あしたのキミも愛してる/Will.A.Spencer
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~Claude Side~
身の回りのものは、小さなトランクひとつに収まった。
扉の鍵穴にキーを差し込む前に、住み慣れた部屋をぐるりと見渡す。
残した本は、あとから送らせればいいだろう。
思えばウィル様にお仕えせよとこの城に来て以来、長い時が流れた。
とはいえ、いま、城を離れるのだという特別な感慨はない。
私の居場所は常に主の傍らであり、どこであろうと主が在る場所こそ、私の居場所であるからだ。
古びてきしむドアを閉めて鍵を回し、私は城の裏門に繋がる階段を下りた。
昨夜、101代目の王の即位を祝うパーティーが開かれたばかりで、執事やメイドたちは後片付けにせわしなく動き回っているせいか、執事服でない私には気付きもしない。
しかし、そのほうがひっそりと城を離れるにはちょうどいいというものだ。
もちろん、101代目のフィリップ王はウィル様のご子息であられる。
ウィル様亡き後、フィリップの国政のトップとなったのはウィル様の実兄スティーヴ様だった。
ウィル様は、スティーヴ様が101代目の王となってフィリップを治めるようにとご遺言を遺された。
自らのお子様はまだ幼いがゆえに政治を執れず、スペンサー家が王位を継ぎ続けるためにはほかに方法がないとのご判断だったのだろう。
けれども、スティーヴ様はあくまで100代目の王ウィル・A・スペンサーの代理であるとの立場を国内外で貫かれ、ウィル様のご長男が成人し、ご即位なさると同時にその職を辞した。
医者になりたいと王家を飛び出し、ウィル様に王位を押し付け、不条理な運命を背負わせてしまった、スティーヴ様なりの償いのおつもりだったのかもしれない。
Princess様はといえば、国政には極力口をださず、しかし見守り、お子様たちの教育に力を注がれた。
しばしば街に連れ出して国民の生活に触れさせると同時に、王族としての使命を語って聞かせ、学ばせ、国民に敬愛される王になるようにと心を砕かれた。
当然、独り歩んでこられた王妃としての道は険しく、寝室から漏れ聞こえる嗚咽を聞いた者は少なくない。
若くして夫を亡くし健気にも国を支えようとする妃の姿は、地位ある男性の心をとらえ、求婚も絶え間なかった。
でも、そのたびにPrincess様は
「夫以外に愛する人はいません。彼は今もここに生きています」
と胸に手のひらを当てて、優雅に微笑まれた。
昨日、Princess様はお子様がご立派に101代目の王となったのを見届けて、やっと肩の荷を下ろされたのだろう。
かねてより、役割を終えたらすぐに城を去るのだとおっしゃっていた。
ウィル様を想って、余生をおだやかに過ごすのが願いだと……
そして、今日、Princess様は、南の離宮へと移られる。
身の回りのものは、小さなトランクひとつに収まった。
扉の鍵穴にキーを差し込む前に、住み慣れた部屋をぐるりと見渡す。
残した本は、あとから送らせればいいだろう。
思えばウィル様にお仕えせよとこの城に来て以来、長い時が流れた。
とはいえ、いま、城を離れるのだという特別な感慨はない。
私の居場所は常に主の傍らであり、どこであろうと主が在る場所こそ、私の居場所であるからだ。
古びてきしむドアを閉めて鍵を回し、私は城の裏門に繋がる階段を下りた。
昨夜、101代目の王の即位を祝うパーティーが開かれたばかりで、執事やメイドたちは後片付けにせわしなく動き回っているせいか、執事服でない私には気付きもしない。
しかし、そのほうがひっそりと城を離れるにはちょうどいいというものだ。
もちろん、101代目のフィリップ王はウィル様のご子息であられる。
ウィル様亡き後、フィリップの国政のトップとなったのはウィル様の実兄スティーヴ様だった。
ウィル様は、スティーヴ様が101代目の王となってフィリップを治めるようにとご遺言を遺された。
自らのお子様はまだ幼いがゆえに政治を執れず、スペンサー家が王位を継ぎ続けるためにはほかに方法がないとのご判断だったのだろう。
けれども、スティーヴ様はあくまで100代目の王ウィル・A・スペンサーの代理であるとの立場を国内外で貫かれ、ウィル様のご長男が成人し、ご即位なさると同時にその職を辞した。
医者になりたいと王家を飛び出し、ウィル様に王位を押し付け、不条理な運命を背負わせてしまった、スティーヴ様なりの償いのおつもりだったのかもしれない。
Princess様はといえば、国政には極力口をださず、しかし見守り、お子様たちの教育に力を注がれた。
しばしば街に連れ出して国民の生活に触れさせると同時に、王族としての使命を語って聞かせ、学ばせ、国民に敬愛される王になるようにと心を砕かれた。
当然、独り歩んでこられた王妃としての道は険しく、寝室から漏れ聞こえる嗚咽を聞いた者は少なくない。
若くして夫を亡くし健気にも国を支えようとする妃の姿は、地位ある男性の心をとらえ、求婚も絶え間なかった。
でも、そのたびにPrincess様は
「夫以外に愛する人はいません。彼は今もここに生きています」
と胸に手のひらを当てて、優雅に微笑まれた。
昨日、Princess様はお子様がご立派に101代目の王となったのを見届けて、やっと肩の荷を下ろされたのだろう。
かねてより、役割を終えたらすぐに城を去るのだとおっしゃっていた。
ウィル様を想って、余生をおだやかに過ごすのが願いだと……
そして、今日、Princess様は、南の離宮へと移られる。