あめのまにまに
「チッ…家康」
「………なんだ?」
「貴様は私の恋人でありながら何故、異を唱えない…恋人とは執着し合うものではないのか」
「……………え」
この時、家康は三成が何を言っているのか瞬時には理解出来なかった
そもそも家康の記憶の中には三成と恋人らしい事をしたのは、告白をされた時と初めてキスをした時の2つのみである
その後は、すぐに家康が秀吉をリコールした為に顔を合わせたら喧嘩をしていたのだ
自然と三成との関係は解消されたのだとばかり思っていた
三成から恋人だと言われるまでは
その事実は家康を放心させるには充分であり、家康の異変に気付いた三成は無意識に優しい声色で家康に声をかけていた
「……………家康?」
「…………三成…今、恋人って」
「あ、あぁ…確かに言ったが、それがどうした」
「わ、ワシら、別れてなかったのか!?」
「なっ!?私が何時、何処でそんな戯言を口にした!!!」
どうやら三成は関係を解消したつもりはなく、家康に殴りかかっておきながら恋人と認識していたらしい
なので勿論、三成にとって家康の言葉は意外であり、三成を動揺させるには充分であった
しかし動揺しているのは家康も同じであり、先程までは意識していなかった顔の距離も次第に気になり始め
家康は、とりあえず三成から距離をとろうと己の胸倉を掴む手を退けようとした
だが三成も家康を今、逃がす程、余裕がなかった
離れようとする家康の腰に手を添えて引き寄せるが家康が身じろぐ為に上手く収まらない
「は、放してくれ!三成!」
「何故だ!何故、私から離れようとする!…チッ!大人しくしろ!!!」
「っん!?あっ…みっ、なりっ!」
「ん、」
「ふ…んぁっ…んんっ!ふぁ…はぁ」
「やっと…大人しくなったな…」
あまりに家康が暴れる為に三成は、家康の唇に噛み付くように口付ける
ソッと唇を合わせたかと思うと、家康の下唇を舐めたり甘噛みして息遣いの為に開いた瞬間、三成は舌を捻じ込む
息遣いの為に開いたのに三成に舌を捻じ込まれた為に軽い酸欠になり、目はトロリと溶けそうな程に涙に濡れ、とうの昔に体の力など抜けていた
そんな溶けきった家康を何処か満足そうにしながら見つめつつ、家康の体を重力に従わせるように下ろしながら自分も腰をおろす
すると家康が丁度、微睡みから目覚める
「………っ三成!!!お前なぁ!いくら雨で人の気配がないからってやめろ!」
「ならば貴様は私の話を聞け!何故、離れようとした!!!」
「そ、れは……………は、恥ずかしいじゃないか!ワシ一人が勝手に突っ走ったようだと思ったんだ!!!」
「……………いつもの事ではないか」
「なっ!?み、三成に言われたくない!!!」
「なんだと!貴様ぁあ!!!」
地面に腰を落ち着けても三成は体を離す事はなく家康の両肩を両手で掴み、体ごと逸らそうとする家康の姿勢を己に向けさせて怒鳴る
混乱と羞恥心で頭の中の整理がついていない家康は半ばヤケになり、怒鳴り返すように答える
しかし家康の返答に拍子抜けした三成は容赦なく、そして本人に悪気はなく毒を吐く
そんな毒もいつもの家康ならば上手く流せていただろうが、あいにく今は頭の整理がつかないままの家康である
その結果、幼い頃のような喧嘩腰の言葉を三成にぶつける
勿論、喧嘩腰の言葉は短気な三成には効果的で喧嘩が起きそうになる
だがもう混乱するのが嫌であった家康は、熟れた林檎のように首まで顔を赤くさせ、目には涙を溜めて言葉を続けた
「あぁー!もう!………三成!ワシは!ワシは……………お前の傍に居ても良いのか?」
「………何が言いたい」
「ワシは、お前を裏切った…秀吉殿をリコールしたんだぞ?お前が憎まない筈ないじゃないか…」
「当り前の事を一々口にするな…無論、今も貴様を許してなどいない」
俯き、泣きそうな声で喋り始めた家康に少し冷静になったのか三成は、加えていた力を抜いて家康を見守る
無論、家康からの問いに嘘偽りはせず、三成は素直に己の気持ちを伝えた
それは家康も分かっていたのか、悲しむ反応は見せずに話し続ける
「だったら………尚更、傍になんて居られる筈ないじゃないか」
「……………何故、そうなる」
「え?だってワシの事が憎いのだろ?」
「確かに憎いが………貴様を好いている気持ちにも偽りはない」
「……………なんだ、そりゃ」
三成の言葉に驚いた家康は目を丸くしながら思わず、顔を上げていた
その拍子に目からは一筋、涙が流れるのに気付くと三成は呆れたように言葉を続けながら躊躇なく、その涙を指ですくう
「愚鈍な奴め、貴様に贖罪の機を与えてやると言っているのだ」
「三成…」
三成の予想だにしていなかった言葉と不器用な微笑みを涙で歪む目で見た家康は、ポロポロと涙を流し泣き始めた
そんな家康を咎めるでもなく三成は無言で家康を抱き留めると、静かに家康の背中を摩って落ち着くのを待った
家康はそんな三成の不器用な優しさに自然とすがり付くように抱き着いていた
そして暫し、抱き締め合っていた後、どちらともなくソッと少し距離を取る
そして今度は家康が呟くように三成の名を呼ぶ
「三成」
「なんだ」
「ありがとう」
「……………ふん、さっさと立て、雨は止んだ」
冷めたような言葉を投げかけながらも、三成の手は優しく家康の泣き腫らした目元を撫でて、大丈夫だと言う事を確認すると立ち上がる
そんな仕草がくすぐったいのか、少し頬を染めながら微笑みを浮かべ家康も三成にならい立ち上がると、家康は外に出て両手を空に向かって伸ばしながら溜め息を吐く
その姿にもう辛そうな表情はない
「あぁ、ホントだな!ふぅー…もうすっかり夏模様だな」
「もうすぐ梅雨なのだから当然だ……………家康」
「ん?」
「私の家に泊まれ」
「え?あぁ…もう夜だものな!…ふふっ、お言葉に甘えてそうしよう、宜しく頼むな!三成!」
「ふん、言われるまでもない」
公園の時計を見た後に三成に向き直ると、今度は嬉しそうに晴々とした微笑みを向ける
もうすっかりいつも通りな家康に三成は先程の柔らかな雰囲気をしまい込むと、誘導するように家康の手を取る
その仕草に一瞬、驚いたように目を見開いたが家康はすぐに照れ笑いへと表情を変えると、しっかりの三成の手を握り返して三成に引っ張られるようにして三成の家へと歩を進めた
三成宛てのラブレターを拾っておいたのは、秘密にしてやろうと思いながら
「………なんだ?」
「貴様は私の恋人でありながら何故、異を唱えない…恋人とは執着し合うものではないのか」
「……………え」
この時、家康は三成が何を言っているのか瞬時には理解出来なかった
そもそも家康の記憶の中には三成と恋人らしい事をしたのは、告白をされた時と初めてキスをした時の2つのみである
その後は、すぐに家康が秀吉をリコールした為に顔を合わせたら喧嘩をしていたのだ
自然と三成との関係は解消されたのだとばかり思っていた
三成から恋人だと言われるまでは
その事実は家康を放心させるには充分であり、家康の異変に気付いた三成は無意識に優しい声色で家康に声をかけていた
「……………家康?」
「…………三成…今、恋人って」
「あ、あぁ…確かに言ったが、それがどうした」
「わ、ワシら、別れてなかったのか!?」
「なっ!?私が何時、何処でそんな戯言を口にした!!!」
どうやら三成は関係を解消したつもりはなく、家康に殴りかかっておきながら恋人と認識していたらしい
なので勿論、三成にとって家康の言葉は意外であり、三成を動揺させるには充分であった
しかし動揺しているのは家康も同じであり、先程までは意識していなかった顔の距離も次第に気になり始め
家康は、とりあえず三成から距離をとろうと己の胸倉を掴む手を退けようとした
だが三成も家康を今、逃がす程、余裕がなかった
離れようとする家康の腰に手を添えて引き寄せるが家康が身じろぐ為に上手く収まらない
「は、放してくれ!三成!」
「何故だ!何故、私から離れようとする!…チッ!大人しくしろ!!!」
「っん!?あっ…みっ、なりっ!」
「ん、」
「ふ…んぁっ…んんっ!ふぁ…はぁ」
「やっと…大人しくなったな…」
あまりに家康が暴れる為に三成は、家康の唇に噛み付くように口付ける
ソッと唇を合わせたかと思うと、家康の下唇を舐めたり甘噛みして息遣いの為に開いた瞬間、三成は舌を捻じ込む
息遣いの為に開いたのに三成に舌を捻じ込まれた為に軽い酸欠になり、目はトロリと溶けそうな程に涙に濡れ、とうの昔に体の力など抜けていた
そんな溶けきった家康を何処か満足そうにしながら見つめつつ、家康の体を重力に従わせるように下ろしながら自分も腰をおろす
すると家康が丁度、微睡みから目覚める
「………っ三成!!!お前なぁ!いくら雨で人の気配がないからってやめろ!」
「ならば貴様は私の話を聞け!何故、離れようとした!!!」
「そ、れは……………は、恥ずかしいじゃないか!ワシ一人が勝手に突っ走ったようだと思ったんだ!!!」
「……………いつもの事ではないか」
「なっ!?み、三成に言われたくない!!!」
「なんだと!貴様ぁあ!!!」
地面に腰を落ち着けても三成は体を離す事はなく家康の両肩を両手で掴み、体ごと逸らそうとする家康の姿勢を己に向けさせて怒鳴る
混乱と羞恥心で頭の中の整理がついていない家康は半ばヤケになり、怒鳴り返すように答える
しかし家康の返答に拍子抜けした三成は容赦なく、そして本人に悪気はなく毒を吐く
そんな毒もいつもの家康ならば上手く流せていただろうが、あいにく今は頭の整理がつかないままの家康である
その結果、幼い頃のような喧嘩腰の言葉を三成にぶつける
勿論、喧嘩腰の言葉は短気な三成には効果的で喧嘩が起きそうになる
だがもう混乱するのが嫌であった家康は、熟れた林檎のように首まで顔を赤くさせ、目には涙を溜めて言葉を続けた
「あぁー!もう!………三成!ワシは!ワシは……………お前の傍に居ても良いのか?」
「………何が言いたい」
「ワシは、お前を裏切った…秀吉殿をリコールしたんだぞ?お前が憎まない筈ないじゃないか…」
「当り前の事を一々口にするな…無論、今も貴様を許してなどいない」
俯き、泣きそうな声で喋り始めた家康に少し冷静になったのか三成は、加えていた力を抜いて家康を見守る
無論、家康からの問いに嘘偽りはせず、三成は素直に己の気持ちを伝えた
それは家康も分かっていたのか、悲しむ反応は見せずに話し続ける
「だったら………尚更、傍になんて居られる筈ないじゃないか」
「……………何故、そうなる」
「え?だってワシの事が憎いのだろ?」
「確かに憎いが………貴様を好いている気持ちにも偽りはない」
「……………なんだ、そりゃ」
三成の言葉に驚いた家康は目を丸くしながら思わず、顔を上げていた
その拍子に目からは一筋、涙が流れるのに気付くと三成は呆れたように言葉を続けながら躊躇なく、その涙を指ですくう
「愚鈍な奴め、貴様に贖罪の機を与えてやると言っているのだ」
「三成…」
三成の予想だにしていなかった言葉と不器用な微笑みを涙で歪む目で見た家康は、ポロポロと涙を流し泣き始めた
そんな家康を咎めるでもなく三成は無言で家康を抱き留めると、静かに家康の背中を摩って落ち着くのを待った
家康はそんな三成の不器用な優しさに自然とすがり付くように抱き着いていた
そして暫し、抱き締め合っていた後、どちらともなくソッと少し距離を取る
そして今度は家康が呟くように三成の名を呼ぶ
「三成」
「なんだ」
「ありがとう」
「……………ふん、さっさと立て、雨は止んだ」
冷めたような言葉を投げかけながらも、三成の手は優しく家康の泣き腫らした目元を撫でて、大丈夫だと言う事を確認すると立ち上がる
そんな仕草がくすぐったいのか、少し頬を染めながら微笑みを浮かべ家康も三成にならい立ち上がると、家康は外に出て両手を空に向かって伸ばしながら溜め息を吐く
その姿にもう辛そうな表情はない
「あぁ、ホントだな!ふぅー…もうすっかり夏模様だな」
「もうすぐ梅雨なのだから当然だ……………家康」
「ん?」
「私の家に泊まれ」
「え?あぁ…もう夜だものな!…ふふっ、お言葉に甘えてそうしよう、宜しく頼むな!三成!」
「ふん、言われるまでもない」
公園の時計を見た後に三成に向き直ると、今度は嬉しそうに晴々とした微笑みを向ける
もうすっかりいつも通りな家康に三成は先程の柔らかな雰囲気をしまい込むと、誘導するように家康の手を取る
その仕草に一瞬、驚いたように目を見開いたが家康はすぐに照れ笑いへと表情を変えると、しっかりの三成の手を握り返して三成に引っ張られるようにして三成の家へと歩を進めた
三成宛てのラブレターを拾っておいたのは、秘密にしてやろうと思いながら
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