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序章

大きな白い月が輝く美しい夜だった。
前を歩く娼婦に向かい、自分の持つナイフを大きく掲げ、振り下ろす。
娼婦に声をあげる隙も与えず、もう1度、2度、何度も彼女の至る所にナイフを突き立てる。
あぁ、美しい光景だ。
鮮やかな赤色が地面いっぱいに広がる。
気が済むまで突き刺した後、彼女の手足をゆっくりと切り裂いていく。
この時の快感を忘れることはできないだろう。
「Hey, Jack.」
背後から聞き慣れた声がする。
振り向くとそこにはいけ好かない奴がいた。
「それくらいにしときな。」
そいつは気味の悪い笑みを浮かべ、こちらへ手招きをする。
「白い肌が汚れている。」
訛りの入ったイギリス英語で尚も話しかけてくる。そいつの手を無視してナイフに付いた血を払う。
この仕事をやる上で最も嫌なことだ。
返り血を盛大に浴びること。
自分が興奮してやりすぎるのも原因だが、切り裂けと言ったのはこいつらだ。
「服の替えはもらうぞ。」
「ははっ、おーけーおーけー。」
わざとらしく笑って手を挙げてみせる。
「さぁジャック、そろそろ警察が来ちまう。」
「あぁ。」
警察に捕まる訳にはいかない。
娼婦のエプロンの端で顔の血だけを拭い、そいつについて路地へ逃げ込む。
俺はいつまでこんなことをすればいいのか。
ふと空を見上げるといつもよりも月が輝いているように見えた。
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