ジュノーの祝福/Claude
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数年ぶりの再会に、時がたつのも忘れて語る母をふたりで見守り、気がつけば時計は22時を回っていた。
明日は、挙式の打ち合わせもある。
あまり夜更かしはできない。
クロードに連れられて、Princessは客室のある2階にあがった。
マホガニーの階段をのぼり、彼が装飾のないシンプルなドアの前で足をとめる。
「ここは私の部屋です。見てみますか?」
出会う前の彼が扉の向こうに息づいているのだと思うと、断る理由は見つからない。
「はい」と前のめりに即答すると、クロードの頬が緩んだ。
一歩足を踏み入れたPrincessは圧倒された。
机とベッド、小ぶりのクローゼット以外はすべて、本という本で埋め尽くされている。
「うわ……すごい本……」
「執事になりたくて、それなりに勉強をしていましたから」
クロードが、目を丸くしたPrincessを笑う。
ぐるりと部屋を見回したPrincessは、壁に掛けられた額縁に歩み寄った。
フィリップ王立バトラーアカデミーの卒業証書だ。
証書の隅には、写真が挟みこまれていた。
執事の服を着た若いクロードが演壇にたって、何かを述べているような写真。
「これは? 執事さんの服を着てますけど」
「ああ、執事服が制服なのです。卒業式のときに挨拶をしたときの写真です」
Princessは、しばし思いを巡らせる。
「それって、もしかして……首席ってことですよね?」
「ええ、そうです」
さらりと言ってのけるが、あの、世界でも最高峰の執事の学校でのトップとなると相当の実力のはずだ。
あらためて本棚を見ると、語学、マナー、調理、護身術、衣類の管理に至るまで、主の身の回りに必要な、広い範囲のジャンルの本がぎっしり詰め込まれている。
ウィル王子の専属執事になるべくしてなった、クロードの努力の証がこの部屋に満ちていた。
「父も、フィリップ王室の執事でした。フィリップ王に仕える一流の執事になりたがっていました。こころざし半ばで、病気で死んでしまったが」
クロードが、証書を見上げるPrincessの隣に立った。
彼の執事に就くまでの軌跡を初めて知った。
アカデミーでもトップクラスでなければ、王室には勤められない。
クロードは、父の遺志をつごうとしていたのだ。
(でも、私を気遣ってウィル王子の執事をやめてしまって……)
もしかしたら、クロードは後悔しているのかもしれない。
仕えるならば、フィリップ王室にと望んでいたはずだ。
意識しなくても困惑が顔に出てしまっていたのだろうか。
「Princessが気にすることはありません。自分で決めたことです。それに、ノーブル様も私を認めてくださっています」
気遣うクロードが、額にキスを落とした。
「夜も更けた。そろそろ休みましょう」
「はい」
いつもの、夜のキス。
正確に言うならば甘い夜のはじまりのキスだ。
クロードが含みをもって口角をあげた。
「残念ながら、今夜はキスだけですよ?」
「か、からかわないでください!」
言いながらも、思考は勝手に、彼の唇が額から頬を伝い、鎖骨をなぞって胸へと落ちていく毎夜のさまを描いてしまう。
ウィルとの別れに乾いてしまった心と体に水と光を与え、潤し、そうしてクロードはPrincessをクロードなしではいられなくしたのだ。
明日は、挙式の打ち合わせもある。
あまり夜更かしはできない。
クロードに連れられて、Princessは客室のある2階にあがった。
マホガニーの階段をのぼり、彼が装飾のないシンプルなドアの前で足をとめる。
「ここは私の部屋です。見てみますか?」
出会う前の彼が扉の向こうに息づいているのだと思うと、断る理由は見つからない。
「はい」と前のめりに即答すると、クロードの頬が緩んだ。
一歩足を踏み入れたPrincessは圧倒された。
机とベッド、小ぶりのクローゼット以外はすべて、本という本で埋め尽くされている。
「うわ……すごい本……」
「執事になりたくて、それなりに勉強をしていましたから」
クロードが、目を丸くしたPrincessを笑う。
ぐるりと部屋を見回したPrincessは、壁に掛けられた額縁に歩み寄った。
フィリップ王立バトラーアカデミーの卒業証書だ。
証書の隅には、写真が挟みこまれていた。
執事の服を着た若いクロードが演壇にたって、何かを述べているような写真。
「これは? 執事さんの服を着てますけど」
「ああ、執事服が制服なのです。卒業式のときに挨拶をしたときの写真です」
Princessは、しばし思いを巡らせる。
「それって、もしかして……首席ってことですよね?」
「ええ、そうです」
さらりと言ってのけるが、あの、世界でも最高峰の執事の学校でのトップとなると相当の実力のはずだ。
あらためて本棚を見ると、語学、マナー、調理、護身術、衣類の管理に至るまで、主の身の回りに必要な、広い範囲のジャンルの本がぎっしり詰め込まれている。
ウィル王子の専属執事になるべくしてなった、クロードの努力の証がこの部屋に満ちていた。
「父も、フィリップ王室の執事でした。フィリップ王に仕える一流の執事になりたがっていました。こころざし半ばで、病気で死んでしまったが」
クロードが、証書を見上げるPrincessの隣に立った。
彼の執事に就くまでの軌跡を初めて知った。
アカデミーでもトップクラスでなければ、王室には勤められない。
クロードは、父の遺志をつごうとしていたのだ。
(でも、私を気遣ってウィル王子の執事をやめてしまって……)
もしかしたら、クロードは後悔しているのかもしれない。
仕えるならば、フィリップ王室にと望んでいたはずだ。
意識しなくても困惑が顔に出てしまっていたのだろうか。
「Princessが気にすることはありません。自分で決めたことです。それに、ノーブル様も私を認めてくださっています」
気遣うクロードが、額にキスを落とした。
「夜も更けた。そろそろ休みましょう」
「はい」
いつもの、夜のキス。
正確に言うならば甘い夜のはじまりのキスだ。
クロードが含みをもって口角をあげた。
「残念ながら、今夜はキスだけですよ?」
「か、からかわないでください!」
言いながらも、思考は勝手に、彼の唇が額から頬を伝い、鎖骨をなぞって胸へと落ちていく毎夜のさまを描いてしまう。
ウィルとの別れに乾いてしまった心と体に水と光を与え、潤し、そうしてクロードはPrincessをクロードなしではいられなくしたのだ。