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好青年の秘密

「好きだ」

徳川家康は今、同じ生徒会役員の石田三成に誰も居ない生徒会室で告白を受けていた
家康は男で告白した三成も男、なら普通は引くものだが家康は違っていた
友人と思っていた男から告白されるなんて同人誌にありそうだなと考えていたのだ
だが決して現実逃避ではない
これは告白された家康の感想だった

では何故、家康がオタクじみた思考をしてたかと言うと、残念ながら徳川家康は腐男子だったからだ
なんなら腐男子になるきっかけ(原因)の毛利なんかに聞かせれば、良い小説や漫画の材料になるかもしれないなどと思う
しかし自分がモデルになるのは気まずいので伝えておこうと考えた所で、家康は三成の呼びかけで現実に呼び戻された


「お、おい!家康!返事くらいしろ!!!貴様、無視するつもりか!」
「え、あ、す、すまん!無視するつもりは無いんだ!え、 えーと返事か…………その…今、しなきゃ駄目か?」
「当然だ!………考える必要があるのか?」
「っ!」


強気でいつも研ぎ澄まされた刀のような危うい雰囲気のある三成が、今は珍しく目を逸らし不安そうな雰囲気を醸し出し目を細めながら俯く
その色男な仕草に、家康は不謹慎ながら萌えた
しかし、それを三成の前で出すわけにはいかない

即座に腐男子としての思考を押さえつけるように家康は素早く俯いていた
しかし出来上がった気まずい空気が消える訳はなく、ただ備え付けの時計の音が響いていく
どれだけ経ったのか分からないが家康には一時間にも一分にも感じられ、告白もさぁ!帰ろう!と言う時にされた為に家康は余計に今すぐ帰りたい気持ちになっていった
焦る気持ちを飲み込みつつ、とりあえず帰る事を三成に提案しようと口にした瞬間、家康は三成に手首を掴まれていた


「家康………逃げるなっ!」
「ぁ…」
「今すぐ答えろ!答えるまで貴様をここから出すつもりはないからな!」
「え!?ちょっ!三成!何言ってるんだ!もうそろそろ何処も鍵を閉めだしてるはずなんだぞ!」
「煩い!帰りたいならさっさと答えろ!」


三成のあまりに予想だにしない宣言に思わず慌ていると、三成は持ち前の速さで行動に移す
素早くドアの鍵を閉めると、家康を逃がさないとばかりに家康の手首を再び掴むと自分の方へと引き寄せる

一連の動作を呆然と見る事しか出来なかった家康は、抵抗する事無く三成の腕の中に納まった事で更に焦ることになる

しかしそれは三成も同様であった
想い人である家康を逃がすまいとするあまり、自分がどれだけ大胆な事をしているかを混乱している頭では理解できていなかったのだ


「み、三成!もう今日は帰ろう!へ、返事は必ずする!だから放してくれ」
「黙れ!そう言って貴様は返事を延ばす気ではないのか!何故、一言も答えない!迷う事無く思っている事を答えれば良いだろう!」

「それは………」
「良いから答えろ!……………家康っ!」
「三成………」


切なげに己の名を呼ぶ三成に抱きしめられながら家康は場違いにも、また萌えていた
そもそも家康は三成の事を友として好いている
なんなら三成の整った容姿などにほんの僅かだが、腐男子として邪な目で見た事もある位でその後は背徳感に顔を一週間弱まともに見れなかった程だ

また三成の性格は家康個人としては羨ましく、腐男子的にも美味しいタイプなのだ
だから家康は恋人なのは望んでおらず、今までのような友人関係が一番心地良かった
しかし三成は家康にどんな答えであれ、返事を求めた


「……………どうしても答えないつもりか」
「………あ、す、すまない、少し考え事をしていた」
「んなっ!?き、貴様ぁぁあああ!!!私の腕に居ながら関係のない事に意識を放つな!!!」
「ほ、本当にすまなかった!あ!でも別に関係ない事じゃないぞ?」


白い肌のせいか、低体温をイメージさせる三成から意外にも暖かな温もりを感じて、家康は微睡みつつあった
しかし三成に問われて慌てて言い訳をすると家康の言葉を聞いた途端に三成は不機嫌になり、三成は家康から少し体を離して家康の肩を鷲掴む

体が離れた事で感じていた温もりがなくなり、何故か慌てた家康は途端に嘘をついた
すると意外にも、その嘘に三成が食いついてしまった


「何っ!それを早く言え!それで何を考えていた!今すぐ吐け!」

「え!?え、えっと…なんで告白するのがワシなんだ?とかだな…い、いやな!やっぱり同性を好きになるなら顔とかが綺麗な方が良いと思うんだ!ワシ!は、ははは…は………」

途端の嘘に対して三成の食いつきの良さに、焦った家康は自分が何を言っているのか、あやふやなままに無理矢理に微笑んだ

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