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第1章

朝、鳴り響く電話の音で目が覚めた。
これは、仕事用の携帯だ
液晶を見ると、パディ警部、と書かれている。
少し気持ちを整えて応答ボタンを押す。
「もしもしアドルフです。」
『アドくんかい?急いで出社して欲しいのだが。』
電話の向こうから、なにやら慌ただしい雰囲気が感じられる。
「…わかりましたすぐに準備します。」
警部が慌てるとはよほど大変なことがあったのだろう。急いで準備をして事務所に顔を出さずに社へと足を進めた。

扉を開けるとほとんどの警官が座っていた。
正面には警部が座っている。
「…ダン・アドルフ遅れました。」
軽く一礼して自分の席に着く。
いつもは騒がしい部屋なのにいつの事件よりも静まり返っていた。
「全員揃ったところで話を進めよう。」
警部が重々しく声を発した。
一瞬部屋の緊張感が高まる。
「切り裂きジャックによると思われる被害者がまた出た。」
その一言で静まり返っていた部屋がざわざわと騒がしくなる。

今回の被害者で4人目。
被害者の出るスパンも早くなっている。
だが、ここまで警部が緊張することだろうか。
連続殺人事件では4人には留まらず、6.7人殺された事件もあった。
なぜ、そこまで緊張感を持っているのか。
困惑していると、また警部が口を開く。

「被害者は、24歳女性、職業は、教師。」

部屋のざわつきが一気に大きくなる。
切り裂きジャック初めての娼婦以外の被害者。

「それは本当にジャックの仕業なんですか…?」
1人が声を上げる。
警部は頷かない。

「まだわからない。だが、犯行手口が全く同じであることからそう判断された。」
「…犯行…手口…。」
僕はそっと自分のメモを見る。
昨日レベッカの資料をメモしたものだ。

「警部。」
「なんだ?アドくん。」
辺りが静まり返り、周りの目線が自分に集まったことを確認してまた口を開く。
「共犯者、の可能性は。」

また、ざわざわと声が増える。
「どういうことだね?」
「ジャック1人での犯行ではここまで証拠を残さずにいるのは不可能ではないかと。」
「…確かにそうだが…」

はっきりとした根拠もない、1人の刑事の言葉を軽く間に受けることはさすがになかったが、その可能性は考えてくれるようだ。

その日の会議はざわざわとした空気の中で終わった。

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生ぬるい風が吹く。
「…何をしに来た。」
誰もいない空間に声を発すると、すっ、と突然人の気配がした。
「やぁ、見つけるのが上手いなぁ。」
憎たらしい笑みを浮かべ、近づいてくる影。
「昨日のアレはどういうつもりだ?」
また声をかけると、その影の歩みがとまる。
「僕は何も知らないね。君の仕業じゃないんだろう?」
「…当たり前だ。」
血なまぐさいこの部屋から出られるのはいつになることか。
外で娼婦の声がする。
あぁ、不快だ。
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