このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

善狐野狐

『----------。』
俺の名前を呼んで笑ってくれた、俺にとっての太陽。
キラキラと輝く長い純白の髪に黄金の瞳がよく生えた。
大好きで、慕っていたあなたのそばにいることは、俺にはもう、できない。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

あぁ、下界に堕とされて、どれだけが経っただろう。あの人に貰った妖力はもうほとんど残っていない。
人間に姿を見せられないのはもちろん、8つもある尾を1尾も隠せなくなってしまった。
「…堕ちたなぁ…」
山奥の大きな杉の木にもたれかかる。
身に覚えのない罪を着せられ、ここに堕とされた。あの人は、俺のことを信じていてくれただろうか。結局最後まで、会うことはできなかった。会わせてくれなかった。
俺があの人の命を狙うわけ、ないのに。
善狐の証であった真っ赤な髪も、今はもう毛先から徐々に黒くなってきてしまった。
あの人にもらった大事な大事な名前も、名札を割られた時に失ってしまった。
「はぁ…」
ため息をついて髪をかきあげる。
一体自分はなぜ生きているのか、まず、自分は誰なのか。
あの日、拾われた日、あの人にもらった名前は、絶対に忘れてはいけないものだったのに。

そう、色々考えている時に。
「お狐さん…?」
ふと、声がした。
明らかに俺に発せられた声。
驚いて声のした方を見る。俺は自分の目を疑った。
「ミケ…様…?」
いや、違う。彼はあの人とは違う。
でも、似ていた。とても。
短いが、真っ白な髪に、黄金の右目。
左目は髪に隠れて見えなかったが、あの人に、ミケ様によく似ている。
12歳ほどだろうか。その小さな少年は目を大きく見開いて俺を見て呆然と立っている。
「君は…俺が見えるのか…?」
俺が小さくそう聞くと、そのままの表情でかすかに頷く。
驚いた。俺は2度と人に見られることはないと思っていたから。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

なぜ、この少年が俺のことを見ることができたのか。彼が何者なのか。
全ては語ることは出来ないが、この出会いは、俺の運命を大きく変えた。
それはまた、別のお話。
1/1ページ
スキ