ニャンコ系エミヤ

ちゅ、ちゅ、と唇を短く合わせ、時折ランサーはアーチャーの下唇を甘噛みしたり、唇で挟む事で感触を楽しんだりしていた。
するとアーチャーが焦れったくなったのか、恐る恐ると言った様子で舌の先を出してみると待っていたとばかりにランサーはかぶりつく。
くちゅ、ぬちゅ、と水音は次第に増して行き、唇の隙間から漏れるアーチャーの吐息にもランサーの吐息にも興奮と性の香りが混じり始めた。

「っんぁ」
「はっ、アーチャー……」
「ぁ、ランサー、私にっ構わず、ん……」

さっさと入れてしまえ。
そうランサーに告げようとアーチャーはしたのだが言葉が途中であろうとランサーには伝わったのだろう。
文字通り、食い尽くすようにかぶりついてアーチャーの言葉を意図的に阻むように口付けを深める。
だが、ランサーからすれば、この阻む行為すらもアーチャーの為なのだ。

「ん、はぁ…抱かれるって言うなら大人しくしてろ、酷くしちまうだろうが…」
「くっ、はぅ…はぁー…ふっ、男の身体なのだ、から、気にする必要はっん…ぁ、あ、るまい?」
「たわけ、そうは行くかってーの!」

ランサーのらしくもないように感じさせる気遣いにアーチャーは不思議そうに呆気に取られて、キョトンと効果音が付きそうな幼い表情で小首を傾げてランサーを見返してくる。
性の香りを纏いながらも幼い少年のようなウブさを思わせるアーチャーの様子にランサーは頭を抱えたくなった。
そんなどのようにすればアーチャーが理解出来るかと頭を悩ませるランサーの様子を見て、何を思ったのかアーチャーは勃ち切ってテントを作っているランサーのジーンズのチャックを下ろすとパンツからランサーの先走りにしては多すぎるとも言える量を纏う性器を出してきた。

「む……っふ……だが、ココは辛かろう?」
「っぁあ!ばっかやろう、触んな!出そうになったわ!」
「……ふ…んっ…ふむ、ランサー、ならば出してしまえ」
「はぁ!?何言っ!?っっうあ!」

白黒とさせて驚くランサーにほくそ笑み、アーチャーは何処か妖しさを含んだ微笑みをランサーに向けた次の瞬間にはランサーの性器を口に含み、愛撫を始める事にした。
最初は、キスをするように亀頭に口先を告け、おずおずと言った様子で舌先で何度か舐めると、こぽり、こぽりとランサーの腰や太ももの震えに合わせて溢れ出て来る。
その様子がランサーが既にアーチャーに感じているのだと思うと不思議とアーチャーに不快感は無く、寧ろもっと気持ち良くなって貰わねばと言う使命感に火をつけた。
幸いな事に精液に魔力が濃厚に混ざっている為に本来ならばある筈のイカ臭いとも表現される独特の臭いも味も感じず、あるのはただただランサーの上質な魔力の甘い臭いと味ばかりがアーチャーの口に広がっており。
男でありながらアーチャーは、頬が汚れるのも気にせずに竿の根本まで舌を滑らせたり、玉を揉みながら亀頭をイジメる事も躊躇する事はなかった。
アーチャー自身は気付いていなかったが、この時点でランサーの熱に釣られ、ランサーの上質な魔力の虜となっていたとも言えるだろう。

「っふ、ん、んん」
「く、は、あ、ぁう……は、あーちゃーっ!」
「んっ、ちゅ……ぅふむんんんっ!?」
「は、はぁ……って!すまん、アーチャー!俺、口に……大丈夫か!?」
「むぐっ」
「え」

ごきゅっ、と言う生々しい音と共にアーチャーは、気付いたら吐き出されたランサーの精液を一滴残らず飲み込んでいた。
この事はアーチャー自身でも驚きであり、ランサーと互いに驚愕した表情で見つめ合うなどと言った間の抜けた空間を作り出していた。
しかしランサーもアーチャーもそれどころではない。

「お前、の、え?不味くねぇのか!?」
「わ、私も驚いているのだが不思議と不味くない……」
「ふは、なんだそりゃ……でもこれはお返しと言っちゃあなんだが更に頑張るしかねぇな」
「なんだ、それはっ…ぁん…んぐっ!む、胸など弄らなくて良い!!!」

楽しげなランサーに勃ち始めていた乳首を触られただけで、ゾクゾクと弱い電流が走り抜けるように背筋を流れるのを感じたアーチャーは慌てた。
発情期をコントロールする為に抑制剤を服用していたが全く無くなる訳でない。
故にアーチャーの身体は普通の男よりも快感を拾いやすくなっており、身体は完全に受け入れる事を容認しているようなランサーにとっては極上の状態となっていた。

「ん、っうるせぇな……俺はお前もドロドロになるまで甘やかして気持ち良くするって決めたんだよ」
「な、にをぉぁ、勝手に!っぁ、ぁ、はぁあ、はぁん、は、弾くな!!!」
「ふ、なら潰してみるのはどうだ?」
「ひぐっ!?ぁ、何これ、何故、私はこんな!ぁ、ぁ、爪、や、やめ!ひんっ!」
「はっ……これも駄目なのか?仕方ねぇ」
「ば!!!す、吸うのもだ、めっ…っひぃぁぁぁあああ!!!!!」

少し茶化すように乳首を弾かれただけでアーチャーは下腹部に重みを感じ、全身に血が巡って発熱し、意識と熱量が乳首と己の性器へと注がれるのを感じずにはいられないが抵抗もままならない。
アーチャーは淡白ではあったが性欲が全く無い不能ではない。
自然と快感を追い掛けようとアーチャーの手は己の性器へと伸び、ランサーに見られ愛撫されていると分かっていながら。
いや、寧ろランサーに見られているからこそと言わんばかりにアーチャーは最早、羞恥を自覚する間もなく痴態をランサーの目の前へと晒す。
アーチャーの口からは絶えず否定的な言葉が漏れていたが身体は一切の抵抗はせず、ランサーからすれば神に差し出された生贄のように従順に背を逸らし、胸を突き出すようにして胸や乳首の快感を求めながら己の性器を愛玩して最後は背を丸め、いつの間にかランサーに押し倒されていた為に己の頬を汚す程の勢いで達した。
その姿に普段の嫌味な姿は無く、ただただ主人から与えられる快感に従順な使い魔がそこに居るのみである。

「はぁー……っはぁー……っ……」
「ん、お前、後ろ向け」
「はぁ……っ君の、言葉には従うが……何やら私の身体、ぁ、様子がおかしい!」
「分かってる。発情期だって前に言ってたろ?俺もやりすぎは、避け……る」
「は、ぁあ……ん、ら、らんさぁ?どうかしたのか?」

所謂、女豹のポーズとも言われている体勢を蕩けた脳でアーチャーは抵抗もせずにランサーの従うと、ランサーの驚いたような様子に不安を覚えた。
しかしランサーの驚きを当然であろう。
何故ならばアーチャーの後ろからは本来は出る筈の無い愛液が溢れており、女性の性器のようにししどに濡れていた。
思わずといった様子でランサーは驚いたまま中指を挿入すると、ランサーの指を待ちわびたように内壁は受け入れ、抜くように引くと切なげに締め付けてくる。
そして狭まった肉壁の奥を割り開くように素早く、だが傷つけぬように気を付けながら突くとアーチャーの喉は恋しそうに、しかし歓喜の声を上げて鳴くのだ。
あまりに上質な身体と反応に疑問が出てくるのは当然だろう。

「お前、ココ自分で弄ったか?」
「っひ!ぁあ!そ、そんな事、ある訳なかろう!!!わ、私たち、ぁ、魔物は、スムーズに事を成すように出来てっぁ!か、掻き回すっなぁあ!」
「マジかよ……女みてぇに濡れてるじゃねぇか…痛くはねぇか?」
「痛み、少しだけ、だが、これは……っく!んんっはぁ……う、んっ!ぁ、らんさぁ!だめ、溶けてしま、ぅ」

ガクリと力が抜けたらしいアーチャーは、とうとう観念したようにお尻をランサーへと捧げるように突き出して、少しずつ増やされる指に身を委ね、その身でランサーを受け止める準備と言うなの快感に身体を震わせる。
ランサーはと言えば、一度アーチャーの口に出した事で余裕が出てきたので傷つけないようにする為に指が三本から四本ほど入るまでアーチャーの後ろを苛め抜いた。

「もう、良いか?」
「はっ…はぁー…っ!ふ、ぁ、君にしては、んぅ…耐えたじゃないか…寧ろ、よく萎えぬものだなっ」
「は、まだ二発目だってのもあるが、ちぃとばかし、これはお前だけじゃなく俺も辛くなるかもしれねぇ……」
「はぁ…はぁ…ランサぁ、やめるなら今だ……っ」
「それだけは断る。此処まで来て今更やめられるかよ!」

アーチャーのこの後に及んで弱腰とも言える言葉に何を今更言うのかとばかりにニヤリと男臭く笑い飛ばし、ランサーは呼吸を調えて解しすぎとも言える、アーチャーへとランサーくらいの成人男性の中ではデカイ性器をゆっくりと、アーチャーの呼吸に合わせて埋めて行く。

「ふ、んぁ、はぁぁあー……!」
「っアーチャー分かるか?スゲェよな、全部入ったぜ」
「ぁ、い、良いから、もう……っ!」
「あぁ、俺も限界だっ!動くからな!」
「っぐふぁ!ん、ぁ、ぅん、ひっ!くぅ、ぇ、ぁあ!!!」
「アーチャー、あーちゃぁ、は、ふ、いたく、ねぇ?」

ランサーの動きに合わせて切なく、しかし羞恥を忘れたかのように普段の涼しげな態度からは想像もつかない程に惜しげも無く声を上げ、アーチャーはランサーの性器から与えられる快感に従順だった。
女性ならばイチコロであろう低い低音の声色からは普段ならば皮肉やらフェミニストとも取れる紳士的な言葉がツラツラと並べられるが、それが今は、己の動き一つで喘ぐ事しか出来ない様はランサーの独占欲を猛烈に刺激する。
しかし、いよいよ達して契約を終ろうとした時だった。

「んぁ、ふっ!ぁあ!く、ん……ぁ良い、からぁあ!も、クー……すき、君が好きだぁ!っはぁ、やぁぁあああ!!!!!」
「っぁふ、ぐぅ!?おまっ、俺の名前をなんで……!」

予想外すぎる出来事に流石のランサーも動きが止まるがアーチャーは快感に絶えず、ランサーはアーチャーが達した事による刺激で達した。
だがランサーからすれば、それどころではない。
何やらアーチャーといえば誇らしそうにしているが結果としてランサーの最後の理性を砕いてしまったに過ぎないのだ。

「はっ、ふふ……君の事、調べるのは容易かったっぁ、やられっ放しは性にあわないのでね、ん」
「っぅぁあ!くそっ!ずりぃぞ、アーチャー!お前も本当の名前を言え!!!」
「ひぁあ!?っんん、はっ…ま、言うからっあ!また固くな、って、るっ!」

懇願にも似たアーチャーの名を告げると言う事に上げてしまったスピードを少しずつ何とか落とす。
しかしスピードが落ちたからと言って、ランサーのアーチャーを抱き潰したい衝動が無くなる筈もなく、アーチャーは首筋や肩、胸板に歯形を作られながら漸く、ランサーに伝える事を許された真名をアーチャーは告げる。
がしかし、アーチャーと言う男は何でも器用にこなすようでいて、墓穴を掘ると言う言葉が意外と合っている男であった。

「うぁー…悪ぃ…血が昇った…」
「はぁー…はぁー…ふぅー……ランサー、私の真名くらいで暑くなるな…倒れてしまって構わんのか?ふぁ…はぁ…私の真名はエミヤ、私を救い育ててくれた人の名から取った……その口で、声で呼んではくれないか、私のマスターであるクーフーリン殿?」
「おまっ!?……あー……悪ぃ」
「え?はっ?っんぁああ!!!?」

見事にランサーを煽ってしまったアーチャーは再び強すぎる快感に襲われ、腰の感覚は快感しか感じなくなってしまった。
しかし己への好意に鈍感と言う言葉では片付けられぬ程に鈍いアーチャーは、ランサーの激しすぎる熱を受け止めながら消し飛ぶ疑問を無駄に脳内を埋め尽くしていた。
何故、ランサーは謝罪の言葉と共に終わった筈の契約を続け、己の中から出て行かないのか理解出来ない。

「ぁあっ!んひっ!ラン、サーっ!?」
「ふ、ぁエミヤ、悪ぃ、止まらねぇ!」
「んん、ぁ、はっ、ばかっ!これじゃあぁっんん…だめっ」
「あぁ、これじゃ…ただのセックスだな、すげ……きもちい、ふぁ」
「ら、らぁ、ランサーのばかぁ!はぁっん!」
「そこはマスター、か…はっ…クーだろ?エ・ミ・ヤ?」
「ひぅ!?っ……はぁあー…ぁ、ず、るい……ズルい、クー……っ」
「ぅあ……ふはっ……お前こそ狡いつーの」

それからはランサーもアーチャーも無我夢中であった。
ランサーはアーチャーが己の名を呼ぶ度に頭から足の指先まで沸騰したかのように血潮が巡り、アーチャーを穿つ事がやめられない。
そしてそんなランサーの底知れぬ熱すぎる熱を何回目か受け止める頃には己から縋り付き、そこに普段の女性からモテる家庭的な男は居らず、男としての尊厳を侮辱されていながら女のように喘ぎ、想い人に縋る恋人同士しか居なかった。
体位を変えたり、アーチャーへと与える刺激を変えたりして、ランサーもアーチャーも幾度、達したか分からぬ程に行為を重ねた末に終わって、アーチャーが目が覚めると外は夕日が差して真っ赤に空を覆っていた。

「…………腰に力が入らない」
「お、なんだ割と早く起きたな、アーチャー」
「君は本当にどんな身体の作りをしているだ?人でありながら魔物である私の腰を砕く気とは異常だぞ!!!!!」
「あー……なんつうか、エロいお前が悪い」
「はぁ?なんだ、それは?まだ熱があるんじゃないのかね?」
「おいこら、マジな顔して熱を測るんじゃねぇよ!!!」

額に手を押しつけて、もう片手は自分の額に手をつけて真剣な顔で熱を測るアーチャーに怪訝そうな顔でアーチャーの手を払うと、水分補給に汲んでいたヤカンから冷えた水を流し込む。
すると髪を普段のようにかき上げてオールバックにしながら穏やかにクスリ、とランサーに向けてアーチャーは微笑むと珍しく茶化すような言い回しで話しかけながら、ランサーの手からコップを奪うと水が口から零れて素肌を伝うのも気にせずに飲み干す。
そんならしくない荒々しい姿のアーチャー、もとい冷たい水滴を惜しげも無く伝わせるアーチャーの火照った素肌にランサーは目を離せない。

「ふぅ……まぁ、これからは宜しく頼むとしようか。光の御子殿?」
「………あー…また懐かしい呼び名を出してくるじゃねぇか。お前から呼ばれると、くすぐってぇわ!」
「わ!?やめろ、たわけ!折角、髪を上げたのに何をする!ランサー!!!」
「うっせぇ!少しは抱いた余韻に浸らせろってんだよ!アーチャー!!!」
「またそのような事を!どうして見た目と違って落ち着いていられんのだ!!!」

滴の伝う普段よりも色付いてチョコのように甘そうに思え、そしてアーチャーの魔力の甘さを知ったランサーにとって煽りでしかない光景と反して、温かで信頼し切った蕩けるような微笑みのアーチャーの表情を見ては再び元気になり始めた自身を誤魔化すようにアーチャーの髪を荒く撫でるしかないランサーであった。



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