Heart to Heart/Edward=Levainçois
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時計は午前2時をまわっている。
日付はすでに2月15日。
……もう、今日じゃない。
ソファに腰を落とし、身じろぎひとつしないで、鳴らないコールを待ち、どのくらいの時がたっただろう。
朝からエドワードのためにと、バラをかたどったチョコレートを作った。
1枚1枚花びらを成形して組み合わせる工程には苦労したが、
出来上がったいくつものバラたちは本物の花束を思わせる美しさだと、少し自慢に思っていた。
ギリギリまで、どこの高級ブランドのチョコレートがいいか、そえるプレゼントはなにがいいかと考えたけれど、結局、身の丈以上のことをするのはやめた。
彼はきっと、今のままの自分を好きでいてくれる。
Princessが贈れるものといったら、こんなささやかなものでしかなかったけれど、エドワードへの気持ちは十分にこめたつもりだ。
エドワードの驚く顔が目に浮かぶ。
きっと彼は喜んでくれるだろう。
しかし、夕方になって鳴った電話に飛びついたPrincessが聞いたのは、信じられない言葉だった。
「Princess、すまない。実はナタリーが、ここ数日うまく歌えないと悩んでいるようで。さっき電話がかかってきたんだ。泣いている彼女を放ってはおけない。様子を見てきたら、すぐにキミに連絡するから」
泣きたいのは自分のほうだ、とPrincessは思った。
Princessとエドワードと付き合っていることを知っておきながら、エドワードを頼るナタリー。
それに応えるエドワード。
ナタリーは、エドワードがバレンタインデーをPrincessと過ごすことを邪魔しようと、わざわざ彼を呼びだしたのではないか。
何の疑いもなく、駆けつける彼の気持ちは、単なる思いやり?
それとも……
「わかりました」
Princessは、それだけを絞り出すのに精いっぱいだった。
待てど暮らせど鳴らないスマホにPrincessの胸はささくれだった。
……今日って約束したのに。
こんなに長い時間、こんなに遅くまで。
涙するはかなげなナタリーを抱き寄せるエドワードが目に浮かぶ。
いやだ、エド。
ナタリーさんにさわらないで。
Princessは、すっくとソファから立ち上がった。
お城で待たせてもらおう。
とにかく、早く、エドに会いたい。
Princessは、完全に煮詰まっていた。
深夜の城は、まばらに窓からの明かりが漏れるだけで、ひっそりと静まり返っている。
Princessが、一ミリの隙間なく閉じられた正門の真ん中に両手をかけてひらこうとすると、とたんに衛兵にむんずと腕をつかまれた。
「おいっ、お前、何をする!」
「あの、エドに会わせてください。もう帰ってますか? 14日に会う約束をしていたんです」
深いため息をついた衛兵は、人差し指をこめかみ近くにあてて円を描いてみせ、もうひとりの衛兵に「この女も頭がおかしいぞ」と言った。
「まったく、今日は何人、こういう女を相手にすればいいんだ。いいか、よく聞け。エドワード様は、お前のような庶民に手の届くお方ではない。
わかったら、さっさと帰れ」
衛兵の人差し指が、今度はPrincessの鼻先にぴたりと突きつけられた。
「私、本当にエドと約束してるんです。お願い、エドに会わせて!」
「お前、なれなれしく呼ぶとは失礼だぞ。不敬罪で逮捕されたくなければ、言うことを聞け!」
どうして信じてくれないのだろう。
リムジンで乗りつけ、窓を細く開けて優雅な笑みを見せたら、この門はひらかれたのだろうか。
ただの庶民だから。
彼にふさわしい美しさがないから。
ドレスを着ていないから。
……だれも、私をエドワードの恋人だと思わない。
疑いの余地すらない、ふつりあいさということか。
惨めさに心がつぶれる。
Princessには、お互いの愛を確かめ合ったエドワードの気持ちすら、今は見えなくなっていた。
日付はすでに2月15日。
……もう、今日じゃない。
ソファに腰を落とし、身じろぎひとつしないで、鳴らないコールを待ち、どのくらいの時がたっただろう。
朝からエドワードのためにと、バラをかたどったチョコレートを作った。
1枚1枚花びらを成形して組み合わせる工程には苦労したが、
出来上がったいくつものバラたちは本物の花束を思わせる美しさだと、少し自慢に思っていた。
ギリギリまで、どこの高級ブランドのチョコレートがいいか、そえるプレゼントはなにがいいかと考えたけれど、結局、身の丈以上のことをするのはやめた。
彼はきっと、今のままの自分を好きでいてくれる。
Princessが贈れるものといったら、こんなささやかなものでしかなかったけれど、エドワードへの気持ちは十分にこめたつもりだ。
エドワードの驚く顔が目に浮かぶ。
きっと彼は喜んでくれるだろう。
しかし、夕方になって鳴った電話に飛びついたPrincessが聞いたのは、信じられない言葉だった。
「Princess、すまない。実はナタリーが、ここ数日うまく歌えないと悩んでいるようで。さっき電話がかかってきたんだ。泣いている彼女を放ってはおけない。様子を見てきたら、すぐにキミに連絡するから」
泣きたいのは自分のほうだ、とPrincessは思った。
Princessとエドワードと付き合っていることを知っておきながら、エドワードを頼るナタリー。
それに応えるエドワード。
ナタリーは、エドワードがバレンタインデーをPrincessと過ごすことを邪魔しようと、わざわざ彼を呼びだしたのではないか。
何の疑いもなく、駆けつける彼の気持ちは、単なる思いやり?
それとも……
「わかりました」
Princessは、それだけを絞り出すのに精いっぱいだった。
待てど暮らせど鳴らないスマホにPrincessの胸はささくれだった。
……今日って約束したのに。
こんなに長い時間、こんなに遅くまで。
涙するはかなげなナタリーを抱き寄せるエドワードが目に浮かぶ。
いやだ、エド。
ナタリーさんにさわらないで。
Princessは、すっくとソファから立ち上がった。
お城で待たせてもらおう。
とにかく、早く、エドに会いたい。
Princessは、完全に煮詰まっていた。
深夜の城は、まばらに窓からの明かりが漏れるだけで、ひっそりと静まり返っている。
Princessが、一ミリの隙間なく閉じられた正門の真ん中に両手をかけてひらこうとすると、とたんに衛兵にむんずと腕をつかまれた。
「おいっ、お前、何をする!」
「あの、エドに会わせてください。もう帰ってますか? 14日に会う約束をしていたんです」
深いため息をついた衛兵は、人差し指をこめかみ近くにあてて円を描いてみせ、もうひとりの衛兵に「この女も頭がおかしいぞ」と言った。
「まったく、今日は何人、こういう女を相手にすればいいんだ。いいか、よく聞け。エドワード様は、お前のような庶民に手の届くお方ではない。
わかったら、さっさと帰れ」
衛兵の人差し指が、今度はPrincessの鼻先にぴたりと突きつけられた。
「私、本当にエドと約束してるんです。お願い、エドに会わせて!」
「お前、なれなれしく呼ぶとは失礼だぞ。不敬罪で逮捕されたくなければ、言うことを聞け!」
どうして信じてくれないのだろう。
リムジンで乗りつけ、窓を細く開けて優雅な笑みを見せたら、この門はひらかれたのだろうか。
ただの庶民だから。
彼にふさわしい美しさがないから。
ドレスを着ていないから。
……だれも、私をエドワードの恋人だと思わない。
疑いの余地すらない、ふつりあいさということか。
惨めさに心がつぶれる。
Princessには、お互いの愛を確かめ合ったエドワードの気持ちすら、今は見えなくなっていた。