あて先ちがいのラブレター/Keith・Alford
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Princessは、鏡に映った自分を見つめた。
まるで別人だ。
昼過ぎ、狭い部屋に5,6人のメイドが手にあふれんばかりのドレスを抱えてやってきた。
主 から、どれでも好きなものを選ぶようにと言われてきたと恭しく頭をさげると、彼女たちは手際よくドレスを壁にかけた。
どれもきらびやかで、でも品があって、身につけるだけで上級の貴族にみえるであろうものばかりだ。
アクセサリーにも目を見張った。
あいた襟ぐりを豪華にかざるネックレスはずっしりと重く、大きな宝石がつき、ピアスも、ブレスレットもセットになっている。
着こなせる自信などなく、ワンランク、いや、ツーランク下のものを用意して欲しいと言うと、メイドたちは顔を見合わせて「キース様に叱られますから」と困惑した。
結局選んだのは、エメラルドグリーンのドレスだった。
膝まではぴったりと身体のラインに沿い、そこからドレープがゆるやかに裾へと広がり、背中が広くあいた大人びたデザインのものだ。
あれよあれよと着付けを終えたメイドが去ると、続けてヘアメイクアーティストを名乗る数人が入ってきた。
360度の角度から顔を眺め、指先で丁寧に頭皮を押して頭の形を確かめると、これもまたあっという間に髪を結い上げて、華やかなメイクをほどこした。
鏡の中のPrincessは、自分でもどこの令嬢かと思われるほどの女性になった。
窓から見下ろせば、車寄せに漆黒の大型リムジンがつけられている。
ずらりと並んだメイドと執事は全部引き連れて行けということだろうか。
やがて、年長の執事がやってきて胸に手を当て、出発を促した。
けれどPrincessは静かに首を横に振った。
「……ごめんなさい。やっぱり私、行きません」
鏡の前の自分がだんだんと変わっていくにつれて、迷いは決意に変わっていった。
表向きは権力をふりかざす自分勝手な王子、キースの懐は深く、知れば、魅かれた。
確かにエドワードにほのかな想いがあったころもあったけれど、
いつの間にか、キースの呼び出しの理由に自分への好意を求め、視線はいつも彼を追った。
なのに、ダンスの特訓も、自分をエドワード王子のパーティーへと送りだすため。
着飾らせるのも、エドワード王子に気に入らせるため。
貴方は、それでいいの……?
胸がつぶれるようだった。
こんな気持ちで、シャルルのパーティーにいけるはずもなかった。
選んだドレスは、キースの瞳の翡翠色。
胸元に輝くラウンドのエメラルドも、まさに、キースの眼そのものだ。
私……キース様が好き。
Princessはぐっとドレスの脇を握った。
これまでも、自分の意志で生きてきた。
結果、何を失ったとしても後悔はしない。
だからパーティーには行かない。
エドワードを呼ぶコール音を耳に、Princessはもう、迷わなかった。
このドレスも、メイクも、踊れるようになったダンスも、
たった一人、大好きな人のために……
まるで別人だ。
昼過ぎ、狭い部屋に5,6人のメイドが手にあふれんばかりのドレスを抱えてやってきた。
どれもきらびやかで、でも品があって、身につけるだけで上級の貴族にみえるであろうものばかりだ。
アクセサリーにも目を見張った。
あいた襟ぐりを豪華にかざるネックレスはずっしりと重く、大きな宝石がつき、ピアスも、ブレスレットもセットになっている。
着こなせる自信などなく、ワンランク、いや、ツーランク下のものを用意して欲しいと言うと、メイドたちは顔を見合わせて「キース様に叱られますから」と困惑した。
結局選んだのは、エメラルドグリーンのドレスだった。
膝まではぴったりと身体のラインに沿い、そこからドレープがゆるやかに裾へと広がり、背中が広くあいた大人びたデザインのものだ。
あれよあれよと着付けを終えたメイドが去ると、続けてヘアメイクアーティストを名乗る数人が入ってきた。
360度の角度から顔を眺め、指先で丁寧に頭皮を押して頭の形を確かめると、これもまたあっという間に髪を結い上げて、華やかなメイクをほどこした。
鏡の中のPrincessは、自分でもどこの令嬢かと思われるほどの女性になった。
窓から見下ろせば、車寄せに漆黒の大型リムジンがつけられている。
ずらりと並んだメイドと執事は全部引き連れて行けということだろうか。
やがて、年長の執事がやってきて胸に手を当て、出発を促した。
けれどPrincessは静かに首を横に振った。
「……ごめんなさい。やっぱり私、行きません」
鏡の前の自分がだんだんと変わっていくにつれて、迷いは決意に変わっていった。
表向きは権力をふりかざす自分勝手な王子、キースの懐は深く、知れば、魅かれた。
確かにエドワードにほのかな想いがあったころもあったけれど、
いつの間にか、キースの呼び出しの理由に自分への好意を求め、視線はいつも彼を追った。
なのに、ダンスの特訓も、自分をエドワード王子のパーティーへと送りだすため。
着飾らせるのも、エドワード王子に気に入らせるため。
貴方は、それでいいの……?
胸がつぶれるようだった。
こんな気持ちで、シャルルのパーティーにいけるはずもなかった。
選んだドレスは、キースの瞳の翡翠色。
胸元に輝くラウンドのエメラルドも、まさに、キースの眼そのものだ。
私……キース様が好き。
Princessはぐっとドレスの脇を握った。
これまでも、自分の意志で生きてきた。
結果、何を失ったとしても後悔はしない。
だからパーティーには行かない。
エドワードを呼ぶコール音を耳に、Princessはもう、迷わなかった。
このドレスも、メイクも、踊れるようになったダンスも、
たった一人、大好きな人のために……