬を緩めて抱き締めてやろうとする。
「士郎ー!」
「はい、いいから鞄持って」
「あう……」
しかし士郎は成長するにつれて抱き締めさせてくれなくなってしまった。
今日もスルリと無駄のない動きで避けられてしまう。
しかも嫌味付きである。
「はぁ、兄さん、やはり今日もサボりだったか」
「あれ?どうした、士郎もサボり?」
「何言ってるんだ、今日はテスト週間で今日は早く終わる日だよ」
「へーそうなのか」
「またキャスターさんに迷惑かけて……一体、いつになったらキャスターさんに相応しい態度になるのやら」
「はいはい、そうだねー」
ぼんやりと弟である衛宮士郎の小言を右から左へ受け流しながら、鞄を背負い直して先へと行ってしまったキャスターを追いかける。
長年生まれてから兄弟ではないのだ。
アーチャーは士郎の嫌味が全く効かない唯一の相手なのだ。
流すのもお手の物である。
むしろそんな弟よりもキャスターの姿を捉える方が重要である。
「あ、いたいた!キャスター、私を置いていくな!」
「お前が士郎と話してたから邪魔かと思ってよ」
「そんな事ある筈ないだろ?」
「おーい……俺も居るんですけど?」
「あ、ランサー」
「今、気付いたみたいに反応すんじゃねぇー!」
この目くじらを立ててアーチャーに怒鳴るのはキャスターの弟であり、士郎の同級生のランサー・F・フーリンである。
顔が双子のように似ているのに、どちらも違ってカッコイイと評判なのだがアーチャーにとってはキャスターの弟程度でしかない。
それはランサーも気にしていないのか、文句を言わないが、この男、茶化すと大変おかしいのだ。
故にキャスターと共に茶化す事を止められない。
「兄・さ・ん!ランサーで遊んでないで靴を履いてくれ!」
「俺でってなんだ!衛宮!」
「なんだ?私は何も間違えていないぞ」
「んだと!?」
可愛い弟たちが愛らしく言い合いをしている姿を後ろから眺めるような距離感で、アーチャーとキャスターは共にゆっくりと歩いて帰宅する。
どちらからも言わずに、しかし離れ難いと考えているのか。
別れ道である十字路までの道のりを、こっそりと目立たないように手を繋いでゆっくりと歩くのだ。
普段の態度のアーチャーからは想像できないと言われ兼ねない程、隠れるように手を繋ぐ。
この秘め事は前を騒いで歩く弟たちにも悟られないように手を絡めて、十字路までに離れていく。
その毎日なのだが寂しさは拭えない。
「それじゃあ今日も此処で。また後でな、ランサー」
「おう!後でなー!数学は頼んだ!」
「君こそ生物はしっかりと頼むぞ?」
どうやらアレ程、口喧嘩を繰り広げて置きながら、後で勉強会をするらしい。
この切り替えの速さが彼らの長所と言えるかもしれない。
その速さは身内のアーチャーでも少々、驚く時がある。
などと考えていると勝手な兄を持っているせいか行動力のある弟たちは早々に帰路につく。
その間もアーチャーもキャスターも恋人ととの少しの時間も惜しむように無駄にしない。
「おや、ランサー君と遊ぶなんて士郎も隅におけないな」
「おいおい、うちの弟で遊ぶなよ?アレは気を抜くと噛み付く」
「ふふ、そんなに心配せずとも私には君だけだぞ?キャスター」
「あぁ、分かってるって、アーチャー」
互いにそれとなく言葉を切って、ひとつ口づけを交わす。
そしてお互いに背を向けて、呆れて先に家へと歩く弟を追いかける。
ここまでがキャスターとアーチャーの恒例なのだ。
そして、そんな帰るキャスターを姿が見えなくなるまで見送るのがアーチャーの小さな秘密である。
きっとキャスターも気付いていないだろう。
見送るアーチャーの頬から耳にかけて燃えるように赤く染まっている事を。
END?
普通ならば一部の女性しか喜ばない場面であろうが、これがどちらも系統の違う美男子だと絵になるのだから世の中は分からないものだ。
「狸寝入りしてねぇで起きろ、アーチャー」
「……ふふ、バレていたか?おはよう、キャスター」
「たわけ、もう昼だぞ」
寝惚けた事を言う衛宮士貴(しき)、通称アーチャーが今日も保健室に居ると言うので様子を見る為にキャスター・F・フーリンは保健委員として彼にとっては鬼門の保健室へと訪れていた。
そんなベッドの縁に座るキャスターの首元にスルリと流れるような動きで腕を回すとアーチャーは抵抗される事など考えていない様子で彼の口元に唇を寄せる。
何故ならば彼らは恋人同士なのだから当然だろう。
そんなアーチャーに呆れながらもキャスターも抵抗はせずに入り込んでくる舌を宥めてやるように絡める。
ちゅっちゅっと小さく舌を絡めた後、公共の場だと言う事は頭が働いているのか顔が離れていく。
「会えなくて寂しかったぞ、キャスター」
愛おしそうに頬に触れてくるキャスターの手の甲をアーチャーも愛おしそうに撫でて微笑んでくる。
口の端から零れる唾液を拭ってやりながらキャスターは尋ねてみる事にした。
一応、病人の筈なのだが、あまりにも口づけに積極的すぎる。
故に嫌な予感はしていた。
「お前…体調が悪かったんじゃないのか?」
「あぁ、仮病だ」
なんでもない事のように。
そんな事よりも続きがしたいと着崩して余った袖を気にもせずに頬に手をかけて顔を近付けてくるアーチャーを容赦なく掴む。
毎度の事とはいえ一応、毎度、心配している身にもなって欲しい。
誰の為に保健委員になったと思っているのだろうか。
「ちゃんと授業に出ましょうね〜〜〜??」
「ぶっ……ふぁ〜〜〜い」
そんなキャスターの怒りも理解しているのか、ふざけているのか。
アーチャーは自分の頬を潰してくるキャスターに抵抗する事なく返事を返してくる。
すると保健室の主こと保健室の担当教師である言峰綺礼がカーテンを開いて、苦言と共に現れる。
この男こそキャスターに、いや、兄弟で保健室は鬼門だと言わしめている張本人であった。
「話は済んだかね、キャスター?用が済んだのならば早々にどきたまえ」
「……ふん、言われるまでもねぇよ、行くぞ」
「あぁ、分かった。神父、今日も世話になった」
「いや、君ならばいつでも来ると良い……そこの彼とね」
「ちっ!誰が好き好んで来るかよ」
学校の隣にある教会の人間と言う事もあって神父と呼ばれている言峰の言葉や眼差しに聞こえていると分かっていても、キャスターを知る者ならば驚くような気を使う事もしない態度でアーチャーの腕を引く。
やはりそんなキャスターの力に抗う事なく、引きずられるよう退室して行く。
するとアーチャーにとって可愛い弟こと衛宮士郎が、保健室前の廊下で荷物を抱えて待っていた。
その健気さに頬を緩めて抱き締めてやろうとする。
「士郎ー!」
「はい、いいから鞄持って」
「あう……」
しかし士郎は成長するにつれて抱き締めさせてくれなくなってしまった。
今日もスルリと無駄のない動きで避けられてしまう。
しかも嫌味付きである。
「はぁ、兄さん、やはり今日もサボりだったか」
「あれ?どうした、士郎もサボり?」
「何言ってるんだ、今日はテスト週間で今日は早く終わる日だよ」
「へーそうなのか」
「またキャスターさんに迷惑かけて……一体、いつになったらキャスターさんに相応しい態度になるのやら」
「はいはい、そうだねー」
ぼんやりと弟である衛宮士郎の小言を右から左へ受け流しながら、鞄を背負い直して先へと行ってしまったキャスターを追いかける。
長年生まれてから兄弟ではないのだ。
アーチャーは士郎の嫌味が全く効かない唯一の相手なのだ。
流すのもお手の物である。
むしろそんな弟よりもキャスターの姿を捉える方が重要である。
「あ、いたいた!キャスター、私を置いていくな!」
「お前が士郎と話してたから邪魔かと思ってよ」
「そんな事ある筈ないだろ?」
「おーい……俺も居るんですけど?」
「あ、ランサー」
「今、気付いたみたいに反応すんじゃねぇー!」
この目くじらを立ててアーチャーに怒鳴るのはキャスターの弟であり、士郎の同級生のランサー・F・フーリンである。
顔が双子のように似ているのに、どちらも違ってカッコイイと評判なのだがアーチャーにとってはキャスターの弟程度でしかない。
それはランサーも気にしていないのか、文句を言わないが、この男、茶化すと大変おかしいのだ。
故にキャスターと共に茶化す事を止められない。
「兄・さ・ん!ランサーで遊んでないで靴を履いてくれ!」
「俺でってなんだ!衛宮!」
「なんだ?私は何も間違えていないぞ」
「んだと!?」
可愛い弟たちが愛らしく言い合いをしている姿を後ろから眺めるような距離感で、アーチャーとキャスターは共にゆっくりと歩いて帰宅する。
どちらからも言わずに、しかし離れ難いと考えているのか。
別れ道である十字路までの道のりを、こっそりと目立たないように手を繋いでゆっくりと歩くのだ。
普段の態度のアーチャーからは想像できないと言われ兼ねない程、隠れるように手を繋ぐ。
この秘め事は前を騒いで歩く弟たちにも悟られないように手を絡めて、十字路までに離れていく。
その毎日なのだが寂しさは拭えない。
「それじゃあ今日も此処で。また後でな、ランサー」
「おう!後でなー!数学は頼んだ!」
「君こそ生物はしっかりと頼むぞ?」
どうやらアレ程、口喧嘩を繰り広げて置きながら、後で勉強会をするらしい。
この切り替えの速さが彼らの長所と言えるかもしれない。
その速さは身内のアーチャーでも少々、驚く時がある。
などと考えていると勝手な兄を持っているせいか行動力のある弟たちは早々に帰路につく。
その間もアーチャーもキャスターも恋人ととの少しの時間も惜しむように無駄にしない。
「おや、ランサー君と遊ぶなんて士郎も隅におけないな」
「おいおい、うちの弟で遊ぶなよ?アレは気を抜くと噛み付く」
「ふふ、そんなに心配せずとも私には君だけだぞ?キャスター」
「あぁ、分かってるって、アーチャー」
互いにそれとなく言葉を切って、ひとつ口づけを交わす。
そしてお互いに背を向けて、呆れて先に家へと歩く弟を追いかける。
ここまでがキャスターとアーチャーの恒例なのだ。
そして、そんな帰るキャスターを姿が見えなくなるまで見送るのがアーチャーの小さな秘密である。
きっとキャスターも気付いていないだろう。
見送るアーチャーの頬から耳にかけて燃えるように赤く染まっている事を。
END?
追記
ーーおまけーー
「まーだアイツと付き合ってんのか?兄貴」
「なんだ?お前もいい加減、聞き分けがなってないな。アーチャーの事は俺自身で決めた事だと言ったろ」
「あー気にすんな、こっちの都合上で無視出来ねぇだけ」
何度、繰り返したか分からない弟の言葉に溜め息を零すがランサーの苦虫を潰したような表情にアーチャーの評判も知っているので納得もしていた。
そして合点が行く。
ランサーが気にかけているアーチャーの弟の衛宮士郎の事で、アーチャー自身も無視出来ないと言いたいらしい。
「あぁ、士郎か」
「くそっ!簡単に呼び捨てにすんな!」
「なんだ?羨ましいのか?意気地無しめ」
「うっせぇ!!!」
我が弟にも可愛らしい所が残っていたのかと赤くなる弟に機嫌が治って行くのを感じつつ、今はどのようにアーチャーと2人でランサーを弄ってやろうかと思い、アーチャーを誘う為の連絡を入れようと携帯を取り出す。
弟の反応が面白いのも然ることながら、さっき別れた恋人と会えるのだから頬が緩むのは仕方ないだろう。
END!
「まーだアイツと付き合ってんのか?兄貴」
「なんだ?お前もいい加減、聞き分けがなってないな。アーチャーの事は俺自身で決めた事だと言ったろ」
「あー気にすんな、こっちの都合上で無視出来ねぇだけ」
何度、繰り返したか分からない弟の言葉に溜め息を零すがランサーの苦虫を潰したような表情にアーチャーの評判も知っているので納得もしていた。
そして合点が行く。
ランサーが気にかけているアーチャーの弟の衛宮士郎の事で、アーチャー自身も無視出来ないと言いたいらしい。
「あぁ、士郎か」
「くそっ!簡単に呼び捨てにすんな!」
「なんだ?羨ましいのか?意気地無しめ」
「うっせぇ!!!」
我が弟にも可愛らしい所が残っていたのかと赤くなる弟に機嫌が治って行くのを感じつつ、今はどのようにアーチャーと2人でランサーを弄ってやろうかと思い、アーチャーを誘う為の連絡を入れようと携帯を取り出す。
弟の反応が面白いのも然ることながら、さっき別れた恋人と会えるのだから頬が緩むのは仕方ないだろう。
END!