ジュノーの祝福/Claude
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クロードが扉を開けると同時に、ソファから老女が立ち上がった。
腰が曲がって身体が支えられないのか、ソファの端をつかんだまま顔を向け、老いた母は柔らかく微笑んだ。
濃いグレーの髪も、瞳も、クロードと同じだ。
「はじめまして、私は……」
Princessは頭を下げる。
「ああ、ああ、クロードから聞いているよ。Princessさんだね。こっちに来てくれないかい」
母親の片手が伸ばされて、視線は当てなく宙をさまよった。
「……?」
クロードがPrincessの耳に唇を寄せる。
「母はもう目が見えない。近くに行ってあげて欲しい」
Princessはうなずいて、母の元に近づいた。
「私、Princessと申します。よろしくお願いします」
伸ばした手をとると、母は手のひらをPrincessの腕にそって上げ、頬に当てた。
「さぞ、かわいらしいお嬢さんなのだろうねぇ。見えないのが本当に残念だよ」
シワのある手のひらから、優しい体温が感じられた。
最愛の人はこの手にいだかれて育ったのだと思うと、胸に迫るものがこみ上げる。
「私はこんな風だけどねぇ、Princessさんのお荷物になるようなことはしないからねえ、
クロードをよろしく、よろしく頼みますねぇ」
母がPrincess手のひらを両手で握って背中を丸め、何度も頭を下げた。
「クロードさんのお母さん、そんな……こちらこそ、どうぞよろしくお願いします」
たったひとり、この館で、毎日クロードの幸せを願いながら過ごしていた母の思いが痛いほどだった。
Princessは母の背中を支えながら、再びソファに座るように促した。
「今日はいい日だ、本当にいい日だねえ」
見えない目を潤ませる母に、クロードが大げさだと肩を上げてあきれるけれど、その声音は優しい。
「ところで、手紙は届いている? こっちにもナンシーから1か月に一度は来てる。元気そうで安心していた」
クロードがPrincessにソファを勧めながら、自らも腰掛ける。
「ああ、ナンシーが読み上げてくれているよ。仕事も順調なんだね。お父さんも生きていたら喜ぶだろうに」
母は、ほぅと息をついた。
そんなふたりの会話に、Princessはハッと体を揺らした。
そうか、老いた母親は目が見えない。
だから、メイドのナンシーを介してやりとりするしかなかったのだ。
クロードが時間をかけて書いていた手紙は、母宛のものだ。
Princessはうなだれた。
ほんの少しでもクロードを疑った自分。
心をむしばむ猜疑に苦しむなら、もっと早く、はっきりとクロードに聞けばよかった。
彼と結婚しようとまでしているのに、肝心なところが口に出せずにいて、長い間、勝手に煮詰まって、勝手に誤解して。
クロードに知られずとも、彼への申し訳なさがせりあがる。
「……」
Princessは傍らのクロードの手に、無言で手のひらを重ねた。
腰が曲がって身体が支えられないのか、ソファの端をつかんだまま顔を向け、老いた母は柔らかく微笑んだ。
濃いグレーの髪も、瞳も、クロードと同じだ。
「はじめまして、私は……」
Princessは頭を下げる。
「ああ、ああ、クロードから聞いているよ。Princessさんだね。こっちに来てくれないかい」
母親の片手が伸ばされて、視線は当てなく宙をさまよった。
「……?」
クロードがPrincessの耳に唇を寄せる。
「母はもう目が見えない。近くに行ってあげて欲しい」
Princessはうなずいて、母の元に近づいた。
「私、Princessと申します。よろしくお願いします」
伸ばした手をとると、母は手のひらをPrincessの腕にそって上げ、頬に当てた。
「さぞ、かわいらしいお嬢さんなのだろうねぇ。見えないのが本当に残念だよ」
シワのある手のひらから、優しい体温が感じられた。
最愛の人はこの手にいだかれて育ったのだと思うと、胸に迫るものがこみ上げる。
「私はこんな風だけどねぇ、Princessさんのお荷物になるようなことはしないからねえ、
クロードをよろしく、よろしく頼みますねぇ」
母がPrincess手のひらを両手で握って背中を丸め、何度も頭を下げた。
「クロードさんのお母さん、そんな……こちらこそ、どうぞよろしくお願いします」
たったひとり、この館で、毎日クロードの幸せを願いながら過ごしていた母の思いが痛いほどだった。
Princessは母の背中を支えながら、再びソファに座るように促した。
「今日はいい日だ、本当にいい日だねえ」
見えない目を潤ませる母に、クロードが大げさだと肩を上げてあきれるけれど、その声音は優しい。
「ところで、手紙は届いている? こっちにもナンシーから1か月に一度は来てる。元気そうで安心していた」
クロードがPrincessにソファを勧めながら、自らも腰掛ける。
「ああ、ナンシーが読み上げてくれているよ。仕事も順調なんだね。お父さんも生きていたら喜ぶだろうに」
母は、ほぅと息をついた。
そんなふたりの会話に、Princessはハッと体を揺らした。
そうか、老いた母親は目が見えない。
だから、メイドのナンシーを介してやりとりするしかなかったのだ。
クロードが時間をかけて書いていた手紙は、母宛のものだ。
Princessはうなだれた。
ほんの少しでもクロードを疑った自分。
心をむしばむ猜疑に苦しむなら、もっと早く、はっきりとクロードに聞けばよかった。
彼と結婚しようとまでしているのに、肝心なところが口に出せずにいて、長い間、勝手に煮詰まって、勝手に誤解して。
クロードに知られずとも、彼への申し訳なさがせりあがる。
「……」
Princessは傍らのクロードの手に、無言で手のひらを重ねた。