第1章
雪がちらほらと舞い始めた12月中旬。
「アド!」
車を降りるとすぐに名前を呼ばれた。
声の方を見ると、すこしふくよかな男性、パディ警部がこちらに手を振っていた。
急いで彼に駆け寄る。
「すみません、道が混んでまして…」
僕がそういうと、彼はがははっと口を大きく開けて笑い、僕の背中を思いっきり叩く。
「仕方ないことだ、気にするな。」
それだけ言うと、警部は真面目な顔へと変わる。
「今回の被害者…」
彼の足元を見ると、ビニールシートが被せてある。彼に目配せをして、彼が頷いたのを確認してからゆっくりとビニールシートを外す。
そこにあったのは手足首、すべてがバラバラに切り裂かれた娼婦の遺体だった。
あまりに悲惨な姿に、思わず気分が悪くなりビニールシートを被せ直して口と鼻を手で抑える。
「アドくんは入ったばかりだから、吐き気を催してもおかしくない。あまり無理はするな。」
警部はそう言って、また僕の背中を今度は少し優しく叩く。
「すみません…」
僕は最近新しくロンドン市警察に派遣された駆け出しの刑事だ。
にも関わらず、これほどまでにひどい事件の担当になるなんて運が悪い。
『Jack the Ripper』
またの名を切り裂きジャック。
彼(性別は分かっていない)は娼婦のみを狙って殺人を繰り返している殺人鬼だ。
犯行現場はほとんどが人目に付く場所であるにも関わらず、目撃情報は一切なく、指紋や皮膚、どんな情報も分かっていない。
分かっていることはただ1つ。
必ず娼婦のみを狙い、全身をバラバラに切り裂いて殺す、ということだけだ。
手がかりが少ないために犯人の候補も絞りきれず、このままでは迷宮入りも危うい。
「これで3人目、か。」
パディ警部が頭を抱えて呟く。
「今回も目撃情報とかはなさそうですか。」
どうやらないらしく、彼は少し肩をすくめる。
遺体の周りを見回してもめぼしいものは見当たらない。
一応もう少しあたりの人に聞き込みをしようということになり、ポケットから『ダン・アドルフ』と自分の名前が書かれた警察手帳とメモ帳とペンを取り出し、近くを歩いていた女性に声をかける。
「あの、すみません。今日の午前2時頃…」
今回こそは、なにか手がかりが見つかるといいが。
「アド!」
車を降りるとすぐに名前を呼ばれた。
声の方を見ると、すこしふくよかな男性、パディ警部がこちらに手を振っていた。
急いで彼に駆け寄る。
「すみません、道が混んでまして…」
僕がそういうと、彼はがははっと口を大きく開けて笑い、僕の背中を思いっきり叩く。
「仕方ないことだ、気にするな。」
それだけ言うと、警部は真面目な顔へと変わる。
「今回の被害者…」
彼の足元を見ると、ビニールシートが被せてある。彼に目配せをして、彼が頷いたのを確認してからゆっくりとビニールシートを外す。
そこにあったのは手足首、すべてがバラバラに切り裂かれた娼婦の遺体だった。
あまりに悲惨な姿に、思わず気分が悪くなりビニールシートを被せ直して口と鼻を手で抑える。
「アドくんは入ったばかりだから、吐き気を催してもおかしくない。あまり無理はするな。」
警部はそう言って、また僕の背中を今度は少し優しく叩く。
「すみません…」
僕は最近新しくロンドン市警察に派遣された駆け出しの刑事だ。
にも関わらず、これほどまでにひどい事件の担当になるなんて運が悪い。
『Jack the Ripper』
またの名を切り裂きジャック。
彼(性別は分かっていない)は娼婦のみを狙って殺人を繰り返している殺人鬼だ。
犯行現場はほとんどが人目に付く場所であるにも関わらず、目撃情報は一切なく、指紋や皮膚、どんな情報も分かっていない。
分かっていることはただ1つ。
必ず娼婦のみを狙い、全身をバラバラに切り裂いて殺す、ということだけだ。
手がかりが少ないために犯人の候補も絞りきれず、このままでは迷宮入りも危うい。
「これで3人目、か。」
パディ警部が頭を抱えて呟く。
「今回も目撃情報とかはなさそうですか。」
どうやらないらしく、彼は少し肩をすくめる。
遺体の周りを見回してもめぼしいものは見当たらない。
一応もう少しあたりの人に聞き込みをしようということになり、ポケットから『ダン・アドルフ』と自分の名前が書かれた警察手帳とメモ帳とペンを取り出し、近くを歩いていた女性に声をかける。
「あの、すみません。今日の午前2時頃…」
今回こそは、なにか手がかりが見つかるといいが。