ブルー×ブルー(2)/Will.A.Spencer
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青白い蛍光灯が照らす廊下に、「手術中」のランプが時おりチラチラと点滅しては、
うつろな光を投げかけている。
長いすに座ったPrincessは、うつむいたまま肩で息をしていた。
あのとき、ちゃんとウィルの手を握っていれば……ウィル、ごめんね……
目の前ではじけ飛ぶブルーベルの花と宙に舞う我が子の姿が、スローモーションになって幾度となくPrincessのまぶたに浮かんだ。
自分自身よりも大切な命が失われるのではないかと、これまでに感じたことのないほどの恐怖に震えが止まらない。
年頃よりも落ち着いたところのあるウィルが、周囲を見ることもなく、父の乗る車に飛び出していった。
今まで、父親に会いたいとPrincessを困らせたことなど一度たりともなかった。
幼いなりに何かを感じ取って、遠慮していたのだろうか。
父がいなくても、十分な愛情を注げると信じてきたのは、ウィルを片親にさせた自分をかばうためだったのかもしれない。
積もり積もった父への思慕が、彼を見たとたんに幼い胸にあふれ、なにをも顧みることなく車の前に身を投げ出させた。
全部、私のせいだ。ごめんね……ウィル。
Princessは、両手で顔を覆う。
「Princess、キミに何から謝ればいいのかすらわからない」
狭い廊下を挟んだ向かいのいすに腰をおろしていたウィルがつぶやいた。
「いえ、なにもかも、私が勝手にしたことです」
ウィルのグレーのスーツは幼子の血液で黒色に変わっている。
運転手より先に車を降りてきたのはウィルだった。
泣きわめく女性に駆け寄ってその横顔を見れば、彼を打ちのめす衝撃に足元が揺らいだ。
「Princess?」
そして、彼女の腕の中で力なく目を閉じる男の子。
ブロンドの髪、透きとおる白い肌、薄く赤い唇。
鏡を見ているかのようなその姿に、ウィルは立ちすくんだ。
パパ、パパと叫ぶ声がウィルの耳に残っていた。
……どういうことだ……どういうことなんだ?
頭の中がしびれて、ただいたずらに呼吸だけが荒くなる。
「ウィル! ウィルっ、しっかりして!ウィルっ!」
小さな彼を揺さぶるPrincessの半狂乱の声。
「Princess、動かすな」
ウィルが立ち膝でかがんで、Princessの手首をきつくつかむ。
突然に名前を呼ばれて顔を向けたPrincessの瞳の奥が
みるみるひらいていく。
「ウィル……王子? あ……あっ、ウィルが! わたしのウィルが!」
彼女の蒼白の唇が半分あいて細かく震えていた。
「落ち着け。車に乗るんだ。このまま病院へ行く」
ウィルが幼い子を抱き上げた。
教会で、願いを聞きとどけるというマリアにPrincessとの再会を祈った。
でも、こんなかたちで出会うことを願ったわけじゃないのに。
ウィルの口元がゆがむ。
彼は自らを映した小さな体を、ぎゅっと懐にいだき締めた。
うつろな光を投げかけている。
長いすに座ったPrincessは、うつむいたまま肩で息をしていた。
あのとき、ちゃんとウィルの手を握っていれば……ウィル、ごめんね……
目の前ではじけ飛ぶブルーベルの花と宙に舞う我が子の姿が、スローモーションになって幾度となくPrincessのまぶたに浮かんだ。
自分自身よりも大切な命が失われるのではないかと、これまでに感じたことのないほどの恐怖に震えが止まらない。
年頃よりも落ち着いたところのあるウィルが、周囲を見ることもなく、父の乗る車に飛び出していった。
今まで、父親に会いたいとPrincessを困らせたことなど一度たりともなかった。
幼いなりに何かを感じ取って、遠慮していたのだろうか。
父がいなくても、十分な愛情を注げると信じてきたのは、ウィルを片親にさせた自分をかばうためだったのかもしれない。
積もり積もった父への思慕が、彼を見たとたんに幼い胸にあふれ、なにをも顧みることなく車の前に身を投げ出させた。
全部、私のせいだ。ごめんね……ウィル。
Princessは、両手で顔を覆う。
「Princess、キミに何から謝ればいいのかすらわからない」
狭い廊下を挟んだ向かいのいすに腰をおろしていたウィルがつぶやいた。
「いえ、なにもかも、私が勝手にしたことです」
ウィルのグレーのスーツは幼子の血液で黒色に変わっている。
運転手より先に車を降りてきたのはウィルだった。
泣きわめく女性に駆け寄ってその横顔を見れば、彼を打ちのめす衝撃に足元が揺らいだ。
「Princess?」
そして、彼女の腕の中で力なく目を閉じる男の子。
ブロンドの髪、透きとおる白い肌、薄く赤い唇。
鏡を見ているかのようなその姿に、ウィルは立ちすくんだ。
パパ、パパと叫ぶ声がウィルの耳に残っていた。
……どういうことだ……どういうことなんだ?
頭の中がしびれて、ただいたずらに呼吸だけが荒くなる。
「ウィル! ウィルっ、しっかりして!ウィルっ!」
小さな彼を揺さぶるPrincessの半狂乱の声。
「Princess、動かすな」
ウィルが立ち膝でかがんで、Princessの手首をきつくつかむ。
突然に名前を呼ばれて顔を向けたPrincessの瞳の奥が
みるみるひらいていく。
「ウィル……王子? あ……あっ、ウィルが! わたしのウィルが!」
彼女の蒼白の唇が半分あいて細かく震えていた。
「落ち着け。車に乗るんだ。このまま病院へ行く」
ウィルが幼い子を抱き上げた。
教会で、願いを聞きとどけるというマリアにPrincessとの再会を祈った。
でも、こんなかたちで出会うことを願ったわけじゃないのに。
ウィルの口元がゆがむ。
彼は自らを映した小さな体を、ぎゅっと懐にいだき締めた。
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