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好青年の秘密

「それで貴様らは、まともに口付けもせずに別れたのか?小学生か、貴様らは」
「なっ!?い、いや、でも三成が家まで送ってくれたし…」
「馬鹿を言え、最近の中学生の方がまだ進んでおるわ…そもそも石田とは近所だと言っていたではないか」


翌日、とりあえず腐男子仲間である毛利には言っておこうと昼休みの昼ご飯の時間を利用して、若干、赤面しつつも伝えた
無論、ネタとして使うのはシチュエーションのみと約束をしてである
そして全て聞き終えた毛利の感想は「小学生か」であった
その次に「いっその事、貞操でも奪われてから両想いになれば描きやすいのに」とまで言われる始末であった


「あ、あまりそういう事を学校で言うなよ!それに三成は無理矢理なんて事をする奴じゃない!」
「ノロケは良いから大声を出すな、目立つぞ」
「うぅ…の、ノロケのつもりはないんだが…」


三成の名誉を傷つけさせない!とばかりに拗ねたような表情になる家康を鬱陶しげに手を払う動きで毛利は嗜める
ノロケだと言われ、また頬を色付かせたがすぐに家康は表情を暗くする
毛利に言いたい事があるが不安で言い出せないのだ
そんな家康をチラリと見つつジュースを飲み下して、毛利は早々には本題へと話を移してやる


「それで…我に打ち明けたと言う事は、助言が欲しいのだろう?」
「あ、あぁ…これからどう接したら良いか分からなくてな…」
「ふむ…まぁ、とりあえず今のままだと貴様がネコなのは確実であろうな」


平たく言えば同性愛に理解ある人間であり、人生経験も豊富そうな毛利に相談したが間違いであったと家康はすぐに後悔した
あまり日常生活で聞きたくない専門用語を思いっきり使って、容赦なく予告してくる毛利に相談しなければ良かったと思ったのだ
家康は赤面した顔で半ベソをかきながら毛利を睨んで文句を言う


「毛利っ!自分でも薄々気付いていた事を真っ昼間から露骨に言わないでくれっ!」
「目を逸らしていても今のままでは変わらんぞ」
「うぅ…そもそもワシ自身が自覚したのが告白されてからだし…その、交際とかワシ、あの、初めてでどうしたら良いか分からんのだ!」


しかし文句を聞いても毛利の態度は変わる事無く、ただ食べ終わった毛利は何やら忙しなくペンをノートに走らせている
そんな毛利に気にする事無く、家康は最後の方は顔を赤くして、お昼のサンドイッチを握り潰しながら言い終える
その告白に僅かに目を見開いたが、すぐに目を細め呆れたように言い放つ


「………ふむ、だがそれは後ろの奴にでも言ってやれ」
「え」
「本当か、家康ぅ………」
「え、いや!なんで2年のクラスに三成がっ!」
「刑部に会いに来たのだ!それよりも!今の発言は!真実かと聞いているぅう!!!」

後ろと言われ嫌な予感がしたのか固まってしまった家康に乾いた笑みを浮かべた後、とうとう毛利は本格的にノートへと向き直る
しかし家康はそれどころではない
空気が震える程の威圧を出しながら尋ねてくる三成に対して、家康は羞恥心で消えたくなっていたからだ

「き、ききき、聞いてたのか!?三成!」
「徳川がネコなのはほぼ確定だろうなと言う辺りからであったか?」
「毛利!何故、言ってくれなかったんだ!」
「家康が猫好きという話から何故、私の話になったかは知らぬが今はどうでもいい!来い!家康!」
「うわっ!三成!何処に行くんだ!?もうすぐ予鈴がなってしまうぞ!」
「煩い!黙って来い!!!」


いつから居たとパニックを起こしている家康に、毛利はノートから顔を上げずに答えてやる
そんな冷たい態度の毛利に涙目で、すがり付く
するとすがり付く家康の姿が気に食わないのか、三成は若干の勘違いをしながらも力一杯に家康の腕を引っ張ると、周りの目を気にする事無く、家康を無理矢理に連れ去る
そんな風に騒がしく教室を去って行った2人を流し見て、毛利はポツリと呟く


「当分、ネタに困らぬな」
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