ブルー×ブルー(3)/Will.A.Spencer
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ウィルが音をたてないように、そっと扉を閉じる。
「寝ました? すみません。寝かしつけなんてさせてしまって。いつもはひとりでちゃんと寝るんですけど。今日は興奮していたみたいで」
Princessはふふっと笑いながら、グラスをテーブルに置いた。
「かまわない。自分の子だ」
ウィルが長身を折って、ソファに座る。
ちょうど冷えて飲み頃になったシャンパーニュを彼があけて、グラスに注いだ。
遠慮がちにソファの端に腰を下ろしたPrincessをウィルが引き寄せる。
「もっとこっちにおいで」
彼の瞳が妖艶すぎて、Princessはどぎまぎとしてしまう。
「俺たちのウィルの健やかな成長を祈って……乾杯」
グラスを掲げたあと、輝く金色の液体が、細かくさえずりながら美しい人の唇に送り込まれるさまにPrincessはみとれた。
出会ったときと変わらない凛とした面持ちは、流れた月日を感じさせない。
彼は、昔も今も、そのしぐさで、まなざしで、Princessの心を簡単に奪っていくのだ。
ウィルがグラスを置いた。
「Princess、俺はまだキミにきちんと謝っていない。俺が気持ちを押し付けたせいで、キミの人生を狂わせた。キミがたったひとりで、ウィルをあんなに素直でいい子に育ててくれていたのに、何も知らずにのうのうと暮らしていたのかと思うと詫びる言葉も見つからない。本当にすまなかった」
「そんな……謝らないでください。私、ウィル王子の子どもを産めて、すごく嬉しくて……幸せです。この気持ちを、この生き方をくださったのはウィル王子です。ありがとうございます」
Princessはまっすぐにウィルを見て言い切った。
つらいこともあった。
すべてを投げ出したいと思ったこともあった。
しかし、小さなウィルが自分だけを頼りにしがみついてくる姿に励まされ、奮起して、乗り越えてきた。
我が子を守るためにする苦労は、苦労にもならなかった。
幼いウィルを愛するのは、最愛のウィルを愛するのと同じだった。
愛があれば、無限の力が湧き上がるということをふたりがPrincessに教えたのだ。
「Princess、キミさえよければ、俺がこの部屋に通うことを許して欲しい。ウィルの成長をキミと一緒に見守りたい。俺は、ずっとキミだけを想ってきた。もう会えないと……会ってもしかたないと……わかってはいたが、それでも会いたくて、祈り続けてきた」
ウィルの指が、Princessのほほをなでる。
「……愛してる、Princess。俺は、キミしか愛せない。キミは……キミはまだ、俺のことを愛してくれている?」
Princessはさぐるように揺れるサファイアの瞳に、吸い込まれそうになる。
彼の目がにじんでみえて、Princessは自分が泣いていることに気付いた。
もし、愛している以上の愛の言葉があるなら伝えたいのに見つけられない。
応えのかわりに、Princessはウィルのなだらかな肩に頭をあずける。
ウィルの手のひらが、髪を撫でた。
髪の一本一本すらいとおしむような、丁寧な愛撫だった。
「俺は、この先、キミ以外の誰かと結婚しない。でも、キミたちを城に迎えるにはもう少し時間がかかる。セシルへの配慮もあって……結婚したあとも、”プリンセス・オブ・フィリップ”の称号まではPrincessに与えられないと思う」
「はい」
Princessは目を閉じる。
城での暮らしも、称号も、望まない。
彼の腕の中で幼いウィルと3人で笑いあえるのなら、ほかの何を失おうと惜しくはなかった。
触れた肩に耳をよせれば、いとしい人の鼓動が伝わってくる。
「俺がキミにあげられるのは、この気持ちだけだ。それでも、俺と共に生きて欲しい」
「はい」
YES以外のこたえなんてあるわけがなかった。
王妃になりたいのではない。
ただ、ウィルからの愛が欲しかっただけだ。
ただ、互いに、だれにはばかることなく、心から愛しあいたいだけだ。
ウィルの指があごにそえられて、唇が近づく。
「愛してる、Princess……愛してる……」
ウィルが実ったあの夜と変わらない、甘く、優しいキスが何度も落とされる。
「この言葉……忘れてしまったかと思っていた。嬉しいよ。また自分の口から、キミに言える日がくるなんて」
「ウィル王子……」
ウィルの指がPrincessのブラウスのボタンを外していく。
シルクのようになめらかな乳房が、ウィルの手に吸い付いた。
素肌をすべりおちる温かいぬくもりは、だんだんとPrincessの思考を混濁させ、会えなかった年月の寂しさを埋めていく。
彼の熱い唇と、繊細な指先によって押し寄せてくる波に、Princessはウィルの背中にまわした手に力をこめた。
ウィルが魅惑的なまなざしを向ける。
「Princess……ベッドへ。ウィルが眠ったあとは、おとなの時間だ」
夜明けが来なければいいと願ったウィルとの夜。
彼の腕の中で、窓にさす薄明に切なさをもてあました暁は二度と来ない。
抱き上げられたPrincessはウィルの肩に顔をうずめた。
ふと鈴の音が聞こえた気がして見回すと、窓際のブルーベルが冴えた月に磨かれて、その青さを増していた。
幼いウィルが抱えきれなかった、たくさんのブルーベルはPrincessの部屋を青く染めあげる。
「Princess…どうした?」
見上げれば、Princessを包む優しいまなざしもまた、透明なブルー。
「ううん、何でもないです。ただ……みんな青だなって。空か、海か、わからないけど……」
ウィルがくすりと笑った。
「なら……キミは漂えばいい。心も、体も……全部、俺にあずけて?」
ウィルがくれる甘美な時間。
言葉では伝えきれない深い想いを、めまいがするほどの互いの熱で確かめあう、幸せのとき。
(……ウィル王子……わたしだけの、ウィル……やっと……)
Princessはウィルの首に手をまわして、何度も彼の胸にほほをすり寄せる。
小さなアパルトマンには、ふたり重なり合って丘を転がり落ちたあの日と同じ、涼やかで甘いブルーベルの香りが満ちていた。
--- fin ---
「寝ました? すみません。寝かしつけなんてさせてしまって。いつもはひとりでちゃんと寝るんですけど。今日は興奮していたみたいで」
Princessはふふっと笑いながら、グラスをテーブルに置いた。
「かまわない。自分の子だ」
ウィルが長身を折って、ソファに座る。
ちょうど冷えて飲み頃になったシャンパーニュを彼があけて、グラスに注いだ。
遠慮がちにソファの端に腰を下ろしたPrincessをウィルが引き寄せる。
「もっとこっちにおいで」
彼の瞳が妖艶すぎて、Princessはどぎまぎとしてしまう。
「俺たちのウィルの健やかな成長を祈って……乾杯」
グラスを掲げたあと、輝く金色の液体が、細かくさえずりながら美しい人の唇に送り込まれるさまにPrincessはみとれた。
出会ったときと変わらない凛とした面持ちは、流れた月日を感じさせない。
彼は、昔も今も、そのしぐさで、まなざしで、Princessの心を簡単に奪っていくのだ。
ウィルがグラスを置いた。
「Princess、俺はまだキミにきちんと謝っていない。俺が気持ちを押し付けたせいで、キミの人生を狂わせた。キミがたったひとりで、ウィルをあんなに素直でいい子に育ててくれていたのに、何も知らずにのうのうと暮らしていたのかと思うと詫びる言葉も見つからない。本当にすまなかった」
「そんな……謝らないでください。私、ウィル王子の子どもを産めて、すごく嬉しくて……幸せです。この気持ちを、この生き方をくださったのはウィル王子です。ありがとうございます」
Princessはまっすぐにウィルを見て言い切った。
つらいこともあった。
すべてを投げ出したいと思ったこともあった。
しかし、小さなウィルが自分だけを頼りにしがみついてくる姿に励まされ、奮起して、乗り越えてきた。
我が子を守るためにする苦労は、苦労にもならなかった。
幼いウィルを愛するのは、最愛のウィルを愛するのと同じだった。
愛があれば、無限の力が湧き上がるということをふたりがPrincessに教えたのだ。
「Princess、キミさえよければ、俺がこの部屋に通うことを許して欲しい。ウィルの成長をキミと一緒に見守りたい。俺は、ずっとキミだけを想ってきた。もう会えないと……会ってもしかたないと……わかってはいたが、それでも会いたくて、祈り続けてきた」
ウィルの指が、Princessのほほをなでる。
「……愛してる、Princess。俺は、キミしか愛せない。キミは……キミはまだ、俺のことを愛してくれている?」
Princessはさぐるように揺れるサファイアの瞳に、吸い込まれそうになる。
彼の目がにじんでみえて、Princessは自分が泣いていることに気付いた。
もし、愛している以上の愛の言葉があるなら伝えたいのに見つけられない。
応えのかわりに、Princessはウィルのなだらかな肩に頭をあずける。
ウィルの手のひらが、髪を撫でた。
髪の一本一本すらいとおしむような、丁寧な愛撫だった。
「俺は、この先、キミ以外の誰かと結婚しない。でも、キミたちを城に迎えるにはもう少し時間がかかる。セシルへの配慮もあって……結婚したあとも、”プリンセス・オブ・フィリップ”の称号まではPrincessに与えられないと思う」
「はい」
Princessは目を閉じる。
城での暮らしも、称号も、望まない。
彼の腕の中で幼いウィルと3人で笑いあえるのなら、ほかの何を失おうと惜しくはなかった。
触れた肩に耳をよせれば、いとしい人の鼓動が伝わってくる。
「俺がキミにあげられるのは、この気持ちだけだ。それでも、俺と共に生きて欲しい」
「はい」
YES以外のこたえなんてあるわけがなかった。
王妃になりたいのではない。
ただ、ウィルからの愛が欲しかっただけだ。
ただ、互いに、だれにはばかることなく、心から愛しあいたいだけだ。
ウィルの指があごにそえられて、唇が近づく。
「愛してる、Princess……愛してる……」
ウィルが実ったあの夜と変わらない、甘く、優しいキスが何度も落とされる。
「この言葉……忘れてしまったかと思っていた。嬉しいよ。また自分の口から、キミに言える日がくるなんて」
「ウィル王子……」
ウィルの指がPrincessのブラウスのボタンを外していく。
シルクのようになめらかな乳房が、ウィルの手に吸い付いた。
素肌をすべりおちる温かいぬくもりは、だんだんとPrincessの思考を混濁させ、会えなかった年月の寂しさを埋めていく。
彼の熱い唇と、繊細な指先によって押し寄せてくる波に、Princessはウィルの背中にまわした手に力をこめた。
ウィルが魅惑的なまなざしを向ける。
「Princess……ベッドへ。ウィルが眠ったあとは、おとなの時間だ」
夜明けが来なければいいと願ったウィルとの夜。
彼の腕の中で、窓にさす薄明に切なさをもてあました暁は二度と来ない。
抱き上げられたPrincessはウィルの肩に顔をうずめた。
ふと鈴の音が聞こえた気がして見回すと、窓際のブルーベルが冴えた月に磨かれて、その青さを増していた。
幼いウィルが抱えきれなかった、たくさんのブルーベルはPrincessの部屋を青く染めあげる。
「Princess…どうした?」
見上げれば、Princessを包む優しいまなざしもまた、透明なブルー。
「ううん、何でもないです。ただ……みんな青だなって。空か、海か、わからないけど……」
ウィルがくすりと笑った。
「なら……キミは漂えばいい。心も、体も……全部、俺にあずけて?」
ウィルがくれる甘美な時間。
言葉では伝えきれない深い想いを、めまいがするほどの互いの熱で確かめあう、幸せのとき。
(……ウィル王子……わたしだけの、ウィル……やっと……)
Princessはウィルの首に手をまわして、何度も彼の胸にほほをすり寄せる。
小さなアパルトマンには、ふたり重なり合って丘を転がり落ちたあの日と同じ、涼やかで甘いブルーベルの香りが満ちていた。
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