ハピハピLife
白を基調とした家具に木目調のフローリングは爽やかだが何処か生活感があまりない。
しかし同時に散らばった服のお陰で、何処か無機質さと人間臭さが入り混じったリビングはカオスだ。
その中心のソファーに青年が各3人、低い机を囲んで真顔、渋顔、呆れ顔。
まさに三者三様であった。
「うぅ、完全にやってしまった……!」
美しい銀の頭を抱えそうな程に深刻な声色、褐色で分かりづらくとも血の気の無い青年の名は衛宮祐巳(ゆみ)。
兄弟の中では三男であり、名前からアーチャーと呼ばれている。
そんな誰が見ても落ち込んでいるアーチャーの頭を呆れ顔だが優しく撫でる青年が居た。
アーチャーの顔にそっくりで彼の左目の眼帯、ボサボサのくすんだ銀髪の差が無ければ分からなかっただろう。
「クビにならなかっただけマシだろ〜」
励ます声色には何処か疲れを滲ませている彼の名も伝えねばなるまい。
次男の衛宮景(けい)と言って景をカゲと読み、転じてシャドウと呼ばれている。
頭を撫でられ、普段ならば弾く手を甘んじて受ける程にアーチャーがダメージを負っているのは分かるのだろう。
のんびりと優雅に紅茶を飲んでいた長男が口を開いた。
「はぁ……確かにシャドウの言う通りだな。遠坂に感謝の礼をしないと後が怖い」
失礼だが間違いではない言葉で渋顔を作り、どうしたものかと隠れた優しさを垣間見せている長男の名は衛宮シェロ。
彼は他の2人と顔立ちは似ているが髪型やファッションが違う事から親しい人間からオルタと呼ばれている。
そんな三者三様の面持ちで三人しかいない家族は男所帯でありながら所帯染みており、リビングで女子の井戸端会議さながらに机を囲んでお菓子を摘む。
最も殆ど食べているのはシャドウなのだが他の2人は慣れているのか、気にせず紅茶を啜る。
だが認識を改めるのであれば普段の彼らはリビングで仲良く集まるような事はしない。
逆に各自で食事を取り、朝の挨拶をしたら良い方な程に生活習慣はバラバラである。
しかし仲は分かりづらくとも良好だからこそ三男のアーチャーが直面した問題を兄弟仲良く悩んでいたのだ。
まず問題を説明するならばアーチャーを少し語らねばなるまい。
職業として撮影スタジオである「スタジオ遠坂」のスタッフをしているアーチャーが、現在の仕事に就いたきっかけは、当時は中学生だった遠坂凛と言う少女がしつこいナンパに絡まれていた所を助けた所からである。
当時のアーチャーは金銭面で警察学校や法学の大学を断念し、就活をしていたことを知った凛が己の親の仕事場の面接を勧めたのだ。
彼女は日本屈指の起業家である遠坂家の令嬢であったのだから当然である。
そして直々に推薦されたお陰で、今の仕事に就いたのだ。
無論、推薦されたからには頑張らねばと考えたアーチャーは経理や総務を渡り歩きながら遠坂家に尽力してきた。
そして今回の問題とは、その大切な仕事場でアーチャーは大失敗を犯した。
スタジオ遠坂は、それなりの規模のスタジオであり、アーチャーは高校生でありながら社長である凛の右腕として手腕を奮っているのだが先程もチラリと出たが、主な仕事は事務である。
人が足りない時には少なからずモデルの撮影にスタッフとして参加する事は多々あった。
しかし今回ばかりはアーチャーの運の悪さが出たのだ。
「なぁ、そこのアンタも一緒にケータリングでも摘んで休もうぜ!」
「……いえ、結構です」
「…………ま、そう言わずにさ!」
まるで前から知っていたかのように初対面であるアーチャーに明るく声を掛けてきたのは今回の撮影の主役であるモデル、クーフーリンであった。
彼は俳優、歌手、モデルと多彩な才能と運動神経で芸能界をのし上がっている今、売れっ子の人物でアイルランドの英雄と同姓同名としても有名人。
アーチャーからすれば兎に角、派手な分類の人間であった。
後に凛からクーフーリンは親や親族も資産家などが多く、セレブリティな血筋であると知らされ、絶句したのは記憶に新しい。
しかも本人はチヤホヤされる事よりもコミュニケーションを大事にしている人格者と言う非の打ち所のない。
まるでシャドウがよく読んでいる漫画のキャラクターのようだと、くだらない感想が零れたのは許して欲しい。
まだ詳しく知らなかったとはいえアーチャーは既にその日に話したばかりでありながらクーフーリンの事が苦手な印象を持っていた。
その理由は、単純に劣等感である。
煌びやかでありながら嫌味は無い、才覚ある人間。
そういった人物は決まって、努力すれば願いは叶うと言うのだ。
だがアーチャーからすれば当てはまるのは、ごく一部の人間。
アインシュタインも述べていた1パーセントでも才覚があればこそだ。
その才覚も底が知れる凡人の苦労と天才の苦労は違う。
分かり合える訳が無い。
仲を取り持つ理由がない。
話す気もない。
無論、小さな子供でもないのでアーチャーは自覚していた。
だが散々、様々な才覚のある人間を見てきたのに何故、クーフーリンと関わり合いになりたくないのか自覚出来ぬままにアーチャーは作業に集中しようとしていた。
何より彼から見れば自分など有象無象の野次馬の1人なのだから、とアーチャーは素っ気なく答えると慣れない仕事を黙々と来なそうとしたのだ。
逆にそんな塩対応こそクーフーリンの心を刺激したなど、アーチャーは気付かなかった。
クーフーリンは、あしらわれるなど家族や親戚以外ににされず、二つ返事の輩が多い。
アーチャーの何気ない素っ気なさは彼にとって逆に興味の対象になってしまったのだ。
故に事件は起こった。
しかし同時に散らばった服のお陰で、何処か無機質さと人間臭さが入り混じったリビングはカオスだ。
その中心のソファーに青年が各3人、低い机を囲んで真顔、渋顔、呆れ顔。
まさに三者三様であった。
「うぅ、完全にやってしまった……!」
美しい銀の頭を抱えそうな程に深刻な声色、褐色で分かりづらくとも血の気の無い青年の名は衛宮祐巳(ゆみ)。
兄弟の中では三男であり、名前からアーチャーと呼ばれている。
そんな誰が見ても落ち込んでいるアーチャーの頭を呆れ顔だが優しく撫でる青年が居た。
アーチャーの顔にそっくりで彼の左目の眼帯、ボサボサのくすんだ銀髪の差が無ければ分からなかっただろう。
「クビにならなかっただけマシだろ〜」
励ます声色には何処か疲れを滲ませている彼の名も伝えねばなるまい。
次男の衛宮景(けい)と言って景をカゲと読み、転じてシャドウと呼ばれている。
頭を撫でられ、普段ならば弾く手を甘んじて受ける程にアーチャーがダメージを負っているのは分かるのだろう。
のんびりと優雅に紅茶を飲んでいた長男が口を開いた。
「はぁ……確かにシャドウの言う通りだな。遠坂に感謝の礼をしないと後が怖い」
失礼だが間違いではない言葉で渋顔を作り、どうしたものかと隠れた優しさを垣間見せている長男の名は衛宮シェロ。
彼は他の2人と顔立ちは似ているが髪型やファッションが違う事から親しい人間からオルタと呼ばれている。
そんな三者三様の面持ちで三人しかいない家族は男所帯でありながら所帯染みており、リビングで女子の井戸端会議さながらに机を囲んでお菓子を摘む。
最も殆ど食べているのはシャドウなのだが他の2人は慣れているのか、気にせず紅茶を啜る。
だが認識を改めるのであれば普段の彼らはリビングで仲良く集まるような事はしない。
逆に各自で食事を取り、朝の挨拶をしたら良い方な程に生活習慣はバラバラである。
しかし仲は分かりづらくとも良好だからこそ三男のアーチャーが直面した問題を兄弟仲良く悩んでいたのだ。
まず問題を説明するならばアーチャーを少し語らねばなるまい。
職業として撮影スタジオである「スタジオ遠坂」のスタッフをしているアーチャーが、現在の仕事に就いたきっかけは、当時は中学生だった遠坂凛と言う少女がしつこいナンパに絡まれていた所を助けた所からである。
当時のアーチャーは金銭面で警察学校や法学の大学を断念し、就活をしていたことを知った凛が己の親の仕事場の面接を勧めたのだ。
彼女は日本屈指の起業家である遠坂家の令嬢であったのだから当然である。
そして直々に推薦されたお陰で、今の仕事に就いたのだ。
無論、推薦されたからには頑張らねばと考えたアーチャーは経理や総務を渡り歩きながら遠坂家に尽力してきた。
そして今回の問題とは、その大切な仕事場でアーチャーは大失敗を犯した。
スタジオ遠坂は、それなりの規模のスタジオであり、アーチャーは高校生でありながら社長である凛の右腕として手腕を奮っているのだが先程もチラリと出たが、主な仕事は事務である。
人が足りない時には少なからずモデルの撮影にスタッフとして参加する事は多々あった。
しかし今回ばかりはアーチャーの運の悪さが出たのだ。
「なぁ、そこのアンタも一緒にケータリングでも摘んで休もうぜ!」
「……いえ、結構です」
「…………ま、そう言わずにさ!」
まるで前から知っていたかのように初対面であるアーチャーに明るく声を掛けてきたのは今回の撮影の主役であるモデル、クーフーリンであった。
彼は俳優、歌手、モデルと多彩な才能と運動神経で芸能界をのし上がっている今、売れっ子の人物でアイルランドの英雄と同姓同名としても有名人。
アーチャーからすれば兎に角、派手な分類の人間であった。
後に凛からクーフーリンは親や親族も資産家などが多く、セレブリティな血筋であると知らされ、絶句したのは記憶に新しい。
しかも本人はチヤホヤされる事よりもコミュニケーションを大事にしている人格者と言う非の打ち所のない。
まるでシャドウがよく読んでいる漫画のキャラクターのようだと、くだらない感想が零れたのは許して欲しい。
まだ詳しく知らなかったとはいえアーチャーは既にその日に話したばかりでありながらクーフーリンの事が苦手な印象を持っていた。
その理由は、単純に劣等感である。
煌びやかでありながら嫌味は無い、才覚ある人間。
そういった人物は決まって、努力すれば願いは叶うと言うのだ。
だがアーチャーからすれば当てはまるのは、ごく一部の人間。
アインシュタインも述べていた1パーセントでも才覚があればこそだ。
その才覚も底が知れる凡人の苦労と天才の苦労は違う。
分かり合える訳が無い。
仲を取り持つ理由がない。
話す気もない。
無論、小さな子供でもないのでアーチャーは自覚していた。
だが散々、様々な才覚のある人間を見てきたのに何故、クーフーリンと関わり合いになりたくないのか自覚出来ぬままにアーチャーは作業に集中しようとしていた。
何より彼から見れば自分など有象無象の野次馬の1人なのだから、とアーチャーは素っ気なく答えると慣れない仕事を黙々と来なそうとしたのだ。
逆にそんな塩対応こそクーフーリンの心を刺激したなど、アーチャーは気付かなかった。
クーフーリンは、あしらわれるなど家族や親戚以外ににされず、二つ返事の輩が多い。
アーチャーの何気ない素っ気なさは彼にとって逆に興味の対象になってしまったのだ。
故に事件は起こった。