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序章

とあるところに、美しい天使がいました。

大きな六枚翼を持ち、人は皆彼女を信頼し、尊敬し、慕っていました。

彼女は人間を好み、自ら人間を助けました。

雨を降らせ、大地を潤し、人々を富ませました。

彼女のおかげで人々は幸せに暮らすことができました。

争いなどありませんでした。

あの日、アレが起こるまでは。

その日を境に彼女は悪魔と言われるようになってしまいました。

大きな翼は無残にも引きちぎられ、真っ白なその姿は赤く染まりました。

「出ていけ。」「お前がいると不幸になる。」

数々の暴言を吐かれ、痛めつけられましたが、彼女は人間を信じ続けました。

いつかは昔のような関係に戻ることが出来る。

また、みんなと幸せに生きることができる。

そう、信じて、彼女は人間にこれまでより多くの恩恵を与えました。

しかし、変わりませんでした。

それどころか扱いがより一層ひどくなるばかりでした。

ついには、命を落としてしまいました。

それからというもの、人間が完全に幸せに生きることは不可能になり、争いごとが絶えなくなってしまいました。

彼女は最後に血の涙を流したそうな。

あぁ、なんと憐れな物語。

人間とは、なんと愚かなものであるでしょう。
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