メモ帳
📝ホットケーキ三騎士
2019/04/17 00:46Fate/FGO
「それじゃあアーチャー!セイバーの事、お願いね」
「承知した」
凛に呼びつけられ入りたくもない衛宮邸へと足を踏み入れたアーチャーは玄関先で凛に慌しく口頭でセイバーと留守番を頼まれた。
曰く衛宮士郎は出掛けており、凛も桜も学校の用事、それに伴い藤村大河も学校へ。
残るライダーもアルバイトで家を留守にしており、留守番はセイバーだけでも出来るが家事となると勝手が違ってくる。
そこで家事が特技で趣味のアーチャーに白羽の矢が立ったのだ。
「アーチャー、何か私に出来る事はあるでしょうか?貴方はあまりこの家に立ち寄らないので分からない事もあるのでは?」
「なに、家事など大して変わらんさ。セイバー君はいつも通り過ごしていてくれ」
「そう…ですか?ならばお言葉に甘えて」
基本的に家事はやらないのだろう。
セイバーはお茶をお供に煎餅を齧ってスラリとした背筋でテレビを見ている。
それを確認すると、さて、と浸けられた食器に向き直り、服の袖を捲る。
暫くカチャカチャと食器同士がぶつかり合う音とテレビから流れるタレントの声が賑やかに流れる。
するとそんな平和な一コマに入り込むようにピンポーンとインターホンの呼び鈴が鳴る。
「む、客か」
「私が出ましょう。アーチャーはそのまま洗い物を」
「ん?そうか、では宜しく頼む」
6人分の食事を終えた食器はそう簡単には終わらない上に濡れた手を考え、暇も持て余し、すっかり衛宮邸の住人となったセイバーが出るのが無難だろうと切り替えて食器に集中する。
するとセイバーは客を入れたらしく何やら会話をしながら居間へと戻ってきた。
「貴方が直々に魚を持ってくるとは珍しい事もあるものですね、ランサー」
「昼を食いっぱぐれてなー等価交換って奴だよ」
「なるほど……今夜の夕ご飯も楽しみです!」
「うん、会話しようなセイバー」
どうやら客と言うのはランサーだったらしく見事、魚を釣り上げたらしい様子にアーチャーはよくあの軽装備で釣れたものだ、とか、どうせタコだろう、とか考えつつ目の前の汚れに集中する。
そういえばそろそろ午後3時。
衛宮邸ではおやつの時間であるが、セイバーはアーチャーへ告げるのが気まずいのかソワソワとしている。
「何をソワソワしてんだ?おーい坊主~セイバーが……ってテメェかよ!アーチャー」
「あの未熟者をどうやったら私と誤認するのか是非ご教授してもらいところだが、魚はそのまま冷蔵庫の前に置いておけ、ランサー」
「あー……へいへいっと、そうそう!なんか食わせてくれよ」
「ふむ……ここの住人ではないが空腹の者を放っておくのも居心地が悪い、セイバーと大人しく待っていろ」
何やらランサーが犬かガキ扱いしてねぇーか?とか不機嫌そうにブツブツ言いつつ、机へと戻って行くのを確認した後、濡れた手を拭いて台所を探るとホットケーキミックスを見つけたので、これならば腹も膨れるだろうと思い、片隅に置かれていたエプロンを着て調理に取り掛かる。
そんな後ろ姿をランサーが珍しそうに眺め、セイバーが喜びと期待で顔をほころばせて見つめている事には気付かない。
「何か作っているようですね!」
「おー飯を頼んだからな」
「……ランサー貴方は何を見ているのですか?」
「あ?あー…エプロンって意外と浪漫つーの?なんか色々と有りだと思ってな」
「色々と有り?」
「おい、出来たぞ……って!君たちは何を見ている?そんなに暇ならば手伝いの一つもしたまえ」
皿に盛り付けた所で後ろを振り返ったアーチャーは少しギョッとした表情を見せたが、すぐに呆れたように目を細めて台所に消える。
そんなアーチャーの嫌味に答える事もなく、セイバーはそそくさと台所へ向かうとアーチャーは紅茶の用意をしていたので、2人分のホットケーキとジャムを取り出して運ぶ。
しかし先程までとは違い、セイバーの表情は深刻だ。
「ん?どうしたセイバー」
「ホットケーキが2人分しかないのです……」
「あぁ、私の分は作っていないのだよ」
「え?そうなのですか?ど、どうしましょう……!」
「材料の問題だ、気にするな」
「だとよ、気にせず食おうぜーセイバー!」
暫し申し訳なさそうにアーチャーを見た後、アーチャーがどこ吹く風と言った表情で用意した紅茶を飲む姿を確認したセイバーは、では頂きますと丁寧に手を合わせてフォークを手に取る。
ランサーも旨そうだなぁと頬を緩ませて、ホカホカふっくらと湯気を立てているホットケーキにフォークを突き入れる。
一口食べて瞳を輝かせ、二口目、三口目と大切そうに丁寧に食べていくセイバーにアーチャーは人知れず、小さく口をほころばせる。
それを見ていたランサーは何を思ったのか、残っていたホットケーキを一欠片アーチャーの口元へと差し出してくる。
「何かね?腹が膨れたのか?ランサー」
「ちげーよ!折角作ったんだ、テメェでも一口くらい食っとけよ」
「む、いらな……ふむ」
ほれほれ~と何処か楽しげにホットケーキで唇をつついてくる。
食べ物で遊ぶなと考えつつも口を開けば、口の中へと突っ込まれそうだと考えたアーチャーは素直に差し出されたホットケーキにかぶりつく。
「お!?」
「あ!!」
何やら左右から驚いた声や喜びの声が聞こえてきて、目元が熱くなってくるのを感じながら早々に咀嚼して紅茶で流し込む。
一杯だけ砂糖を入れたが無事にふんわりと焼きあがって良い塩梅だと自画自賛する。
するとセイバーは何やら悔しげに綺麗に空になっている皿を睨みつけており、ランサーは嬉しそうに残りのホットケーキを食べている。
するとセイバーがティーカップを差し出してきた。
「アーチャー!紅茶をどうぞ!」
「は?いや、自分のがあるが…」
「うぐっ」
「残念だったな~騎士王殿~ほれ、アーチャーもう一口食えよ」
「いらん」
「卑怯ですよ!ランサー!」
差し出してくるホットケーキを邪魔するようにアーチャーの顔の前にセイバーが手で遮る。
そんな邪魔にも気にしないのか差し出したままの体勢でランサーは楽しげに輝かんばかりの笑顔を向けてくる。
そんな珍しい場面に困惑気味に紅茶を飲んでいるとランサーの後ろの障子は開いて、呆れた表情の凛と困惑した士郎と何処か顔を赤らめている桜がおり、アーチャーは身を固くした。
すると絞り出すように凛の声が響いた。
「何してるの?貴方たち」
END
「承知した」
凛に呼びつけられ入りたくもない衛宮邸へと足を踏み入れたアーチャーは玄関先で凛に慌しく口頭でセイバーと留守番を頼まれた。
曰く衛宮士郎は出掛けており、凛も桜も学校の用事、それに伴い藤村大河も学校へ。
残るライダーもアルバイトで家を留守にしており、留守番はセイバーだけでも出来るが家事となると勝手が違ってくる。
そこで家事が特技で趣味のアーチャーに白羽の矢が立ったのだ。
「アーチャー、何か私に出来る事はあるでしょうか?貴方はあまりこの家に立ち寄らないので分からない事もあるのでは?」
「なに、家事など大して変わらんさ。セイバー君はいつも通り過ごしていてくれ」
「そう…ですか?ならばお言葉に甘えて」
基本的に家事はやらないのだろう。
セイバーはお茶をお供に煎餅を齧ってスラリとした背筋でテレビを見ている。
それを確認すると、さて、と浸けられた食器に向き直り、服の袖を捲る。
暫くカチャカチャと食器同士がぶつかり合う音とテレビから流れるタレントの声が賑やかに流れる。
するとそんな平和な一コマに入り込むようにピンポーンとインターホンの呼び鈴が鳴る。
「む、客か」
「私が出ましょう。アーチャーはそのまま洗い物を」
「ん?そうか、では宜しく頼む」
6人分の食事を終えた食器はそう簡単には終わらない上に濡れた手を考え、暇も持て余し、すっかり衛宮邸の住人となったセイバーが出るのが無難だろうと切り替えて食器に集中する。
するとセイバーは客を入れたらしく何やら会話をしながら居間へと戻ってきた。
「貴方が直々に魚を持ってくるとは珍しい事もあるものですね、ランサー」
「昼を食いっぱぐれてなー等価交換って奴だよ」
「なるほど……今夜の夕ご飯も楽しみです!」
「うん、会話しようなセイバー」
どうやら客と言うのはランサーだったらしく見事、魚を釣り上げたらしい様子にアーチャーはよくあの軽装備で釣れたものだ、とか、どうせタコだろう、とか考えつつ目の前の汚れに集中する。
そういえばそろそろ午後3時。
衛宮邸ではおやつの時間であるが、セイバーはアーチャーへ告げるのが気まずいのかソワソワとしている。
「何をソワソワしてんだ?おーい坊主~セイバーが……ってテメェかよ!アーチャー」
「あの未熟者をどうやったら私と誤認するのか是非ご教授してもらいところだが、魚はそのまま冷蔵庫の前に置いておけ、ランサー」
「あー……へいへいっと、そうそう!なんか食わせてくれよ」
「ふむ……ここの住人ではないが空腹の者を放っておくのも居心地が悪い、セイバーと大人しく待っていろ」
何やらランサーが犬かガキ扱いしてねぇーか?とか不機嫌そうにブツブツ言いつつ、机へと戻って行くのを確認した後、濡れた手を拭いて台所を探るとホットケーキミックスを見つけたので、これならば腹も膨れるだろうと思い、片隅に置かれていたエプロンを着て調理に取り掛かる。
そんな後ろ姿をランサーが珍しそうに眺め、セイバーが喜びと期待で顔をほころばせて見つめている事には気付かない。
「何か作っているようですね!」
「おー飯を頼んだからな」
「……ランサー貴方は何を見ているのですか?」
「あ?あー…エプロンって意外と浪漫つーの?なんか色々と有りだと思ってな」
「色々と有り?」
「おい、出来たぞ……って!君たちは何を見ている?そんなに暇ならば手伝いの一つもしたまえ」
皿に盛り付けた所で後ろを振り返ったアーチャーは少しギョッとした表情を見せたが、すぐに呆れたように目を細めて台所に消える。
そんなアーチャーの嫌味に答える事もなく、セイバーはそそくさと台所へ向かうとアーチャーは紅茶の用意をしていたので、2人分のホットケーキとジャムを取り出して運ぶ。
しかし先程までとは違い、セイバーの表情は深刻だ。
「ん?どうしたセイバー」
「ホットケーキが2人分しかないのです……」
「あぁ、私の分は作っていないのだよ」
「え?そうなのですか?ど、どうしましょう……!」
「材料の問題だ、気にするな」
「だとよ、気にせず食おうぜーセイバー!」
暫し申し訳なさそうにアーチャーを見た後、アーチャーがどこ吹く風と言った表情で用意した紅茶を飲む姿を確認したセイバーは、では頂きますと丁寧に手を合わせてフォークを手に取る。
ランサーも旨そうだなぁと頬を緩ませて、ホカホカふっくらと湯気を立てているホットケーキにフォークを突き入れる。
一口食べて瞳を輝かせ、二口目、三口目と大切そうに丁寧に食べていくセイバーにアーチャーは人知れず、小さく口をほころばせる。
それを見ていたランサーは何を思ったのか、残っていたホットケーキを一欠片アーチャーの口元へと差し出してくる。
「何かね?腹が膨れたのか?ランサー」
「ちげーよ!折角作ったんだ、テメェでも一口くらい食っとけよ」
「む、いらな……ふむ」
ほれほれ~と何処か楽しげにホットケーキで唇をつついてくる。
食べ物で遊ぶなと考えつつも口を開けば、口の中へと突っ込まれそうだと考えたアーチャーは素直に差し出されたホットケーキにかぶりつく。
「お!?」
「あ!!」
何やら左右から驚いた声や喜びの声が聞こえてきて、目元が熱くなってくるのを感じながら早々に咀嚼して紅茶で流し込む。
一杯だけ砂糖を入れたが無事にふんわりと焼きあがって良い塩梅だと自画自賛する。
するとセイバーは何やら悔しげに綺麗に空になっている皿を睨みつけており、ランサーは嬉しそうに残りのホットケーキを食べている。
するとセイバーがティーカップを差し出してきた。
「アーチャー!紅茶をどうぞ!」
「は?いや、自分のがあるが…」
「うぐっ」
「残念だったな~騎士王殿~ほれ、アーチャーもう一口食えよ」
「いらん」
「卑怯ですよ!ランサー!」
差し出してくるホットケーキを邪魔するようにアーチャーの顔の前にセイバーが手で遮る。
そんな邪魔にも気にしないのか差し出したままの体勢でランサーは楽しげに輝かんばかりの笑顔を向けてくる。
そんな珍しい場面に困惑気味に紅茶を飲んでいるとランサーの後ろの障子は開いて、呆れた表情の凛と困惑した士郎と何処か顔を赤らめている桜がおり、アーチャーは身を固くした。
すると絞り出すように凛の声が響いた。
「何してるの?貴方たち」
END