あて先ちがいのラブレター/Keith・Alford
プリンセスの名前を設定できます⇒
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
リバティ城の広間は、華やかなざわめきに満ちている。
中央のクリスマスツリーを取り囲むようにたくさんのフィンガーフードが並び、紳士淑女の間を、シャンパーニュをトレイに載せた執事たちがせわしなく行き交う。
去る年を振り返り、来る年に希望をつなぎ、皆が談笑にふけるなか、キースはひとり、窓辺から外を眺めた。
ビロードの空からは、ひらひらと雪が舞いだした。
ふと、Princessに与えたロシアンセーブルのケープは、もう少しボリュームがあるものにしたほうが寒さをしのげたかもしれないと考えて、すぐに首を振った。
Princessをかばう男は、別にいる。
シャルルのクリスマスパーティーも、宴酣 なころだろう。
今頃アイツは、エドワード王子と……
納得したはずなのに、胸がさざ波だって落ち着かなかった。
出国を許したから、もうPrincessはここに戻らないかもしれない。
欲しいものは絶対に手に入れる主義だ。
半分脅しだったり、大枚をばらまいたりしたこともある。
『庶民にだってココロはあるんです』
Princessの声が耳に残る。
まさに、彼女の心が欲しかった。
でもそれは、権力や金ではどうやっても手に入れられないものだ。
不意に、正装のジャケットの内側で、スマホが着信を告げた。
見れば液晶には“エドワード王子”の表示。
「……」
出れば告げられるであろう礼の言葉も、今の自分にとってはつらいだけだ。
このまま気付かないふりをしてしまいたいところだったが、相手が同盟国の王子となればそうもいくまい。
平静を保てと言い聞かせながら、キースは指を画面に滑らせた。
「はい」
「エドワードです。キース王子に早くお知らせしておいたほうがよいかと思いまして」
「……?」
“Princessがシャルルに残ると言っている”
“Princessと交際することになった”
キースは次の句に身構えた。
しかし、告げられたのは思いもよらない言葉。
「実は、こちらのパーティーにPrincessさんはいらしていません。電話がありまして、断られてしまいました」
「は? 断った? アイツが? いや、でもきちんと支度はさせて……」
キースはスマホを握り直した。
パーティーの時間に間に合うように、準備は整えた。
なんの不足もないはずだった。
「Princessさんは、今ごろお部屋でとまどっておられるのかもしれません。それで、余計なことかと思いましたが連絡を」
エドワードの言葉がぐるぐると頭を回りはじめる。
わからなかった。
少なくとも秋の日にはパーティーの誘いに喜んでいたし、ついこの間だって弱音をはくことなく、ダンスの特訓をしたばかりではないか。
「どうして、断りなんか」
独り言のようにつぶやくと、電話の向こうのエドワードが小さく笑う気配が感じられた。
「理由、ですか? 私よりも、Princessさんに直接お尋ねになったほうがよろしいかと思いますよ。……メリークリスマス、キース王子。今夜は素敵な夜になりそうですね」
途切れた電話をおさめると、キースは立ち尽くした。
視線を向けた窓の外の雪は、音もなく降り積もる。
キースは、広間を飛び出した。
廊下をゆく早足は、次第に駆け足になる。
中央のクリスマスツリーを取り囲むようにたくさんのフィンガーフードが並び、紳士淑女の間を、シャンパーニュをトレイに載せた執事たちがせわしなく行き交う。
去る年を振り返り、来る年に希望をつなぎ、皆が談笑にふけるなか、キースはひとり、窓辺から外を眺めた。
ビロードの空からは、ひらひらと雪が舞いだした。
ふと、Princessに与えたロシアンセーブルのケープは、もう少しボリュームがあるものにしたほうが寒さをしのげたかもしれないと考えて、すぐに首を振った。
Princessをかばう男は、別にいる。
シャルルのクリスマスパーティーも、宴
今頃アイツは、エドワード王子と……
納得したはずなのに、胸がさざ波だって落ち着かなかった。
出国を許したから、もうPrincessはここに戻らないかもしれない。
欲しいものは絶対に手に入れる主義だ。
半分脅しだったり、大枚をばらまいたりしたこともある。
『庶民にだってココロはあるんです』
Princessの声が耳に残る。
まさに、彼女の心が欲しかった。
でもそれは、権力や金ではどうやっても手に入れられないものだ。
不意に、正装のジャケットの内側で、スマホが着信を告げた。
見れば液晶には“エドワード王子”の表示。
「……」
出れば告げられるであろう礼の言葉も、今の自分にとってはつらいだけだ。
このまま気付かないふりをしてしまいたいところだったが、相手が同盟国の王子となればそうもいくまい。
平静を保てと言い聞かせながら、キースは指を画面に滑らせた。
「はい」
「エドワードです。キース王子に早くお知らせしておいたほうがよいかと思いまして」
「……?」
“Princessがシャルルに残ると言っている”
“Princessと交際することになった”
キースは次の句に身構えた。
しかし、告げられたのは思いもよらない言葉。
「実は、こちらのパーティーにPrincessさんはいらしていません。電話がありまして、断られてしまいました」
「は? 断った? アイツが? いや、でもきちんと支度はさせて……」
キースはスマホを握り直した。
パーティーの時間に間に合うように、準備は整えた。
なんの不足もないはずだった。
「Princessさんは、今ごろお部屋でとまどっておられるのかもしれません。それで、余計なことかと思いましたが連絡を」
エドワードの言葉がぐるぐると頭を回りはじめる。
わからなかった。
少なくとも秋の日にはパーティーの誘いに喜んでいたし、ついこの間だって弱音をはくことなく、ダンスの特訓をしたばかりではないか。
「どうして、断りなんか」
独り言のようにつぶやくと、電話の向こうのエドワードが小さく笑う気配が感じられた。
「理由、ですか? 私よりも、Princessさんに直接お尋ねになったほうがよろしいかと思いますよ。……メリークリスマス、キース王子。今夜は素敵な夜になりそうですね」
途切れた電話をおさめると、キースは立ち尽くした。
視線を向けた窓の外の雪は、音もなく降り積もる。
キースは、広間を飛び出した。
廊下をゆく早足は、次第に駆け足になる。