Heart to Heart/Edward=Levainçois
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山積みにされた書類を前にしても、エドワードのペンは進まなかった。
頬杖をついて、窓の外を見る。
「……まいったな、まったく仕事が手につかない」
エドワードは、ころりとペンを投げ出して腕を組むと、椅子にもたれかかった。
高い天井を見上げて目を閉じれば、涙でゆがんだPrincessの顔が浮かぶ。
「僕は、Princessに嫌われてしまっただろうか」
傍らに控えていたルイスに、エドワードは言った。
「実は以前、エドワード様がごひいきになさっている店の前でPrincess様をお見かけしました。エドワード様にプレゼントしたかったのでしょうね。その時のPrincess様のご様子には、私も胸が痛みました」
ルイスは、執務机に置かれたナタリーからの時計の箱をちらりと見る。
エドワードは、その視線に込められたルイスの想いを見過ごさない。
「ルイスにまでそんな風に非難されたらかなわないな」
「いえ、私は……」
とまどうルイスにエドワードが「かまわないよ」とほのかな笑みを向けてから、瞳を真剣にした。
「ルイス、すまないが、今夜の仕事が早く終わるように手配をしてくれ。
僕の大切な花は美しいからね。こうしている間にも誰かが手折って持ち去ってしまいそうで、気が気ではないよ。……Princessを失いたくないんだ」
日付もかわるころのチャイムに玄関を開けると、赤いバラの花束をかかえたエドワードが立っていた。
彼を疑い、ののしった夜を思い返せば、Princessも何と言っていいのかわからなかった。
謝るべきところもあったが、悪いのはエドワードのほうだとかたくなに思う気持ちも捨てきれない。
「Princess、キミと話しあいたい」
エドワードにかける言葉もみつからないまま、黙ってエドワードを部屋に招き入れ、ソファをすすめたとたんに、彼のスマホが鳴った。
彼は画面を一瞥すると、スマホをポケットにしまう。
静まり返った部屋に、ただ呼び出し音だけが鳴り響いた。
だれからの電話なのかはわかっていた。
エドワードを求めるナタリーのコール。
ずっと、こんなことばかりだ。
Princessは顔を背けた。
「電話に出てください、エド」
「いや、いい」
散々知らないところでふたりで話をしておきながら、いまさらのエドワードの気遣いがかえってPrincessの気持ちを逆撫でした。
「ナタリーさんでしょ? エドを待ってるんですよ、早く」
つい荒くなる口調に、エドワードが困ったように眉を寄せるのが目の端で見て取れた。
エドワードが電話を耳にあてる。
「……はい……ああ、僕がルイスに届けさせた。夕べも言ったけれど、その時計はもらえない」
Princessが背けていた顔をゆっくりとエドワードに向けた。
そこには、エドワードのまっすぐにPrincessを見つめる瞳があった。
「ナタリー、あなたの気持ちは嬉しいが、それが僕の応えだよ。それから」
エドワードは口元を引き結んだ。
Princessとの視線が絡み合う。
「これからあとの、あなたとの約束だが。なかったことにしてほしい。
ああ……すべてだ。……大切な人を失いそうでね。僕はかなり、焦っている」
「ははっ、そうだな。確かに恰好悪いのだけれど、僕をこんな風にさせるのも彼女だけなんだよ。彼女を心から愛している」
「ああ……うん、ありがとう。僕もあなたの活躍を祈っている。では、いつか、またの日に。ごきげんよう」
エドワードが、静かに液晶に指先を滑らせる。
彼はそのまま、何度か画面をタップしてDeleteボタンに指を跳ねさせた。
再び部屋に沈黙が戻る。
エドワードは立ち上がって、ふわり、立ちすくむPrincessを抱きしめた。
何も言わずに彼は、腕に力をこめる。
ずっと欲しかったエドワードのぬくもりがPrincessの身体に流れ込んだ。
「Princess、すまなかった」
搾り出すような、切なげな声音が降る。
Princessは頬を、エドワードの胸に寄せた。
この胸に包まれれば、いつだって想いを素直に打ち明けられた。
「エドは誰にでも優しくて……私、不安でした。エドが、いろいろなかたとお付き合いをしなければならないのはわかっています。
でもナタリーさんだけは。あの人のエドを見る目が私と同じで。エドとお似合いだと思えば思うほど、エドがナタリーさんを好きになってしまうんじゃないかと、私、つらくて……」
大きな手のひらが、Princessの背中を覆った。
「悪いのは僕のほうだよ。キミの気持ちを思いやることができなかった。
Princessよりも大切な女性なんて他に誰もいないのに、この想いがPrincessに伝わらないことばかりをしていた。
……すまなかった。こんな僕を、キミはまだ、好きでいてくれるだろうか」
彼以上に愛する人はいるわけもなかった。
Princessは、そっとうなずいた。
すべて、エドワードを愛するがゆえの思い煩いだったのだ。
「私もごめんなさい。ひとりで考え込んで、エドを誤解していました」
「キミは何も悪くない。悪くないんだ」
エドワードは、Princessを強くを抱きしめた。
やがて彼は腕をとき、Princessの両肩にやわらかく手をそえると長身をかがめた。
じっと見つめるアメジストの瞳のなかにPrincessが揺らめく。
「Princess……これからは、どんな些細なことでも話し合おう。僕は、キミの想いをもっと知りたい。もう二度と、キミを不安にさせたりしない。誓うよ。僕は、キミと永遠に、心を寄せ合っていたいんだ」
エドワードはテーブルに置いたバラの花束を手に取った。
「キミの作ってくれたバラたちには及ばないけれど。これをキミに。
この深紅のバラの色と同じ僕の血の最後のひとしずくまでが、キミだけを愛していると言っている。どうしようもなく、Princess、キミが好きだ」
差し出された花束をPrincessが両手で包むと同時に、Princessの頬もエドワードの両手に包まれた。
ゆっくりと近づく唇に、Princessは瞳を閉じる。
愛しているから、想いあっているから、口に出さなくてもわかってくれる――
そんな甘えが、少しずつのすれ違いを生んでいたのかもしれない。
お互いの言葉に耳を傾け、想いを知り、愛する人の生 をともに歩みたい。
……エドとずっと一緒に。
Princessは、しだいに深く求められるキスに酔って、腰をなぞるエドワードの指の軌跡にゆるやかに身を任せた。
頬杖をついて、窓の外を見る。
「……まいったな、まったく仕事が手につかない」
エドワードは、ころりとペンを投げ出して腕を組むと、椅子にもたれかかった。
高い天井を見上げて目を閉じれば、涙でゆがんだPrincessの顔が浮かぶ。
「僕は、Princessに嫌われてしまっただろうか」
傍らに控えていたルイスに、エドワードは言った。
「実は以前、エドワード様がごひいきになさっている店の前でPrincess様をお見かけしました。エドワード様にプレゼントしたかったのでしょうね。その時のPrincess様のご様子には、私も胸が痛みました」
ルイスは、執務机に置かれたナタリーからの時計の箱をちらりと見る。
エドワードは、その視線に込められたルイスの想いを見過ごさない。
「ルイスにまでそんな風に非難されたらかなわないな」
「いえ、私は……」
とまどうルイスにエドワードが「かまわないよ」とほのかな笑みを向けてから、瞳を真剣にした。
「ルイス、すまないが、今夜の仕事が早く終わるように手配をしてくれ。
僕の大切な花は美しいからね。こうしている間にも誰かが手折って持ち去ってしまいそうで、気が気ではないよ。……Princessを失いたくないんだ」
日付もかわるころのチャイムに玄関を開けると、赤いバラの花束をかかえたエドワードが立っていた。
彼を疑い、ののしった夜を思い返せば、Princessも何と言っていいのかわからなかった。
謝るべきところもあったが、悪いのはエドワードのほうだとかたくなに思う気持ちも捨てきれない。
「Princess、キミと話しあいたい」
エドワードにかける言葉もみつからないまま、黙ってエドワードを部屋に招き入れ、ソファをすすめたとたんに、彼のスマホが鳴った。
彼は画面を一瞥すると、スマホをポケットにしまう。
静まり返った部屋に、ただ呼び出し音だけが鳴り響いた。
だれからの電話なのかはわかっていた。
エドワードを求めるナタリーのコール。
ずっと、こんなことばかりだ。
Princessは顔を背けた。
「電話に出てください、エド」
「いや、いい」
散々知らないところでふたりで話をしておきながら、いまさらのエドワードの気遣いがかえってPrincessの気持ちを逆撫でした。
「ナタリーさんでしょ? エドを待ってるんですよ、早く」
つい荒くなる口調に、エドワードが困ったように眉を寄せるのが目の端で見て取れた。
エドワードが電話を耳にあてる。
「……はい……ああ、僕がルイスに届けさせた。夕べも言ったけれど、その時計はもらえない」
Princessが背けていた顔をゆっくりとエドワードに向けた。
そこには、エドワードのまっすぐにPrincessを見つめる瞳があった。
「ナタリー、あなたの気持ちは嬉しいが、それが僕の応えだよ。それから」
エドワードは口元を引き結んだ。
Princessとの視線が絡み合う。
「これからあとの、あなたとの約束だが。なかったことにしてほしい。
ああ……すべてだ。……大切な人を失いそうでね。僕はかなり、焦っている」
「ははっ、そうだな。確かに恰好悪いのだけれど、僕をこんな風にさせるのも彼女だけなんだよ。彼女を心から愛している」
「ああ……うん、ありがとう。僕もあなたの活躍を祈っている。では、いつか、またの日に。ごきげんよう」
エドワードが、静かに液晶に指先を滑らせる。
彼はそのまま、何度か画面をタップしてDeleteボタンに指を跳ねさせた。
再び部屋に沈黙が戻る。
エドワードは立ち上がって、ふわり、立ちすくむPrincessを抱きしめた。
何も言わずに彼は、腕に力をこめる。
ずっと欲しかったエドワードのぬくもりがPrincessの身体に流れ込んだ。
「Princess、すまなかった」
搾り出すような、切なげな声音が降る。
Princessは頬を、エドワードの胸に寄せた。
この胸に包まれれば、いつだって想いを素直に打ち明けられた。
「エドは誰にでも優しくて……私、不安でした。エドが、いろいろなかたとお付き合いをしなければならないのはわかっています。
でもナタリーさんだけは。あの人のエドを見る目が私と同じで。エドとお似合いだと思えば思うほど、エドがナタリーさんを好きになってしまうんじゃないかと、私、つらくて……」
大きな手のひらが、Princessの背中を覆った。
「悪いのは僕のほうだよ。キミの気持ちを思いやることができなかった。
Princessよりも大切な女性なんて他に誰もいないのに、この想いがPrincessに伝わらないことばかりをしていた。
……すまなかった。こんな僕を、キミはまだ、好きでいてくれるだろうか」
彼以上に愛する人はいるわけもなかった。
Princessは、そっとうなずいた。
すべて、エドワードを愛するがゆえの思い煩いだったのだ。
「私もごめんなさい。ひとりで考え込んで、エドを誤解していました」
「キミは何も悪くない。悪くないんだ」
エドワードは、Princessを強くを抱きしめた。
やがて彼は腕をとき、Princessの両肩にやわらかく手をそえると長身をかがめた。
じっと見つめるアメジストの瞳のなかにPrincessが揺らめく。
「Princess……これからは、どんな些細なことでも話し合おう。僕は、キミの想いをもっと知りたい。もう二度と、キミを不安にさせたりしない。誓うよ。僕は、キミと永遠に、心を寄せ合っていたいんだ」
エドワードはテーブルに置いたバラの花束を手に取った。
「キミの作ってくれたバラたちには及ばないけれど。これをキミに。
この深紅のバラの色と同じ僕の血の最後のひとしずくまでが、キミだけを愛していると言っている。どうしようもなく、Princess、キミが好きだ」
差し出された花束をPrincessが両手で包むと同時に、Princessの頬もエドワードの両手に包まれた。
ゆっくりと近づく唇に、Princessは瞳を閉じる。
愛しているから、想いあっているから、口に出さなくてもわかってくれる――
そんな甘えが、少しずつのすれ違いを生んでいたのかもしれない。
お互いの言葉に耳を傾け、想いを知り、愛する人の
……エドとずっと一緒に。
Princessは、しだいに深く求められるキスに酔って、腰をなぞるエドワードの指の軌跡にゆるやかに身を任せた。
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