あめのまにまに
「…あ!三成、そういえばお前、どうして雨宿りしてるんだ?見たところ濡れてはいないようだが」
「貴様、何が言いたい…遠まわしなどせず、はっきり顔を合わせたくなかったと言えば良いだろう」
「へ!?あ、すまん、そう聞こえたなら謝るよ…ワシはそんなつもりで言った訳じゃないんだ、単純に三成なら予報を見て傘を持って来ていそうだから不思議だったんだ」
雨の為か、声を荒げはしないものの三成の声は地を這うように低く、三成の不機嫌さを体現していた
無論、そんな声を金吾こと小早川秀秋が聞けば飛んで逃げそうな声にも臆する事は無く、家康は三成に対して詫びを入れてから訂正する
このように丁寧に話したりして相手をしなければ思い込む所のある三成と誤解なく、会話など出来ないと言う事を家康は心得ていた
「フン……………刑部に渡した、私の足の早さであれば帰宅出来る予定だったからな」
「あぁ、刑部って家から距離があるものな、でも帰ってないとは…あ!もしかして怪我してるのか!?見せてくれ!応急処置なら出来るから!」
「何故そうなる!っ!?おい!近付いてくるな!」
刑部こと大谷吉継とは三成の親友とも言える同級生であり、家康とも生徒会などで交流を持っていた男である
今や彼は三成に付きっきりだったので挨拶を交わすか交わさないか程度であったが、家康は三成と大谷の仲の良さ、そして三成が大谷の体を心配している事は感じていた
その為、大谷に傘を貸すのは三成らしいと思わず頬が緩みそうになるのをグッと堪えながら考えてみた
そして一番有り得そうな怪我に行き当たった
ならば一大事だとばかりに慌てて三成に近づき、怪我を確かめようとする
確かに三成と言う男は、己が怪我をしても体が動くのであれば問題ないと判断する男であった為に、放置しかねない
が、家康もまた三成程ではないにしろ思い込む節があった
一通り嫌そうな顔をしている三成を無視して制服が破れていたりしないか近付き、全身を見たが勿論、怪我なかった
「あ、あれ?怪我してないみたいだな」
「いい加減にしろ、家康!!!私がいつ怪我をしたなどと言った!帰り際、変な女に手紙を押し付けられていたら帰宅が遅れ、雨宿りをする羽目になったのだ!」
「うおっ!?手紙を?ってワシに渡してどうする」
「いらん、貴様にやる」
手紙を渡された事を思い出し、更には家康が人の話を聞いていなかったのが余程不服だったのか
不機嫌なのを隠す事もせず、三成は鞄から手紙を出したかと思うと家康の胸に手紙を押し付ける
果てには、やると言う言葉に流石の家康も目を丸くして持っていた手紙を三成に突き返す
しかし三成は、もう知らぬと言ったように視線を逸らして腕を組んでしまっていた
「えぇえ!?や、やると言われても…これはお前に渡された物なのだから、お前が持っておくべきだろう」
「知るか、言いたい事があるのならば直接言えば良い事だ」
「だからってワシに押し付けるなよ…そういえばこの手紙、読んだのか?」
「まだだ」
「なら、せめて読んでみたらどうだ?もしかしたら忙しくて話が出来なかったのかもしれないぞ」
「あの女は生徒会の役員などではなかった、用事などあるものか」
渡された、もとい押し付けられた家康は自分宛でも無いのに受け取れないと、手紙を突き返すが一向に三成は受け取る気配を見せない
むしろ返そうとする家康を睨みつけ、拒絶する
が家康も三成ほどではないが、やはり頑固な男なのだ
受け取るべき相手は三成だと言って譲らなず、三成の目の前に突き出す
「………」
「………三成」
「私はその手紙に興味などない」
「はぁ……… したくはなかったが仕方ない…三成、ワシが読むから、せめて聞いてからどうするか決めてくれ」
「ふん、どうせ、大した事など記されていない」
「…手紙、ホントに読むぞ?」
「しつこいぞ、好きにしろ」
本来は三成宛であるが故に家康は、妥協案として家康が音読する事を提案した
すると本当に興味がないのか、家康の提案を拒否も肯定もせず降り続く雨を見つめる
そんな三成にため息をついた後、手紙の封を開けて、中身を読む前に最終確認として未だ少し不安そうな目を向けながら尋ねる
流石に鬱陶しくなってきたのか、三成は眉間の皺を増やして睨みつけながら促してやる
そんな三成の睨みに動じる事無く、むしろホッとしながら家康は手紙の中身を読み出した
「えっと…"初めまして、突然、手紙を渡してごめんなさい。実は伝えたい事があるのですが、緊張して全てを伝えられそうにないので手紙を書く事にしました。石田くんは遠回しな言葉が嫌いだと聞いたので手紙の中だけでもはっきりと伝えたいと思います。私は石田くんが"…あ!」
「………どうした」
「これラブレターじゃないか!!!わ、ワシ音読しちゃったぞ!しかもお前宛なのに!!!」
「煩いぞ!家康ぅう!!!ただでさえ響くのに大声を出すな!!!」
「問題はそこじゃないだろ!三成!!!」
音読していてラブレターだと言う事に気付いたのか、家康は自分の事のように頬を赤らめながら慌てて三成の胸に押し付ける
続きを読むのが恥ずかしいだけでなく、本来は無関係である筈のない自分が見てしまったと言う気まずさや申し訳なさで居た堪れない
しかしそんな家康に気付いていないのか、気にしていないのか
三成は手紙がくしゃくしゃになるのも気にする事無く、家康の手首を掴んで引き寄せると胸倉を掴むと、はっきりと家康に向かって声を張り上げる
「何も問題などあるものか!そんな物、紙屑に過ぎない!」
「か、紙屑って!折角ラブレターを貰ったのにそんな言い方をするなよ!」
「私がなんと言おうと私の勝手だ!それとも貴様はこの恋文に答えろと言うつもりか!」
「そ、それはっ!三成の自由だが…」
手紙を紙屑呼ばわりする三成に流石の家康も声を荒らげながら注意する
ラブレターを書いた女子は勇気を振り絞って、この手紙を書いた事は読んだ家康に伝わっていた
だからこそ三成には無碍にするような事はして欲しくなかったのだ
しかし三成も譲る事はなく、ギロリと間近にある家康の顔を睨みつけながら己の意見を突き通す
そんな三成の意見に思う所はあるのか、家康はビクリと体を震わせたかと思うと切なげに眉を下げながら俯く
そうして暫し体は密着していながら視線は気まずげに逸らしていたが、三成が耐えきれず行動を起こした
「貴様、何が言いたい…遠まわしなどせず、はっきり顔を合わせたくなかったと言えば良いだろう」
「へ!?あ、すまん、そう聞こえたなら謝るよ…ワシはそんなつもりで言った訳じゃないんだ、単純に三成なら予報を見て傘を持って来ていそうだから不思議だったんだ」
雨の為か、声を荒げはしないものの三成の声は地を這うように低く、三成の不機嫌さを体現していた
無論、そんな声を金吾こと小早川秀秋が聞けば飛んで逃げそうな声にも臆する事は無く、家康は三成に対して詫びを入れてから訂正する
このように丁寧に話したりして相手をしなければ思い込む所のある三成と誤解なく、会話など出来ないと言う事を家康は心得ていた
「フン……………刑部に渡した、私の足の早さであれば帰宅出来る予定だったからな」
「あぁ、刑部って家から距離があるものな、でも帰ってないとは…あ!もしかして怪我してるのか!?見せてくれ!応急処置なら出来るから!」
「何故そうなる!っ!?おい!近付いてくるな!」
刑部こと大谷吉継とは三成の親友とも言える同級生であり、家康とも生徒会などで交流を持っていた男である
今や彼は三成に付きっきりだったので挨拶を交わすか交わさないか程度であったが、家康は三成と大谷の仲の良さ、そして三成が大谷の体を心配している事は感じていた
その為、大谷に傘を貸すのは三成らしいと思わず頬が緩みそうになるのをグッと堪えながら考えてみた
そして一番有り得そうな怪我に行き当たった
ならば一大事だとばかりに慌てて三成に近づき、怪我を確かめようとする
確かに三成と言う男は、己が怪我をしても体が動くのであれば問題ないと判断する男であった為に、放置しかねない
が、家康もまた三成程ではないにしろ思い込む節があった
一通り嫌そうな顔をしている三成を無視して制服が破れていたりしないか近付き、全身を見たが勿論、怪我なかった
「あ、あれ?怪我してないみたいだな」
「いい加減にしろ、家康!!!私がいつ怪我をしたなどと言った!帰り際、変な女に手紙を押し付けられていたら帰宅が遅れ、雨宿りをする羽目になったのだ!」
「うおっ!?手紙を?ってワシに渡してどうする」
「いらん、貴様にやる」
手紙を渡された事を思い出し、更には家康が人の話を聞いていなかったのが余程不服だったのか
不機嫌なのを隠す事もせず、三成は鞄から手紙を出したかと思うと家康の胸に手紙を押し付ける
果てには、やると言う言葉に流石の家康も目を丸くして持っていた手紙を三成に突き返す
しかし三成は、もう知らぬと言ったように視線を逸らして腕を組んでしまっていた
「えぇえ!?や、やると言われても…これはお前に渡された物なのだから、お前が持っておくべきだろう」
「知るか、言いたい事があるのならば直接言えば良い事だ」
「だからってワシに押し付けるなよ…そういえばこの手紙、読んだのか?」
「まだだ」
「なら、せめて読んでみたらどうだ?もしかしたら忙しくて話が出来なかったのかもしれないぞ」
「あの女は生徒会の役員などではなかった、用事などあるものか」
渡された、もとい押し付けられた家康は自分宛でも無いのに受け取れないと、手紙を突き返すが一向に三成は受け取る気配を見せない
むしろ返そうとする家康を睨みつけ、拒絶する
が家康も三成ほどではないが、やはり頑固な男なのだ
受け取るべき相手は三成だと言って譲らなず、三成の目の前に突き出す
「………」
「………三成」
「私はその手紙に興味などない」
「はぁ……… したくはなかったが仕方ない…三成、ワシが読むから、せめて聞いてからどうするか決めてくれ」
「ふん、どうせ、大した事など記されていない」
「…手紙、ホントに読むぞ?」
「しつこいぞ、好きにしろ」
本来は三成宛であるが故に家康は、妥協案として家康が音読する事を提案した
すると本当に興味がないのか、家康の提案を拒否も肯定もせず降り続く雨を見つめる
そんな三成にため息をついた後、手紙の封を開けて、中身を読む前に最終確認として未だ少し不安そうな目を向けながら尋ねる
流石に鬱陶しくなってきたのか、三成は眉間の皺を増やして睨みつけながら促してやる
そんな三成の睨みに動じる事無く、むしろホッとしながら家康は手紙の中身を読み出した
「えっと…"初めまして、突然、手紙を渡してごめんなさい。実は伝えたい事があるのですが、緊張して全てを伝えられそうにないので手紙を書く事にしました。石田くんは遠回しな言葉が嫌いだと聞いたので手紙の中だけでもはっきりと伝えたいと思います。私は石田くんが"…あ!」
「………どうした」
「これラブレターじゃないか!!!わ、ワシ音読しちゃったぞ!しかもお前宛なのに!!!」
「煩いぞ!家康ぅう!!!ただでさえ響くのに大声を出すな!!!」
「問題はそこじゃないだろ!三成!!!」
音読していてラブレターだと言う事に気付いたのか、家康は自分の事のように頬を赤らめながら慌てて三成の胸に押し付ける
続きを読むのが恥ずかしいだけでなく、本来は無関係である筈のない自分が見てしまったと言う気まずさや申し訳なさで居た堪れない
しかしそんな家康に気付いていないのか、気にしていないのか
三成は手紙がくしゃくしゃになるのも気にする事無く、家康の手首を掴んで引き寄せると胸倉を掴むと、はっきりと家康に向かって声を張り上げる
「何も問題などあるものか!そんな物、紙屑に過ぎない!」
「か、紙屑って!折角ラブレターを貰ったのにそんな言い方をするなよ!」
「私がなんと言おうと私の勝手だ!それとも貴様はこの恋文に答えろと言うつもりか!」
「そ、それはっ!三成の自由だが…」
手紙を紙屑呼ばわりする三成に流石の家康も声を荒らげながら注意する
ラブレターを書いた女子は勇気を振り絞って、この手紙を書いた事は読んだ家康に伝わっていた
だからこそ三成には無碍にするような事はして欲しくなかったのだ
しかし三成も譲る事はなく、ギロリと間近にある家康の顔を睨みつけながら己の意見を突き通す
そんな三成の意見に思う所はあるのか、家康はビクリと体を震わせたかと思うと切なげに眉を下げながら俯く
そうして暫し体は密着していながら視線は気まずげに逸らしていたが、三成が耐えきれず行動を起こした