通り雨は虹をつれて/Claude
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「久しぶりだね、Princess」
「……」
全身全霊で愛しぬいた末に失った人が、そこにいた。
恋しくて、恋しくて、眠れぬ夜を幾晩も越えた。
せめて夢で愛されたいと願っても、眠らないままに迎える早い夜明けがささやかな祈りを妨げた。
思わず数歩退いたPrincessに、ウィルの眉根がよる。
「いまさら何の用だと思われても当然だ。キミに伝えたいことがあって、探した。虫のいい頼みなのはわかっている。でも、どうしてもキミと……」
ウィルがいったん言葉を区切った。
アイスブルーの視線が、まっすぐPrincessを見つめる。
「キミとやり直したい」
しばしの沈黙が、週末の通りのざわめきで塗りかえられていく。
Princessは警戒するように、ウィルを上目遣いで見上げた。
他の女性と結婚を決めた彼が、なぜ復縁を求めるのか。
意味がわからなかった。
「アナさんは? あの人と結婚するのでしょう?」
「そのつもりだった。でも、うまくいかなかった。婚約は解消することになった。彼女も努力はしてくれていたとは思う。だけど……」
ウィルは言葉を詰まらせた。
多くの理由を語れないのだろう。
一般人が王室に嫁ぐことの困難さは、容易に想像できた。
お互いに愛し合いながらも別れを選択せざるを得なかったふたりに、気づけばPrincessは静かな同情を寄せているだけだった。
寄り添い、微笑む彼らを思うたびに感じた身がちりちりと焦げる苦しみは、いつの間にか流れ消えた過去にすぎなくなっていた。
「メイドたちに好かれ、王族の皆にも認められていたキミは、俺のために本当に努力してくれていたのだと考えれば考えるほど、キミが愛おしく思い出されて……悔やむようになって……頼む、俺のところに戻ってきて欲しい」
Princess、とささやいたウィルが、ふわりとPrincessを胸に収めた。
懐かしい香り。
温かい腕。
気が狂いそうになるほど求めたぬくもりの中にPrincessはいた。
なのに、心はさざ波ひとつ、たたなかった。
理由を疑問に思うよりも、ひとつの確信がPrincessの胸にすとんと落ちた。
Princessはウィルの胸をそっと押し戻した。
「ごめんなさい、ウィル。遅かった……です。私、ずっとあなたのそばにいたかった。でもウィルが手を離して……いえ、恨んでいるわけじゃないんです。もう、過ぎたことですから。つらくて、死んじゃうかもしれないって思ったこともあったけど……ウィルが迎えにくるのを待っていたときもあったけど……これが私とウィルの結末だったんだって、今はそう思えます」
Princessは視線を伏せて告げた。
偽りのない気持ちだった。
「そうか。そんなふうにキミに思わせたのは……クロード?」
Princessが、はっと顔を上げると、ウィルは優しい笑みを浮かべている。
「驚いたよ。クロードと暮らしてるって知ったときは。アイツ、辞めるの一点張りで理由も言わなかったから。何かあるとは思っていたけど……Princessのためだったわけだ」
ウィルの細い指が、Princessの頬に触れた。
「きれいになった、Princess。しばらく見ないうちに、一段と。もし、最後の願いが叶うなら……」
透明な瞳の中にPrincessが映っていた。
「これ以上きれいにならないで? 街で見かけたとき、きっと俺はまたキミに恋をしてしまうから」
ウィルは宙を仰いで息を吐き、それからPrincessを見つめ、唇を結んだ。
「心から、キミの幸せを祈っている」
すっと差し出された手にPrincessは手のひらを重ねた。
握り返される強い力。
何度もこの手に身をゆだねた夜はもう、彼方の思い出。
「ありがとうございます、ウィルもどうかお元気で」
夕暮れ近い光が、ふたりをほろほろと優しく包んでいた。
「……」
全身全霊で愛しぬいた末に失った人が、そこにいた。
恋しくて、恋しくて、眠れぬ夜を幾晩も越えた。
せめて夢で愛されたいと願っても、眠らないままに迎える早い夜明けがささやかな祈りを妨げた。
思わず数歩退いたPrincessに、ウィルの眉根がよる。
「いまさら何の用だと思われても当然だ。キミに伝えたいことがあって、探した。虫のいい頼みなのはわかっている。でも、どうしてもキミと……」
ウィルがいったん言葉を区切った。
アイスブルーの視線が、まっすぐPrincessを見つめる。
「キミとやり直したい」
しばしの沈黙が、週末の通りのざわめきで塗りかえられていく。
Princessは警戒するように、ウィルを上目遣いで見上げた。
他の女性と結婚を決めた彼が、なぜ復縁を求めるのか。
意味がわからなかった。
「アナさんは? あの人と結婚するのでしょう?」
「そのつもりだった。でも、うまくいかなかった。婚約は解消することになった。彼女も努力はしてくれていたとは思う。だけど……」
ウィルは言葉を詰まらせた。
多くの理由を語れないのだろう。
一般人が王室に嫁ぐことの困難さは、容易に想像できた。
お互いに愛し合いながらも別れを選択せざるを得なかったふたりに、気づけばPrincessは静かな同情を寄せているだけだった。
寄り添い、微笑む彼らを思うたびに感じた身がちりちりと焦げる苦しみは、いつの間にか流れ消えた過去にすぎなくなっていた。
「メイドたちに好かれ、王族の皆にも認められていたキミは、俺のために本当に努力してくれていたのだと考えれば考えるほど、キミが愛おしく思い出されて……悔やむようになって……頼む、俺のところに戻ってきて欲しい」
Princess、とささやいたウィルが、ふわりとPrincessを胸に収めた。
懐かしい香り。
温かい腕。
気が狂いそうになるほど求めたぬくもりの中にPrincessはいた。
なのに、心はさざ波ひとつ、たたなかった。
理由を疑問に思うよりも、ひとつの確信がPrincessの胸にすとんと落ちた。
Princessはウィルの胸をそっと押し戻した。
「ごめんなさい、ウィル。遅かった……です。私、ずっとあなたのそばにいたかった。でもウィルが手を離して……いえ、恨んでいるわけじゃないんです。もう、過ぎたことですから。つらくて、死んじゃうかもしれないって思ったこともあったけど……ウィルが迎えにくるのを待っていたときもあったけど……これが私とウィルの結末だったんだって、今はそう思えます」
Princessは視線を伏せて告げた。
偽りのない気持ちだった。
「そうか。そんなふうにキミに思わせたのは……クロード?」
Princessが、はっと顔を上げると、ウィルは優しい笑みを浮かべている。
「驚いたよ。クロードと暮らしてるって知ったときは。アイツ、辞めるの一点張りで理由も言わなかったから。何かあるとは思っていたけど……Princessのためだったわけだ」
ウィルの細い指が、Princessの頬に触れた。
「きれいになった、Princess。しばらく見ないうちに、一段と。もし、最後の願いが叶うなら……」
透明な瞳の中にPrincessが映っていた。
「これ以上きれいにならないで? 街で見かけたとき、きっと俺はまたキミに恋をしてしまうから」
ウィルは宙を仰いで息を吐き、それからPrincessを見つめ、唇を結んだ。
「心から、キミの幸せを祈っている」
すっと差し出された手にPrincessは手のひらを重ねた。
握り返される強い力。
何度もこの手に身をゆだねた夜はもう、彼方の思い出。
「ありがとうございます、ウィルもどうかお元気で」
夕暮れ近い光が、ふたりをほろほろと優しく包んでいた。