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紫苑

その日は強い雨が降っていた。
俺はある人の葬式に来ていた。
そこにはたくさんの人がいた。関わりのある人はもちろん、本当に関わりがあったのか?と疑問に思いたくなるようなただの同じ学校の人達。

皆涙を流していた。
本当にその涙に心はこもっているのか?

ふと、1番前を見るとそいつの両親がいた。
誰よりも涙を流し、泣き崩れている母親。
涙を押し殺して母親を宥める父親。
その2人を不思議そうに見上げるまだ幼い弟。

さらにその前。

そこには1人の写真が飾られていた。
こういうものって、笑顔の写真が多いんだろうけど、これは違った。
真顔で、真っ直ぐ前を見つめている、まるで証明写真のような写真だった。

みんなは『まさか死ぬなんて』『まだ若いのに』などと言って泣いている。
でも俺は違う。

いつか、近いうちに死ぬと思っていたよ。
自分から、ね。

ただぼーっと周りの人達を眺めていた俺の肩を叩く手がある。
同時に声が聞こえる。


「どうです?みんなが死んだあなたを想って泣いている光景は。」


その声の方を見て、俺は笑う
「は?こいつらが本当に俺を想ってるって?」

俺が来ている葬式は、『俺』の葬式だ。
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