「ねぇ栄治、アメリカの年越しってどんなの」

「まぁ派手で賑やかだよな。カウントダウンで盛り上がってる感じ?」

「それだけ？」

「それだけじゃねーの？」
そう答えた栄治はまた眠りにつこうと目を瞑った。




「うそだ。新年を迎えた瞬間は隣にいる人とキスするんでしょ？」

栄治の顔をペチッと叩き、そう尋ねてみると、栄治はうっすらと目を開けて恨めしそうにこちらを見つめた。


「どこで見た？」

「どこでも見てない」

「じゃあ誰が言ってた？」

「前に、深津先輩が言ってた」

「深津さん…」
そう呟いた栄治は一気に呆れ顔になった。


「なんでそんな大事なこと黙ってるの〜」
軽く身体を揺さぶってみると、栄治はむくりと起き上がった。


「いや、全然大事じゃない。そもそも年越しは毎年こっち(日本)にいるからな」

「じゃあもしもだよ？年明けの瞬間、隣にいる子がめちゃくちゃ綺麗な子だったらどうする？」


「どうもしねぇ」
ため息まじりの吐息が漏れた。


「栄治、浮気しないでぇ」

「しねぇし、落ち着いて人の話を聞けよバカ」

「バカとは失礼な」

「変なこと考えてねーで、少しは英語の勉強しろ」

「とにかく栄治はこの先一生日本で年越ししてください」

「いや、ひかりが一緒にいればアメリカでもいいだろうが」


「/////なんでそんな小っ恥ずかしいこと平気で言えるの」

「ちょっとバカすぎて手が出そう」
そう言って栄治は肩を震わせて笑う。



「栄治はベッドの中以外で、可愛いとか言ってくれないから不安なのよ」

「おい。そっちのほうが何倍も小っ恥ずかしいこと言ってるぞ、気づけ」

「じゃあ言ってよ！？可愛い愛してる大好き、ひかりがいないと生きていけないって」

「はいはい可愛い大好き」


「棒読み！やり直し！」

「バカが有り余ってもうめちゃくちゃ愛しい」
栄治は口元を押さえながら、くくっと笑う。

「バカなのはお互い様でしょ。気持ちがこもってな………………」




「まだ足りねぇかよ」

ぐっと抱き寄せられたかと思うと、視界がぐるんと回る。いとも簡単に、先ほどまで寝ていたベッドに組み敷かれた。

「あ。嘘です、足りてます。伝わってます」



毎年こんなやりとりをして過ごしている気がする。

「ひかりといるとずっと笑ってるよな。大概惚れてる」





気づけ、ばーか

最後にそんな捨て台詞が聞こえてきた。