あて先ちがいのラブレター/Keith・Alford
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5杯目のブランデーが少なくなっても、キースは眠れそうになかった。
小さなころから、気になる子には意地悪をしてしまう性格だ。
エレメンタリースクールでは、興味を引きたいがためにちょっかいを出し、泣かせ続けた女の子が、ある日突然、来なくなった。
転校したと聞かされた。
ショックだった。
ずいぶんあとから、王子である自分がその子を気に入らないからいじめている、でも身分の違いから、女の子のほうを転校させざるを得ないと聞いて、子どもなりに二重にショックを受けた。
気に入らなかったわけじゃない。
むしろ、好きだったのに。
また同じ過ちをしているのは明白だった。
Princessの、怒り泣きの顔がまぶたに浮かんだ。
なりゆきで連れてきた女は生意気で気に入らなかったが、次第におもしろいと思うようになった。
自分の取り巻きの女はみんな、次期王妃の地位を狙って、しなだれかかってくるヤツラばかりだ。
機嫌を損なわないように、自分が何をしようが大げさに褒めたたえ、体の出ているところやくびれたところを押し付けてくるだけの、空っぽな女たち。
うんざりだった。
けれどPrincessは違った。
まっすぐに自分の意思を持って、意に反することは頑として首を縦に振らない。なびかない。
人としての手ごたえがあった。
もしかしたら、この女となら同じ未来を見つめていけるかもしれない。
そう思った矢先に、手紙を拾った。
要するに、単純な“嫉妬”だ。
他の男とクリスマスを過ごすなんて、許せなかった。
とっさに、手紙の弱みにつけこんで、Princessを服従させようと思いついた。
想いとはまったく逆なのに。
いつでもそばにいろ。
呼ぶのは、会いたいからだ。
早く来いとつい、強い口調で言うのも、一秒でも早く会いたいからだ。
お前が……好きだ。
そう、素直に言えたなら。
「……ったく、いつまでガキなんだよ、俺は」
キースは、スマホを取り出した。Princessの番号を選択してタップする。
無視されても仕方ないと腹を決め、根気強くコールを数えていると、10回を過ぎてPrincessの細い声と繋がった。
「はい……」
「キースだ。昼間は……その、悪かった。お前に用事がある。これが最後だ。大広間に来い」
泣いていたのか、沈黙の合間に、鼻をすする音が混じる。
「わかりました。今、行きます」
これまで反抗を重ねてきたPrincessの従順な返事が、なおさらに、最後のときを感じさせた。
嫌われているとわかっていた。
でも、全部、自分が撒いた種だった。
想いは通じなくても、決着はつける。
キースは、あの日Princessから取り上げた手紙を懐に忍ばせて、大広間に向かった。
小さなころから、気になる子には意地悪をしてしまう性格だ。
エレメンタリースクールでは、興味を引きたいがためにちょっかいを出し、泣かせ続けた女の子が、ある日突然、来なくなった。
転校したと聞かされた。
ショックだった。
ずいぶんあとから、王子である自分がその子を気に入らないからいじめている、でも身分の違いから、女の子のほうを転校させざるを得ないと聞いて、子どもなりに二重にショックを受けた。
気に入らなかったわけじゃない。
むしろ、好きだったのに。
また同じ過ちをしているのは明白だった。
Princessの、怒り泣きの顔がまぶたに浮かんだ。
なりゆきで連れてきた女は生意気で気に入らなかったが、次第におもしろいと思うようになった。
自分の取り巻きの女はみんな、次期王妃の地位を狙って、しなだれかかってくるヤツラばかりだ。
機嫌を損なわないように、自分が何をしようが大げさに褒めたたえ、体の出ているところやくびれたところを押し付けてくるだけの、空っぽな女たち。
うんざりだった。
けれどPrincessは違った。
まっすぐに自分の意思を持って、意に反することは頑として首を縦に振らない。なびかない。
人としての手ごたえがあった。
もしかしたら、この女となら同じ未来を見つめていけるかもしれない。
そう思った矢先に、手紙を拾った。
要するに、単純な“嫉妬”だ。
他の男とクリスマスを過ごすなんて、許せなかった。
とっさに、手紙の弱みにつけこんで、Princessを服従させようと思いついた。
想いとはまったく逆なのに。
いつでもそばにいろ。
呼ぶのは、会いたいからだ。
早く来いとつい、強い口調で言うのも、一秒でも早く会いたいからだ。
お前が……好きだ。
そう、素直に言えたなら。
「……ったく、いつまでガキなんだよ、俺は」
キースは、スマホを取り出した。Princessの番号を選択してタップする。
無視されても仕方ないと腹を決め、根気強くコールを数えていると、10回を過ぎてPrincessの細い声と繋がった。
「はい……」
「キースだ。昼間は……その、悪かった。お前に用事がある。これが最後だ。大広間に来い」
泣いていたのか、沈黙の合間に、鼻をすする音が混じる。
「わかりました。今、行きます」
これまで反抗を重ねてきたPrincessの従順な返事が、なおさらに、最後のときを感じさせた。
嫌われているとわかっていた。
でも、全部、自分が撒いた種だった。
想いは通じなくても、決着はつける。
キースは、あの日Princessから取り上げた手紙を懐に忍ばせて、大広間に向かった。