通り雨は虹をつれて/Claude
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不意に、クロードが体を揺らしてキッチンに駆け込んだ。
鼻をつく焼けきったにおいがリビングにまでただよっている。
「焦げてしまいましたね」
言いながらクロードは、グラタンをオーブンから取り出すと、コルクのマットの上に置いて、それからひとり、食卓についた。
「捨ててください。そんなもの」
立ち尽くし、つぶやくPrincessに、クロードは寂しげな笑みを浮かべた。
彼がグラタンをすくいあげるフォークをとめる気配はなかった。
淡々と、焦げたホワイトソースを口に運ぶ。
「やめてくださいったら。まずいですから」
口調が強くなる。
しかしクロードは顔を上げて、穏やかな視線をPrincessに向けた。
「それが不思議なのですよ。あなたが私のために作ってくださったと思うと、どんなものでも……焦げていても、おいしく感じてしまうのです。ですから、このままいただいてもよろしいでしょうか」
クロードのまなざしに偽りはないと知りながら、頑なな心は解けなかった。
「まずいものは、まずいって言って! 同情なんてしないでください!」
語気荒く言うと、Princessはテーブルの上のグラタンを苛立ちのままに弾き飛ばした。
陶器が甲高い音をたてて、床に落ちて砕ける。
限界だった。
心の糸がまた、切れてしまった。
まぶたが一気に熱くなって、涙がこぼれる。
Princessは両手で顔を覆った。
「……帰ってください。無理、ウィルを忘れるなんて……クロードさんからウィルの香りがする気がするんです。嫌なの……つらいんです。耐えられない。もう、私にかまわないで」
クロードが執事の服のままで、この部屋に来たことは一度たりともないのに。
彼なりの気遣いをわかっていたのに。
ウィルに傷つけられたからといって、クロードを傷つけていい理由はないというのに。
わかっていながら、身勝手な言葉が止まらない。
(最低だ……私……)
自己嫌悪に、Princessは泣きながら頭をこぶしでたたいた。
ウィルも、アナも、クロードさえも嫌いだった。
そしてだれよりも、そんな風に思ってしまう自分が嫌いだった。
「やだっ、もう、やだっ……」
「おやめください、Princess様」
頭を打ち続ける両の手首を、後ろから掴まれた。
腕ごと、ぎゅっと抱き包むあたたかい胸。
クロードの低く、穏やかなテノールがPrincessの耳に響いた。
「Princess様……」
もう一段、彼の腕が力を増した。
クロードの頬がPrincessの黒髪に触れる。
「……一緒に、暮らしませんか。私は、こんなあなたを見ていられません。かつての貴女に戻られる日まででいいですから」
「……クロードさん」
Princessは、回されたクロードの腕を抱え込んだ。
うつむけば、涙のしずくがクロードのシャツのそでをみるみる濡らしていく。
「申し訳ございませんでした。ウィル様のご婚約をお知らせしなかったこと。伝えてしまえば、あなたがまた泣いてしまうと思ったら……永久に知らないほうがいいと思ってしまいました。そんなこと、できるはずもありませんのに」
ひとことひとことをつむぐように告げる、苦しげな声音だった。
Princessはクロードに向き直って、彼の背中に腕を回した。
「クロードさん……クロードさんっ、クロードさんっ」
ごめんなさい、ありがとう、思いはあふれてくるのに、何一つ言葉にならなかった。
Princessはただ、クロードの胸に顔をうずめ、彼の名を呼び続けた。
鼻をつく焼けきったにおいがリビングにまでただよっている。
「焦げてしまいましたね」
言いながらクロードは、グラタンをオーブンから取り出すと、コルクのマットの上に置いて、それからひとり、食卓についた。
「捨ててください。そんなもの」
立ち尽くし、つぶやくPrincessに、クロードは寂しげな笑みを浮かべた。
彼がグラタンをすくいあげるフォークをとめる気配はなかった。
淡々と、焦げたホワイトソースを口に運ぶ。
「やめてくださいったら。まずいですから」
口調が強くなる。
しかしクロードは顔を上げて、穏やかな視線をPrincessに向けた。
「それが不思議なのですよ。あなたが私のために作ってくださったと思うと、どんなものでも……焦げていても、おいしく感じてしまうのです。ですから、このままいただいてもよろしいでしょうか」
クロードのまなざしに偽りはないと知りながら、頑なな心は解けなかった。
「まずいものは、まずいって言って! 同情なんてしないでください!」
語気荒く言うと、Princessはテーブルの上のグラタンを苛立ちのままに弾き飛ばした。
陶器が甲高い音をたてて、床に落ちて砕ける。
限界だった。
心の糸がまた、切れてしまった。
まぶたが一気に熱くなって、涙がこぼれる。
Princessは両手で顔を覆った。
「……帰ってください。無理、ウィルを忘れるなんて……クロードさんからウィルの香りがする気がするんです。嫌なの……つらいんです。耐えられない。もう、私にかまわないで」
クロードが執事の服のままで、この部屋に来たことは一度たりともないのに。
彼なりの気遣いをわかっていたのに。
ウィルに傷つけられたからといって、クロードを傷つけていい理由はないというのに。
わかっていながら、身勝手な言葉が止まらない。
(最低だ……私……)
自己嫌悪に、Princessは泣きながら頭をこぶしでたたいた。
ウィルも、アナも、クロードさえも嫌いだった。
そしてだれよりも、そんな風に思ってしまう自分が嫌いだった。
「やだっ、もう、やだっ……」
「おやめください、Princess様」
頭を打ち続ける両の手首を、後ろから掴まれた。
腕ごと、ぎゅっと抱き包むあたたかい胸。
クロードの低く、穏やかなテノールがPrincessの耳に響いた。
「Princess様……」
もう一段、彼の腕が力を増した。
クロードの頬がPrincessの黒髪に触れる。
「……一緒に、暮らしませんか。私は、こんなあなたを見ていられません。かつての貴女に戻られる日まででいいですから」
「……クロードさん」
Princessは、回されたクロードの腕を抱え込んだ。
うつむけば、涙のしずくがクロードのシャツのそでをみるみる濡らしていく。
「申し訳ございませんでした。ウィル様のご婚約をお知らせしなかったこと。伝えてしまえば、あなたがまた泣いてしまうと思ったら……永久に知らないほうがいいと思ってしまいました。そんなこと、できるはずもありませんのに」
ひとことひとことをつむぐように告げる、苦しげな声音だった。
Princessはクロードに向き直って、彼の背中に腕を回した。
「クロードさん……クロードさんっ、クロードさんっ」
ごめんなさい、ありがとう、思いはあふれてくるのに、何一つ言葉にならなかった。
Princessはただ、クロードの胸に顔をうずめ、彼の名を呼び続けた。