通り雨は虹をつれて/Claude
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Princessは家路を急いだ。
早足が、アパルトマンが迫るにつれ、駆け足になる。
クロードに伝えたいことが、Princessの胸にあふれていた。
この2年、振り向けばいつも、クロードがそばにいた。
毎朝、一緒にキッチンに立って作る朝食は、どんなときでもクロードのほうが手際がよかった。
遠慮がちにソファの両端に座りあって、映画を見て笑い、泣き、夜明け近くまで過ごしたこともあった。
晴れた休日に、サンドイッチを持って、公園でゆったりと語り、まどろむのは、もうお決まりのプランだ。
クロードに救われた。
ウィルとの別れで負った、背中までえぐられるほどの深い胸の傷は、いつの間にか癒えていた。
なのに、ひとことのお礼すら、彼に言っていなかった。
今日、たった今気付いたばかりの、もっともっと大切なことも。
玄関の扉を開けると、朝きれてしまった電球はすでに取り替えられ、明るい光を放っていた。
リビングの奥のクロードが、息を切らしたPrincessに目を見ひらく。
ちょうど白い花に水遣りをしていた彼は、小ぶりのじょうろを手にしている。
「ああ、お帰りなさいませ。にわか雨がきそうな気配でしたので、お店までお迎えに上がろうかと思っていたところでしたよ。……いかがなさいました?」
肩をしきりに上下させるPrincessに、クロードが怪訝そうに首を傾げる。
クロードの背後の窓には、雨雲が広がりつつあった。
「ウィルが……ウィルがお店に来ました」
クロードは小さく体を揺らした。
ゆっくりと水差しをテーブルに置く。
潮騒に似た音をつれて、細い雨が降り出した。
「さようで……ございますか。実は、知っていたのですよ、ウィル様がアナ様との婚約をおやめになったこと。ノーブルミッシェル城にもフィリップの情報は入ってきますから。……また、隠していたとPrincess様に叱られてしまうかもしれませんが」
クロードは額にかかる髪をかきあげて、わずかに笑った。
「ウィル様は、お妃になるべきかたについて、真剣に考えていらっしゃるのだと思いました。ですから……私とPrincess様とのお別れの日も近いだろう、と思っておりました。ゆくゆくは王妃になられるおかたを、今日この日までお守りできて、光栄でございました。本当にようございました、Princess様」
クロードが手のひらを胸に当てて、腰を折った。
Princessがまだ何も言わないというのに、クロードはウィルがPrincessに会いにきたわけを見通している。
「違います。確かにウィルに、もう一度やり直そうとは言われましたが、お断りしました」
「はっ?」
Princessの言葉に、クロードはバネがついたように体を戻した。
平常のPrincessに対して、クロードは明らかに動揺している。
「断った? 何をおっしゃっているのです? あのウィル様からのお申し出ですよ?世界中の女性たちが、あのかたに愛されたいと願っているのに?」
「はい、断りました」
落ち着いてくださいと言いながら、落ち着いていないのはクロードのほうだった。
「Princess様、ウィル様は貴女に別れをお告げになりました。でも、私は長くおそばに仕えておりましたから、わかっておりました。ウィル様が、最後にお妃として選ぶのは貴女だと。ウィル様は、貴女との別れを本気で悔やんでいらっしゃいます。王妃としての気質も、ウィル様が絶対の愛情を注げるお相手としても、貴女以上のかたはいらっしゃいません」
「そうだとしても、もう、断っちゃいましたから」
あっけらかんとした口調で肩を上げて見せるPrincessに、クロードがため息とともに天を仰ぐ。
「あり得ません……なぜそのような。貴女こそ、望んでいたではありませんか」
なぜ。
なぜ、ウィルからの申し出を断ったのか。
今は理由がはっきりとわかっていた。
Princessはゆっくりと呼吸を整えてから、告げた。
「クロードさんのこと、好きだって気付いたから、です」
早足が、アパルトマンが迫るにつれ、駆け足になる。
クロードに伝えたいことが、Princessの胸にあふれていた。
この2年、振り向けばいつも、クロードがそばにいた。
毎朝、一緒にキッチンに立って作る朝食は、どんなときでもクロードのほうが手際がよかった。
遠慮がちにソファの両端に座りあって、映画を見て笑い、泣き、夜明け近くまで過ごしたこともあった。
晴れた休日に、サンドイッチを持って、公園でゆったりと語り、まどろむのは、もうお決まりのプランだ。
クロードに救われた。
ウィルとの別れで負った、背中までえぐられるほどの深い胸の傷は、いつの間にか癒えていた。
なのに、ひとことのお礼すら、彼に言っていなかった。
今日、たった今気付いたばかりの、もっともっと大切なことも。
玄関の扉を開けると、朝きれてしまった電球はすでに取り替えられ、明るい光を放っていた。
リビングの奥のクロードが、息を切らしたPrincessに目を見ひらく。
ちょうど白い花に水遣りをしていた彼は、小ぶりのじょうろを手にしている。
「ああ、お帰りなさいませ。にわか雨がきそうな気配でしたので、お店までお迎えに上がろうかと思っていたところでしたよ。……いかがなさいました?」
肩をしきりに上下させるPrincessに、クロードが怪訝そうに首を傾げる。
クロードの背後の窓には、雨雲が広がりつつあった。
「ウィルが……ウィルがお店に来ました」
クロードは小さく体を揺らした。
ゆっくりと水差しをテーブルに置く。
潮騒に似た音をつれて、細い雨が降り出した。
「さようで……ございますか。実は、知っていたのですよ、ウィル様がアナ様との婚約をおやめになったこと。ノーブルミッシェル城にもフィリップの情報は入ってきますから。……また、隠していたとPrincess様に叱られてしまうかもしれませんが」
クロードは額にかかる髪をかきあげて、わずかに笑った。
「ウィル様は、お妃になるべきかたについて、真剣に考えていらっしゃるのだと思いました。ですから……私とPrincess様とのお別れの日も近いだろう、と思っておりました。ゆくゆくは王妃になられるおかたを、今日この日までお守りできて、光栄でございました。本当にようございました、Princess様」
クロードが手のひらを胸に当てて、腰を折った。
Princessがまだ何も言わないというのに、クロードはウィルがPrincessに会いにきたわけを見通している。
「違います。確かにウィルに、もう一度やり直そうとは言われましたが、お断りしました」
「はっ?」
Princessの言葉に、クロードはバネがついたように体を戻した。
平常のPrincessに対して、クロードは明らかに動揺している。
「断った? 何をおっしゃっているのです? あのウィル様からのお申し出ですよ?世界中の女性たちが、あのかたに愛されたいと願っているのに?」
「はい、断りました」
落ち着いてくださいと言いながら、落ち着いていないのはクロードのほうだった。
「Princess様、ウィル様は貴女に別れをお告げになりました。でも、私は長くおそばに仕えておりましたから、わかっておりました。ウィル様が、最後にお妃として選ぶのは貴女だと。ウィル様は、貴女との別れを本気で悔やんでいらっしゃいます。王妃としての気質も、ウィル様が絶対の愛情を注げるお相手としても、貴女以上のかたはいらっしゃいません」
「そうだとしても、もう、断っちゃいましたから」
あっけらかんとした口調で肩を上げて見せるPrincessに、クロードがため息とともに天を仰ぐ。
「あり得ません……なぜそのような。貴女こそ、望んでいたではありませんか」
なぜ。
なぜ、ウィルからの申し出を断ったのか。
今は理由がはっきりとわかっていた。
Princessはゆっくりと呼吸を整えてから、告げた。
「クロードさんのこと、好きだって気付いたから、です」