第1章
それから4時間程近くの人に話を聞いたり、なにか証拠となるものが落ちていないか探したりしていたが、結局なにも見つからなかった。
「今回も収穫はなし…か。」
パディ警部がため息をついて手帳を閉じる。
僕もそっと手帳を閉じ、遺体のあった方を見る。
遺体自体はもう片付けられていたが、飛び散った赤黒い血痕は消えていない。
「ジャックはなぜ、娼婦を狙うのでしょう。」
胸の中に浮かんだ疑問が、意識しない内に口に出ていた。警部はふん、と鼻を鳴らして胸を大きく反らして空を見る。
「巷ではジャックの親が娼婦だったとか、自分が娼婦による詐欺にあったとか色々な説が流れているが、真相はわからんな。」
もう行くぞ、と言って警部は車に乗り込む。運転のできない僕はそれに続いて助手席に乗り込む。
手に持つ手帳をもう一度見る。
書いてあることは2つ。
1つは、バラバラに切り裂かれた遺体
2つ目は、被害者は娼婦
この、当たり前のようなことだけが書かれている自分の手帳とにらめっこしていると、警部が僕を見て少し笑う。
「そんなに気にするな。」
ニカッと笑う警部も、恐らく、いや絶対に何かを感じているに違いない。
警部に家まで送ってもらい、家に荷物を置いて向かいの建物へと移動する。
その建物の2階には、こう書かれている。
『パーシバル探偵事務所』
2階に足を運び、ドアと開けると、
「先生!おかえりなさいっ!」
と元気な少女の声が聞こえる。
明るい茶色の髪の2つの三つ編みを揺らしながら、レベッカが走ってくる。
「ただいま。」
彼女の髪を撫でると、彼女は満足そうに笑う。
そう、僕は刑事とは別の顔を持っている。
絶対に警察にバレてはいけない。
僕は父の探偵事務所を引き継いだ、1人の探偵だ。
小さな事務所だが、依頼はよく来る。
迷い猫や落し物探しといった、簡単な依頼ばかりだが。
レベッカは今から2年前、彼女が12歳だった頃に事務所の前をさまよい歩いているのを拾った。彼女は、親のことはもちろん自分のことすら名前以外思い出せなかった。
無視するのも可哀想だと思い拾ったが、まさかここまで懐かれるとは。
「レベッカ、調べてほしいことがある。」
「なんですか?」
「切り裂きジャック。」
その名前を出すと、彼女は一瞬驚いた顔をしたが、すぐにニヤリと笑う。
「ははーん、先生、とうとうジャックに興味を持ちましたか。」
「違う、仕事だよ。」
彼女はかなりのオカルト好きで、オカルトについて語らせると右に出る者はいないだろう。
まぁオカルトに限らず、調べ物全般が得意なのだが。
「んー、ジャックですかぁ。ちょっとまとめるんで待っててください。」
そう言ってパソコンをいじり始めたので、僕は自分用のコーヒーと、彼女のためのはちみつ入りの甘い紅茶を準備することにした。
「今回も収穫はなし…か。」
パディ警部がため息をついて手帳を閉じる。
僕もそっと手帳を閉じ、遺体のあった方を見る。
遺体自体はもう片付けられていたが、飛び散った赤黒い血痕は消えていない。
「ジャックはなぜ、娼婦を狙うのでしょう。」
胸の中に浮かんだ疑問が、意識しない内に口に出ていた。警部はふん、と鼻を鳴らして胸を大きく反らして空を見る。
「巷ではジャックの親が娼婦だったとか、自分が娼婦による詐欺にあったとか色々な説が流れているが、真相はわからんな。」
もう行くぞ、と言って警部は車に乗り込む。運転のできない僕はそれに続いて助手席に乗り込む。
手に持つ手帳をもう一度見る。
書いてあることは2つ。
1つは、バラバラに切り裂かれた遺体
2つ目は、被害者は娼婦
この、当たり前のようなことだけが書かれている自分の手帳とにらめっこしていると、警部が僕を見て少し笑う。
「そんなに気にするな。」
ニカッと笑う警部も、恐らく、いや絶対に何かを感じているに違いない。
警部に家まで送ってもらい、家に荷物を置いて向かいの建物へと移動する。
その建物の2階には、こう書かれている。
『パーシバル探偵事務所』
2階に足を運び、ドアと開けると、
「先生!おかえりなさいっ!」
と元気な少女の声が聞こえる。
明るい茶色の髪の2つの三つ編みを揺らしながら、レベッカが走ってくる。
「ただいま。」
彼女の髪を撫でると、彼女は満足そうに笑う。
そう、僕は刑事とは別の顔を持っている。
絶対に警察にバレてはいけない。
僕は父の探偵事務所を引き継いだ、1人の探偵だ。
小さな事務所だが、依頼はよく来る。
迷い猫や落し物探しといった、簡単な依頼ばかりだが。
レベッカは今から2年前、彼女が12歳だった頃に事務所の前をさまよい歩いているのを拾った。彼女は、親のことはもちろん自分のことすら名前以外思い出せなかった。
無視するのも可哀想だと思い拾ったが、まさかここまで懐かれるとは。
「レベッカ、調べてほしいことがある。」
「なんですか?」
「切り裂きジャック。」
その名前を出すと、彼女は一瞬驚いた顔をしたが、すぐにニヤリと笑う。
「ははーん、先生、とうとうジャックに興味を持ちましたか。」
「違う、仕事だよ。」
彼女はかなりのオカルト好きで、オカルトについて語らせると右に出る者はいないだろう。
まぁオカルトに限らず、調べ物全般が得意なのだが。
「んー、ジャックですかぁ。ちょっとまとめるんで待っててください。」
そう言ってパソコンをいじり始めたので、僕は自分用のコーヒーと、彼女のためのはちみつ入りの甘い紅茶を準備することにした。