ブルー×ブルー(3)/Will.A.Spencer
プリンセスの名前を設定できます⇒
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
絵本から抜け出たようなフィリップの王子とその妃の離婚には、世界中の人々が驚いたといっても過言ではない。
美しさも、公務で見せる仲の良さも、まさに理想のカップルだったふたりの想像もしなかった結末に誰もが原因を知りたがり、テレビも雑誌もその話題で持ちきりだった。
Princessは、小さなウィルの目を盗んではテレビをつけ、雑誌を買いあさった。
自分と子どもの存在が、ウィルたちの夫婦関係に決定的な打撃を与えたのは明白だったが、Princessはそのことが公になるのを怖れた。
勝手といわれようが、守るべきは我が子だった。
王子の不貞の子と、ウィルが後ろ指をさされるようなことがあればすぐにでも違う国に逃げるつもりで、スーツケースに必要なものだけを詰め込んで、毎日おびえていた。
しかし、ウィルに関わる女性についての報道は一切ないままに次第にフィリップを混乱させた出来事は収束していった。
Princessは、自分たちが平穏に暮らせるようにと、ウィルがあらゆる手を尽くしてくれたのではないのかと感じていた。
雑誌の表紙に厳しい表情でうつるウィルのほほをなでる。
いくぶんやつれて見える彼が、今は少しでも心おだやかに過ごしてくれていればいいと、ひそやかに願うばかりだ。
「ママぁ……」
珍しく昼寝をしていたウィルが起きだしてきた。
あわてて雑誌をマガジンラックに放り込む。
「ああ、ウィル。ね、暗くなる前に一緒にお買い物に行こっか。今日は何でもウィルの好きなもの、作ってあげる。だって、お誕生日だものね」
金色の髪をなでてそう言うと、ウィルはうんっ!と跳ね上がった。
新しく借りたアパルトマンは、中心地からはずいぶんと離れていた。
以前よりも多少の不便はあったが、人目を忍んでふたりで暮らすにはぴったりの町だった。
身の回りのものが一通りそろう、小さな商店がある通りをPrincessはウィルの手をひいて歩いた。
春先のシャルルの空は5時を過ぎても夕暮れには遠く、太陽はまだ昼に近い光を放っている。
「あれっ?!」
ウィルが何かを見つけて駆け出した。
「見て、ママ。このお花、パパとママのお花でしょ?」
ウィルが、花屋の軒先のブルーベルを指差している。
Princessも腰をかがめて花を見つめた。
ウィルが、買おうよ、買おうよと体を揺らしている。
Princessがブルーベルを数本握ると、鼻先をさわやかでいて甘い香りがかすめた。
この香りに包まれるとPrincessはいつも、ブルーベルの森で彼女を抱きしめた、ウィルのぬくもりを思い出す。
Princessにとっては、もう二度と感じることができないウィルの腕を懐かしむと同時に、会えない寂しさを癒す、不思議な力をもった香りでもあった。
Princessがブルーベルを花かごから抜きとろうとしたそのとき。
背中から腕が回され、Princessの指先もブルーベルも包むように抱き寄せられた。
肩にのった繊細なあご。
おだやかな息遣い。
耳をくすぐる揺れるブロンド。
「Princess……この花を買うのは、キミがまだ俺を愛してくれているからと思ってもいい…かな?」
吸った息が戻ってこない。
「ください。このブルーベルを、全部」
肩越しに涼やかな声がして、花かごのブルーベルは静かにすくい上げられた。
美しさも、公務で見せる仲の良さも、まさに理想のカップルだったふたりの想像もしなかった結末に誰もが原因を知りたがり、テレビも雑誌もその話題で持ちきりだった。
Princessは、小さなウィルの目を盗んではテレビをつけ、雑誌を買いあさった。
自分と子どもの存在が、ウィルたちの夫婦関係に決定的な打撃を与えたのは明白だったが、Princessはそのことが公になるのを怖れた。
勝手といわれようが、守るべきは我が子だった。
王子の不貞の子と、ウィルが後ろ指をさされるようなことがあればすぐにでも違う国に逃げるつもりで、スーツケースに必要なものだけを詰め込んで、毎日おびえていた。
しかし、ウィルに関わる女性についての報道は一切ないままに次第にフィリップを混乱させた出来事は収束していった。
Princessは、自分たちが平穏に暮らせるようにと、ウィルがあらゆる手を尽くしてくれたのではないのかと感じていた。
雑誌の表紙に厳しい表情でうつるウィルのほほをなでる。
いくぶんやつれて見える彼が、今は少しでも心おだやかに過ごしてくれていればいいと、ひそやかに願うばかりだ。
「ママぁ……」
珍しく昼寝をしていたウィルが起きだしてきた。
あわてて雑誌をマガジンラックに放り込む。
「ああ、ウィル。ね、暗くなる前に一緒にお買い物に行こっか。今日は何でもウィルの好きなもの、作ってあげる。だって、お誕生日だものね」
金色の髪をなでてそう言うと、ウィルはうんっ!と跳ね上がった。
新しく借りたアパルトマンは、中心地からはずいぶんと離れていた。
以前よりも多少の不便はあったが、人目を忍んでふたりで暮らすにはぴったりの町だった。
身の回りのものが一通りそろう、小さな商店がある通りをPrincessはウィルの手をひいて歩いた。
春先のシャルルの空は5時を過ぎても夕暮れには遠く、太陽はまだ昼に近い光を放っている。
「あれっ?!」
ウィルが何かを見つけて駆け出した。
「見て、ママ。このお花、パパとママのお花でしょ?」
ウィルが、花屋の軒先のブルーベルを指差している。
Princessも腰をかがめて花を見つめた。
ウィルが、買おうよ、買おうよと体を揺らしている。
Princessがブルーベルを数本握ると、鼻先をさわやかでいて甘い香りがかすめた。
この香りに包まれるとPrincessはいつも、ブルーベルの森で彼女を抱きしめた、ウィルのぬくもりを思い出す。
Princessにとっては、もう二度と感じることができないウィルの腕を懐かしむと同時に、会えない寂しさを癒す、不思議な力をもった香りでもあった。
Princessがブルーベルを花かごから抜きとろうとしたそのとき。
背中から腕が回され、Princessの指先もブルーベルも包むように抱き寄せられた。
肩にのった繊細なあご。
おだやかな息遣い。
耳をくすぐる揺れるブロンド。
「Princess……この花を買うのは、キミがまだ俺を愛してくれているからと思ってもいい…かな?」
吸った息が戻ってこない。
「ください。このブルーベルを、全部」
肩越しに涼やかな声がして、花かごのブルーベルは静かにすくい上げられた。